
マンディープ・シン(Mandeep Singh)
インドとベトナムは、陸・海・空の各領域における協力関係の深化を反映した防衛活動の急増により、戦略的パートナーシップを強化している。 多面的な取り組みは、各国が安全保障上の懸念を共有し、自由で開かれたインド太平洋への相互コミットメントを強調している。
2016年に包括的戦略的パートナーシップに昇格した両国関係の中核には、特に争いの絶えない南シナ海において、主張の強まる中国に対抗するという共通の戦略的命題がある。 ベトナムとインドは、国際規範、特に国連海洋法条約の遵守を提唱し、航行の自由を支持している。
「インドとベトナムは、インド太平洋地域における法治に基づく国際秩序の強力な推進国であり、両国の国防パートナーシップの拡大は、この方向性を反映している」と、ニューデリーに本部を置くジャワハルラール・ネルー大学(Jawaharlal Nehru University)インド太平洋研究センター(Centre for Indo-Pacific Studies)のラフール・ミシュラ(Rahul Mishra)准教授はFORUMに語った。 また、「両国の協力は戦術的なものだけでなく、地域のバランスをめぐる長期的な懸念によって戦略的に推し進められている」という。

画像提供:インド国防省
2025年4月下旬には、ハノイで第4回ベトナム・インド陸軍参謀将校協議が開催され、双方は陸軍間の関係強化へのコミットメントを再確認した。 「ベトナム人民軍新聞」によると、ベトナム人民陸軍のグエン・クアン・ゴック(Nguyen Quang Ngoc)中将は、特に国連平和維持活動、訓練、共同教育における協力の拡大を強調したという。 訪問団を率いたインド陸軍大将のアカシュ・ジョハル(Akaash Johar)少将は、ベトナムとの連携を約束した。
平和維持活動に重点を置いた「ベトナム・インド二国間陸軍演習(Vietnam-India Bilateral Army Exercise)も毎年行われている。
一方、両国の海上安全保障上の結びつきの強まりは、2025年2月にインド海軍の艦船スジャータ(INS Sujata)とヴィーラ(ICGS Veera)がベトナムのカインホア省を訪れ、合同演習、寄港、文化交流を行い、信頼関係と作戦上の相乗効果を築いたことででも際立った。
「共同パトロールや海域認識の共有を含む海軍間の協力は、中国の侵略に対する確かな抑止力として機能する」とミシュラ氏は指摘した。
また、インド国防研究団のウェブサイトによると、もうひとつの重要な進展として、インド空軍の要員がベトナムの技術者にC-295M輸送機の整備と運用の訓練を行っており、相互運用性の向上を図っている。 同機の世界最大の運航国であるインドは、整備とオーバーホールの地域的ハブになる態勢を整えており、ベトナムをはじめとする他の東南アジア諸国に戦略的・経済的利益をもたらす。
2025年4月上旬には、サンディープ・シン(Sandeep Singh)大佐率いるインド空軍代表団がベトナムの空軍第916連隊を訪問し、訓練や捜索救助などについて話し合いを行った。 シン大佐はまた、ヘリコプター部隊の能力を協調的に向上させるよう呼びかけた、と人民軍新聞は伝えている。
ベトナムは、インド国防研究開発機構が共同開発した超音速巡航ミサイルシステム「ブラモス(BrahMos)」を取得するため、約1,003億円(7億ドル)の契約を最終調整している。 このシステムは戦闘機や海上砲台から展開でき、ベトナムの海上抑止力の大幅な強化につながるとインディア・トゥデイ(India Today)誌は報じている。
この取得は、ベトナムの防衛パートナーシップの多様化の一環であり、特にウクライナでの戦争をめぐってロシアの武器に世界的な制裁が課されたことを受けてのものだ。 グローバル・ディフェンス・ニュース(Global Defense News)サイトによると、インドはまた、巡視船へのクレジットライン、インド海軍のミサイルコルベット艦キルパン(INS Kirpan)の供与、戦闘機や潜水艦などのプラットフォームに関する訓練などを通じて、ベトナムの軍事近代化を支援してきた。
「ブラモスに対するベトナムの関心は、ロシアの兵器への依存を減らしつつ、自国の軍隊を近代化したいという願望を裏付けている」とミシュラ氏は指摘し、 「この取引が完了すれば、ベトナムの防衛態勢が強化されるだけでなく、信頼できる防衛輸出国としてのインドの地位も高まるだろう」と述べた。
マンディープ・シンは、インド・ニューデリー発信のFORUM寄稿者。