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3ヵ国の共同空中・海上哨戒により拉致事件を低下

トム・アブケ(Tom Abke

インドネシア、マレーシア、フィリピンがスールー海とセレベス海で実施している空中・海上哨戒は、2017年の開始以来高い実績を収めていると広く認識されている。哨戒活動により、暴力的過激派のアブ・サヤフによる拉致事件が減少しただけでなく、数十人の人質救出にもつながった。

提携国の名称を組み合わせた呼称として「INDOMALPHI」と命名された同哨戒活動により、過激派に対抗する際の防衛協力のメリットが明確に実証された。しかし、アブ・サヤフによる拘束からの脱出を試みた人質3人のうちの2人が死亡した最近の事例を考えると、改善措置と共に哨戒活動の必要性が現在も高い状態であると、軍関係者は述べている。

2019年4月上旬、フィリピンの治安部隊は18歳のインドネシア人漁業者のハーリー・アーディアンスヤ(Heri Ardiansyah)氏の救出に成功した。ジャカルタ・ポスト(The Jakarta Post紙が報じたところでは、2018年12月5日、アーディアンスヤ氏は仲間のインドネシア人とマレーシア人と共に漁船に乗船していたところをアブ・サヤフに攻撃され拉致された。治安部隊と過激派との間で発生した武力衝突が続く中、同氏はスールー海に所在するシミサ(Simisa)とバナロー(Banalao)の小島の間で22時間も海水に浮かんだ状態を維持した。必死に脱出を試みた同氏の同僚等は死亡している。

マニラに拠点を置く外交政策シンクタンクであるAPPFI(Asia Pacific Pathways to Progress Foundation)によると、2016年にインドネシア人漁業者の拉致事件が10回発生したことを受け、3ヵ国の閣僚が2017年6月に三国協力協定(TCA)に署名したことで、スールー海域における空中・海上哨戒と情報共有、および海上司令センター(MCC)の設立が開始された。

2019年4月30日、マレーシアの国会議員等は国会議事における公式声明で、「同イニシアチブが立ち上げられて以来、サバ州[マレーシアの州] 水域とスールー海周辺における拉致事件や強盗事件が減少し、顕著な好影響が発生している」と発表している。

ジャカルタ・ポスト紙によると、哨戒活動が開始されてから最初の3年間で、アブ・サヤフおよびその系列組織により拉致された36人のインドネシア人漁業者のうちの1人を除く全員が救出されている。

インドネシア国軍の報道官、シシリアディ(Sisriadi)准将はFORUMに対して、「船舶、航空機、人員といった3ヵ国の主な道具と兵器システム用いて、年間を通して海上と空中の哨戒を定期的に実施している」と説明している。マレーシアのタワウとフィリピンのタウィタウィ、そしてインドネシアのタラカンに設置されたMCCを通じて3ヵ国間で情報交換が行われている。スールー海を中心として、3ヵ国の国境水域に哨戒活動の焦点が当てられている。

1つの名前で知られるシシリアディ准将は、「各国の責任は活動部会の合同会議を通じて調整している。現場での状況の進展に応じて活動を評価・分担するためのフォーラムとして合同会議を日常的に実施している」とし、「主な任務は海賊、拉致、テロ、多国籍犯罪の脅威に対処して、地域の安定性を維持することにある」と説明している。

3ヵ国すべてが軍艦と航空機を哨戒のために派遣していると、同准将は付け加えている。

3ヵ国による海上哨戒演習も各MCCで順番に実施されている。同准将によると、演習には海洋協力訓練や図上訓練などの活動が含まれ、TCA枠組内における他の3ヵ国演習には戦闘訓練や海上交換活動が含まれている。

シシリアディ准将は、「今後もINDOMALPHIは引き続き3ヵ国による海上・空中哨戒活動の有効性を改善し、寄港や訓練、そして共同学習を通じて国間の協力体制を強化していく」と締めくくった。

トム・アブケは、シンガポール発信のFORUM寄稿者。

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