オセアニアパートナーシップ

ニュージーランド、約1兆円(70億ドル)の防衛計画で軍事改革に着手

ピーター・パーソン(Peter Parson)

ニュージーランド国防軍(NZDF)は、約1兆円(70億ドル)のイニシアチブのもと、地域の同盟国やパートナー国と連携し、激化する地政学的緊張に対処するための装備を備えた、戦闘準備を整えた軍隊へと変革される。

2025年4月に発表された「防衛能力計画(Defence Capability Plan ‐ DCP)」は、今後8年間で防衛費を国内総生産の2%以上に引き上げ、現在のほぼ2倍に増額する。

「この青写真は 15 年間の展望に基づいて策定されているが、我が国の防衛力が世界情勢の変化に対応できるよう、今後4年間に必要となる重要な投資に特に焦点を当てて作成されている」と、ニュージーランドのクリストファー・ラクソン(Christopher Luxon)首相は述べている。また、「簡単に言えば、これは国防軍への予算の最低額であり、上限ではない」と述べた。

当局者によると、この計画は、攻撃能力、海軍および空軍の近代化、無人監視技術など、さまざまな分野の強化を目標としている。計画されているアップグレードには、ミサイルシステム、長距離遠隔操縦航空機、および国の広大な海域を監視するための持続的監視プラットフォームが含まれる。プロジェクトは、デボンポート海軍基地のインフラ整備からサイバーセキュリティへの投資まで多岐にわたる。

ジュディス・コリンズ(Judith Collins)国防相は、戦略的環境の変化を理由に、変革の緊急性を強調した上で、「この計画は、ニュージーランド軍が現在および将来にわたって活動するために必要な資源、装備、支援の概要をまとめたものだ」と述べた。

攻撃能力の強化策としては、ニュージーランド海軍のアンザック級フリゲート艦およびニュージーランド空軍のP-8A ポセイドン航空機に、ノルウェー製の海軍攻撃ミサイルや米国製のAGM-158C長距離対艦ミサイルなどの先進的なミサイルを装備し、オーストラリアの同様の調達と整合性を取るという選択肢がある。その目的は、「敵対勢力に対する抑止効果と、より遠距離から敵対船舶に対応できる能力」を構築することにある、と計画には記されている。

一方、フリゲート艦の運用維持への投資により、海軍のアンザック級艦は 2030 年代初頭まで運用が継続され、代替艦が導入されるまでのギャップを埋めることができる。さらに、無人自律航行船により海上監視を強化する予定だ。

2025年2月、中国はニュージーランドとオーストラリア間のタスマン海で実弾射撃演習を実施し、民間航空機に飛行経路の変更を余儀なくさせた。アナリストたちは、この演習は過去に例の無いものだとし、オーストラリア政府とニュージーランド政府は、中国が十分な事前通知を行わなかったことを懸念していると発表した。

「ニュージーランドの地理的な孤立は、以前ほど脅威から我が国を守る役割を果たしていない」と防衛能力計画(DCP)は指摘している。

この計画はまた、「共通の利益、共通の価値観、領土の防衛のために軍事力を統合する」という公約のもと、オーストラリアとニュージーランドの防衛力の統合を深め、両国の同盟関係を強化するものとなる。相互運用性を向上させるため、装備品の購入は調整して行われる。注目すべきは、2027年までにニュージーランド海軍のスーパー・シースプライト(Super Seasprite)ヘリコプターを、オーストラリアのシステムと互換性のある米国製のMH-60Rに置き換えるために、約1,726億円(約12億ドル)が割り当てられていることだ。

防衛能力計画(DCP)の発表は、3 月半ばにニュージーランドのウィンストン・ピーターズ(Winston Peters)外相と米国のマルコ・ルビオ(Marco Rubio)国務長官が、「太平洋地域の安全保障と経済力」を確保するための防衛協力の強化について協議を行ったことを受けたものだ。米国務省は、「両首脳は、米国とニュージーランドの強力なパートナーシップと、地域の安定に対する共通のコミットメントを再確認した」と発表している。

ピーター・パーソンは、ニュージーランド・ハミルトン発信のFORUM寄稿者。

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