北東アジア紛争・緊張

台湾、中国共産党の侵略の脅威を抑止するための「ハリネズミ作戦」能力を強化

サラ・チャン(Sarah Chan)

台湾海峡の緊張が高まる中、台湾は中国共産党の軍事的脅威の高まりに対抗するため、非対称戦争能力への注力を加速させている。

台湾の「ハリネズミ」防衛戦略は、民主的に統治されているこの島への潜在的な侵略を、中国にとってあまりにも高い代償を伴うものにすることを目的としている。 この戦略の下、ミサイルや無人機の能力強化と機動的な沿岸防衛力を活用し、同盟国やパートナー国からの強力な支援と、国内企業による防衛生産の進歩に支えられた、生存能力の高い分散型防衛システムによって抑止力を最大化する。

台湾軍は2024年8月、米国製のパトリオットミサイル、「天弓」防空システム、「雄風」巡航ミサイルを含むミサイル発射演習を実施した。
動画提供:台湾国防部/アナドル通信社/ロイター通信

台湾国防部は2025年2月、軍が「引き続き防衛能力を強化し、非対称的な抑止力を高め、共同での情報監視および探知方法により台湾海峡周辺の海と空域を厳重に監視するとともに、あらゆる事態に対応し管理するために適切な部隊を展開する」と発表した。

この声明は、台湾と中国本土を隔て、世界貿易の重要な航路となっている台湾海峡の国際水域を合法的に航行していたカナダと米国の船舶を監視するための戦闘態勢パトロールを中国共産党が展開したことを受けて発表された。

中国は台湾を自国の領土と主張しており、武力による併合をちらつかせるなど、ますます好戦的な態度を強めている。

台湾の非対称的戦略の鍵となるのは、海峡防衛能力を持つミサイルシステムに重点を置いている点だ。 「台湾海峡に『キルゾーン』を設けることでミサイル戦力の拡大を図ろうとすることこそ、台湾の抑止戦略の要となる」と、英国に拠点を置くシンクタンク、ロンドン・ポリティカ(London Politica)のリサーチアナリスト、ジョシュア・ボウス(Joshua Bowes)氏はFORUMに語った。

ボウズ氏にによると、巡航ミサイル「雄風(Hsiung Feng)」や防空システム「天弓(Tien Kung)」を含む台湾のミサイル兵器は、侵略してくる中国共産党の海軍および水陸両用作戦部隊を標的にする能力をより強化するという。 台湾はまた、有人航空機を危険にさらすことなく偵察、監視、攻撃の選択肢を提供するために、無人機の配備を拡大している。

「台湾の無人機は非対称的な戦術に理想的な兵器だ。なぜなら、中国の海軍力に対して群れをなして攻撃を仕掛け、重要な偵察を行い、重要なミサイル攻撃を誘導するための重要な情報を提供することができるからだ」とボウズ氏は指摘し、 「こうした能力により、中国はより拡散的で予測不可能な脅威に対抗せざるを得なくなる」と語った。

台湾の無人機には、軍の動きを追跡したり、台湾沿岸の水陸両用部隊の増強を監視したりすることが可能で、国内企業が製造した「騰雲(Tengyun)」が搭載されている。 また、無人航空機「アルバトロス・タクティカル & カーディナルIII(Albatross Tactical and Cardinal III)」は、長期滞空型で監視および標的捕捉を行う。 さらに台湾は、戦場上空を旋回し精密攻撃を行う無人機「タイプ I (Type I)」などの徘徊型兵器の開発も進めている。

このほか、台湾は無人機が空、陸、海で連携することを可能にする人工知能搭載の編隊(スウォーミング)技術の試験を行っている。 このような進歩は、台湾が中国共産党の海軍部隊を圧倒し、海峡における軍事作戦を妨害する能力を高めることにつながる可能性があると、ボウズ氏は指摘した。

機動可能な沿岸防衛部隊は、敵の標的を絞る努力を複雑化させるという点で、台湾の抑止戦略に不可欠な存在だ。 台湾は、発射後に素早く移動するトラック搭載型の対艦ミサイルシステムを配備しており、生存性の向上に繋がるとボウズ氏は述べた。

2025年1月、高雄で戦闘準備訓練を実施する台湾海軍の高速攻撃ミサイル艇「光化6号(Kuang Hua VI)」
画像提供:ロイター通信

台湾はまた、対艦ミサイル「雄風II型(Hsiung Feng II)」を搭載した高速攻撃ミサイル艇「光化6号(Kuang Hua VI)」や、ステルス性能と高速機動性を誇る「沱江(Tuo Chiang)級コルベット」などの機敏な海軍プラットフォームを配備しているという。 これらの資産は、台湾の水陸両用強襲への対処能力と重要な沿岸地域の防衛能力を強化する。

また、米国からのハープーン(Harpoon)スティンガー(Stinger)ミサイル、高機動砲ロケットシステムランチャーなどの数十億ドル規模の武器購入を含む、国際的なパートナーシップも台湾の防衛を強化している。 また、日本は台湾との情報共有を拡大している。

サラ・チャン(Sarah Chan)はシンガポール発信のFORUMの寄稿者。

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