
FORUMスタッフ
2025年2月、米国沿岸警備隊の哨戒艇ミジェットが、違法・無報告・無規制(IUU)漁業の防止、麻薬密売への対策、二国間関係の強化を目的としたシップライダープログラムの一環として、オーストラリア、ニュージーランド、ツバルを訪問した。シップライダープログラムには、インド太平洋地域の国や地域が参加している。 また、スタッフたちは専門知識やベストプラクティスを交換し、相互運用性の向上に取り組んでいる。
シップライダーとして知られるこの二国間海上法執行協定は、太平洋諸国および地域が主権を主張し、海洋資源を管理する取り組みを支援してきた。 2008年にインド太平洋のクック諸島で始まったこのプログラムは、相互の繁栄や貿易、健全な海洋生態系を損なう不安定化行動を標的としている。
このプログラムは、太平洋地域やその他の地域で存在感を示そうとする中国の試みとは対照的と言える。 2023年に採択されたニュージーランドの「国防政策戦略声明」では、中国の活動に対する認識を求めている。 同戦略は、「ますます強力化する中国は、既存の国際的な規則や規範に挑戦するような手法で、自国のあらゆる国家権力を駆使している」とし、 「中国は軍の成長と近代化に多額の投資を継続しており、インド太平洋地域全体を含む、自国の直接的な地域を越えた範囲に、軍事力および準軍事力をますます展開できるようになっている」と指摘している。
中国の病院船ピースアーク(Peace Ark)とシルクロードアーク(Silk Road Ark)は医療サービスを提供し、国際交流を行っている。 一方で、人民解放軍海軍は護衛任務と海賊対策任務に就くところであると、2025年2月に外交専門誌ディプロマット(Diplomat)が報じた。
しかし、一部の訪問先は、中国が軍事基地へのアクセスについて「おそらく検討済み」または「すでに打診済み」である場所であると、米国国防総省は2024年12月に報告している。 訪問には軍事演習が含まれているものもある。
「中国は、海外での注目度の高い港湾投資に加え、医療外交、護衛任務、安全保障フォーラムなど、人道および商業目的をますます活用して、海外での海洋プレゼンスを高めている」と、ディプロマット誌は報じている。
報道によると、中国の表向きの善意に満ちた海洋進出先には、アフリカやカリブ海諸国に加え、南アジアのバングラデシュやスリランカ、太平洋諸国のキリバス、ソロモン諸島、東ティモール、トンガ、バヌアツが含まれている。
米国のシップライダー活動は、太平洋諸島国を支援し、安全で豊かな地域を推進するというコミットメントを明確に示している。 これらは、米インド太平洋軍の「地域安全保障協力」イニシアチブの一環として行われている。
米国沿岸警備隊とインド太平洋地域の12のパートナー国との間に結ばれた法執行協定により、排他的経済水域を含むそれぞれの海域において、軍および法執行機関の関係者が互いの船舶に乗り込むことが可能となっている。 IUU漁業などの違法な海上活動が疑われる船舶を停止、検査、交流することが認められている。 このプログラムには、クック諸島、フィジー、キリバス、マーシャル諸島、ミクロネシア、ナウル、パラオ、パプアニューギニア、サモア、トンガ、ツバル、バヌアツが参加している。
ハワイのホノルルを拠点とし、先進技術を搭載した全長127.5メートル(418フィート)の船舶ミジェット(Midgett)は、2025年1月に数か月にわたる巡回を開始したと、沿岸警備隊の関係者がFORUMに語った。 ツバル沖では、要員が船舶に乗り込み、地元警察、漁業当局、政府指導者と協力して、規則の順守を確保した。 「我々はお互いから多くを学んだ。この経験は、今後の作戦に間違いなく役立つだろう」と、哨戒艇の艦長、マシュー・ルーニー(Matthew Rooney)大尉はニュースリリースで述べた。

画像提供:ジェニファー・二ルソン三等兵曹/米国沿岸警備隊
海上での警戒を強化するために、無人航空機スキャンイーグル(ScanEagle)が監視・偵察に使用された。
ミジェットのニュージーランド訪問は、2023年に締結された沿岸警備隊とニュージーランド海軍(RNZN)間の合意を強化した。 ニュージーランド海軍の3人の水兵が、両国の交流プログラムの一環として、ホノルルから南太平洋へのミジェットの航海に参加した。 また、ニュージーランドの首都ウェリントンでは、ミジェットの乗組員が、ニュージーランド救助調整センターとニュージーランド海上警察の代表者、および住民と面会した。
ミジェットはその後、オーストラリアのシドニーに寄港したとロイターが報じた。 2月にオーストラリアとニュージーランドを隔てるタスマン海を哨戒艇が横断していた頃、中国共産党軍艦が同海域で実弾射撃訓練を行い、民間航空機49便が航路変更を余儀なくされた。 同通信社によると、ミジェットが軍艦の船団と遭遇することはなかった。 「我々は彼らの存在を認識していた」と、ルーニー艦長はシドニーで記者団に語り、 「それによる我々のオペレーションへの影響はなかった」と述べた。
シンガポールのS・ラジャラトナム国際学大学院(S. Rajaratnam School of International Studies)の上級研究員であるドリュー・トンプソン(Drew Thompson)氏は、ストレーツ・タイムズ(Straits Times)紙の取材に対し、「事前通告のなかった今回の演習は、中国本土から非常に離れた場所での、非常に異例な軍事力の示威行為だ」と指摘し、 「(これは)民間航空を混乱させ、中国が太平洋全域の平和と安定を脅かすものではないという同国の主張の信憑性について深刻な疑念を呈するものだ」と述べた。