北東アジア違法活動

違法活動によって支えられている北朝鮮の闇経済

米国陸軍第8戦域維持コマンド、国家安全保障法チーム(U.S. Army 8th Theater Sustainment Command, National Security Law Team)

2006年、国際社会は、北朝鮮が最初の核実験を行ったことを受け、同国に厳しい制裁措置を課した。現在も継続している制裁措置は、鉱物や繊維製品などの伝統的な輸出品を対象としている。北朝鮮の経済が制限され、貿易相手国も少ない中、制裁措置を受けて、独裁者金正恩(Kim Jong Un)は政権と核開発プログラムを維持するための収入源を必死に探している。

同政権は、ますます違法な収入源に頼るようになってきている。北朝鮮は、武器、鉄鉱石、石炭、水産物などの合法的な貿易や国内生産を現在も一部続けている。しかし、政権はサイバー犯罪、特に暗号資産の盗難、通貨偽造、メタンフェタミンの製造、海外労働力の搾取に依存しており、これらの活動は政権の財政的存続と軍事化にとってますます重要になっている。サイバー窃盗は、北朝鮮の外貨収入の50%を占めると推定されており、同国の兵器開発計画の主な資金源となっている。

北朝鮮のサイバー能力は、過去10年間で大きく変貌した。政権は、暗号通貨取引所や銀行を標的とした金融強奪を行うサイバー戦争/収益機構を育成してきた。多くの場合、ラザルス・グループ(Lazarus Group)や 高度持続的脅威(Advanced Persistent Threat ‐ APT) 38などの国家支援のハッカーによるものとされるこうした作戦により、政権は数十億ドルの収益を上げている。専門家たちは、8,000 人以上のハッカーが北朝鮮のサイバー部隊に所属していると推定している。

ハッカーたちは、暗号通貨業界の従業員を標的としたスピアフィッシングや、ブロックチェーンプラットフォームの脆弱性を悪用するなどの手口を用いている。ビットコインやその他の暗号資産の盗難は、北朝鮮政権が伝統的な金融システムを迂回することを可能にし、当局が資金を追跡・押収することを困難にするとともに、盗んだデジタル資産を秘密裏に法定通貨に換金することを可能にしている。

国連は、北朝鮮が2022年に約904億円(6億3,000万ドル)以上、2024年に約1,924億円(13億4,000万ドル)以上の暗号資産を盗んだと推定している。2025年2月、ラザルスグループはBybit取引所から約2,154億円(15億ドル)相当のイーサリアムを盗み出した。これは史上最大の暗号資産盗難事件となった。北朝鮮政権は、複雑なネットワークを通じて盗んだ資金を洗浄している。数百のデジタルウォレットを通過する暗号資産を混合し、分散型取引所を通じてブロックチェーン取引を難読化することで、資金の最終的な行き先を不明瞭にしている。

北朝鮮の闇の資金源: 不正取引 / サイバー犯罪 / 強制労働 / 制裁回避

政権が国外に送り出す北朝鮮労働者からの搾取も、その収入の重要な源となっている。何万人もの北朝鮮人が、中国やロシア、そしてアフリカや東南アジアに労働者として送り込まれている。彼らは、漁業、建設、鉱業、林業、繊維産業などでよく雇用されており、過酷な労働条件にさらされ、その賃金の90%以上が政権によって没収されている。

国連制裁は、労働者の本国送還を求めているが、北朝鮮は偽造文書やダミー会社などの不正手段を用いて、この規制を回避している。北朝鮮の労働者を雇用している国々は、多くの場合、彼らを外国当局や一般の人々の目から隠している。金政権は、強制労働によって生み出された外貨を、核兵器を含む軍事プログラムや、権力の維持に充てている。

中国は、北朝鮮との貿易を継続し、その違法な活動を一部支援している。

北朝鮮の闇経済は、その資金が不正な兵器開発計画に流れているだけでなく、国家が支援するサイバー犯罪の危険性が高まっていることからも、国際社会の安全保障上の脅威となっている。

こうした活動に対処するには、サイバーセキュリティの強化、制裁の法執行の厳格化、情報共有の改善、暗号通貨の規制強化、民間部門との技術提携の強化、そして継続的な外交的圧力など、国際的な協調努力が必要だ。北朝鮮のサイバー能力が高度化するにつれ、同政権の違法活動を妨害する取り組みはますます複雑化していくだろう。

米国陸軍第8戦域維持コマンドはハワイ州ホノルルに拠点を置いている。

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