LANPAC 2025 で陸軍指導者が AI、防衛産業との連携について議論

FORUMスタッフ
2025年5月中旬、インド太平洋地域の33か国の軍事・防衛産業のリーダーたちが、ハワイ州ホノルルで毎年開催される太平洋地上軍シンポジウム・展示会(LANPAC)に会し、前例のない困難に直面する同盟国およびパートナー国間の協力と調整について協議した。
米国陸軍協会が主催し3日間にわたって開催されたこの会議では、相互運用性の重要性が強調され、人工知能(AI)の急速な発展、防衛産業のパートナーとの緊密な連携の重要性、陸軍作戦の要となる下司官(NCO)の教育と訓練について議論された。
米国インド太平洋軍司令官のサミュエル・パパロ(Samuel Paparo)大将は、この地域における陸軍部隊の重要な役割と、威嚇的な国々にに立ち向かうための彼らの「能力と意志」に言及し、 「攻撃による潜在的なコストは、そのメリットをはるかに上回る」と述べた。
地球の半分以上、インド洋と太平洋を網羅するこの地域では、平和と安定を維持し、主権を保護しようとする軍隊は、その任務遂行において「距離の専制」という困難に直面している。
パパロ司令官は、「我々の同盟と協力関係は不可欠だ」と述べ、「困難ではあるが、克服できない課題ではない」と語った。 また、合同部隊は問題に対応するために共同訓練を行い、効果的な防衛態勢を構築していると述べた。

画像提供:AP通信
軍のリーダーらは、多国間の作戦、活動、投資を通じて、安全保障上の課題に対応するための軍隊の態勢と存在の調整について意見を交換した。 フィリピン陸軍司令官のロイ・ガリド(Roy Galido)中将は、多国籍軍にとって「目的のために適切な態勢を確保すること」が不可欠であると発言した。
陸上自衛隊幕僚長の森下泰臣陸将はパネルディスカッションで、「自分たちだけではできない」とした上で、 「各国と協力していかなければならない」と述べた。
また、リーダーらは兵站、通信、および潜在的な紛争を管理するための AI システムを開発・改良する緊急の必要性を強調した。 AI は、軍隊が他の国の軍隊とデータを共有する上でも役立つ。
こうしたテクノロジーは、時間のかかる手順を省略し、数週間や数か月ではなく、数秒で重要な機能を実行する、と米国陸軍宇宙ミサイル防衛軍作戦副司令官のドナルド・K・ブルックス(Donald K. Brooks)准将は言う。 例えば、形状や地質に基いて、AI は特定の状況においてどの兵器システムが最も適切であるかを判断することができる。
米国陸軍サイバーコマンドの司令官、マリア・B・バレット(Maria B. Barrett)中将は、AI は「スピードと規模を可能にしてくれる」と述べ、 「1年前とは比べものにならないほど、今は飛躍的な進歩を遂げている」と語った。
陸上部隊と防衛産業のリーダー間のコミュニケーションは、自然災害への対応時や戦闘時など、派遣された部隊が必要とするものを確実に提供する上で役立っている。 パパロ司令官は、より多く、より速く、より良く、よりスマートに提供できるサプライチェーンは常に必要とされていると言う。
パネリストとして参加した、国防関連ソフトウェア企業ゴヴィニ(Govini)社の最高経営責任者タラ・マーフィー・ドハティ(Tara Murphy Dougherty)氏は、「工場から戦場まで、 これを構想することで、サプライチェーンがより迅速かつ効率的に機能するようになるだろう」と述べた。
「産業は極めて重要だ」と、ホノルルにあるダニエル・K・イノウエ・アジア太平洋安全保障研究センター(Daniel K. Inouye Asia-Pacific Center for Security Studies)の所長、スザンヌ・ヴァレス・ラム(Suzanne Vares-Lum)氏は述べ、 「サプライチェーンのギャップはどこにあるのか? サプライチェーンのニーズは何か? 何が必要で、何が可能かを理解することだ」と語った。
また、パネリストらは、下司官の育成における世代間の違いを認識する必要性についても議論した。 例えば、若い兵士らは、先輩のリーダーたちよりもソーシャルメディアやコンピューターのスキルに長けている場合が多い。 リーダーシップの素質を秘めた採用者を最大限に活用するには、多様なスキルや関心を認識することが重要だ。
オーストラリア陸軍連隊軍曹のキム・フェルミングハム(Kim Felmingham)准尉は、兵士たちは「挑戦を望んでいる。そして、リーダーである我々は、彼らに挑戦の機会を与える責任がある」と発言し、 「以前より改善したが、まだまだできることがある」と述べた。
下司官の指導に新たな技術を組み込むことは有益だが、基本技能の指導と実践もそれに劣らず重要だ。 オーストラリア陸軍司令官のサイモン・スチュワート(Simon Stuart)中将は、「テクノロジーは重要だが、軍のプロとしての我々の仕事は、テクノロジーと人的資源のバランスを取ることだ」と述べた。
LANPACは、参加者が自国の軍部だけでなく、他国の軍部とも関係を築く場ともなっている。 スチュワート司令官は、「我々は強力な集合体だ」と述べ、 「我々が集合的に生み出す陸上戦力は、侮れない力だ」と語った。