海底・宇宙インフラへの高まる脅威からグローバル・コモンズを守る

米国陸軍第8戦域維持コマンド、国家安全保障法チーム
重要な海底・宇宙ネットワークのセキュリティは、政府、企業、国際組織にとって最大の関心事となっている。 これらの重要なケーブル、パイプライン、衛星、データセンターは、世界的な通信、貿易、安全保障の屋台骨を形成している。 地政学的な緊張の高まりとともに、これらの資産を守る必要性はますます高まっている。
世界には1967年に採択された宇宙条約(Outer Space Treaty)や1982年に採択された国連海洋法条約(United Nations Convention on the Law of the Sea)といった国際法がある。 さらに、ほとんどの国では、国内法や民事責任基準もまた抑止力となっている。 しかし、悪意ある行為者たちは、自分たちの利益になるのであれば、こうした法律を無視したり違反したりすることも厭わない。
また、重要なネットワークは、テロリストや破壊者といった非国家主体や、偶発的な損害に対しても無防備だ。
グローバル・コモンズとは、すべての国が共有するが、どの国にも所有されていない地域や資源を指す。 これには公海、宇宙、大気圏が含まれる。 軌道衛星、データセンター、海底ケーブルやパイプラインは、個々の国や企業によって建設・維持されている場合もあるが、これらの資源へのアクセスは、グローバルな商取引、コミュニケーション、科学技術の進歩、そして国家の安全保障にとって不可欠なものだ。
国際的なデータ通信の約99%を担う海底ケーブルは、グローバル・コモンズが国境を越えたビジネスやコミュニケーションに不可欠であることを如実に表している。 さらに、天然ガスなどの資源を輸送するパイプラインは、世界的なエネルギー供給にとって欠かせない。 同様に、衛星によるナビゲーションから天気予報、通信に至るまで、あらゆるサービスを提供する宇宙インフラは、世界中の国々にとってなくてはならないものとなっている。
しかし、グローバル・コモンズは、爆発などの物理的な攻撃やサイバー攻撃による被害を受けやすく、守るのが難しい。
現在、海底ケーブルやパイプラインへの攻撃が疑われる事例が増加している。 2022年、ロシアからヨーロッパに天然ガスを輸送するノルドストリーム(Nord Stream)パイプラインが妨害工作を受け、ヨーロッパ全土で環境被害とエネルギー供給の混乱を引き起こした。
2024年12月、エストニアとフィンランドを結ぶ海底電力ケーブル、エストリンク2(Estlink-2)がバルト海で切断された。 フィンランド当局は、ウクライナに対するロシアの理不尽で一方的な戦争に対する欧米の制裁を回避するために使われているロシアの「影の船団」の石油タンカーが、故意に96キロメートル(60マイル)以上も海底を引きずり、ケーブルを損傷させたものと見ている。 これに先立ち、2024年11月にはバルト海の別のケーブルが切断され、また、ロシアのスパイ船がNATO加盟国のヨーロッパ沿岸の海底インフラをマッピングする事件も発生していた。
2025年2月、台湾海峡の戦略的要衝である台湾と澎湖諸島を結ぶ光ファイバー海底ケーブルが、トーゴ船籍の中国船によって切断された疑いがある。
台湾は、8人の乗組員を拘束した後、この事件を潜在的なグレーゾーンの嫌がらせと位置づけた。 中国は、自治を行使している台湾を自国の領土と主張し、武力による併合をほのめかしている。
このような重要なインフラへの攻撃は、重大な経済的および安全保障上の影響を及ぼす可能性がある。
一方、中国とロシアは、宇宙基盤インフラと兵器の近代化を進めている。 米国およびその同盟国およびパートナー国は、2つの独裁政権がサイバー攻撃、指向性エネルギー兵器、および衛星破壊ミサイルによって重要な宇宙資産を破壊する能力を強めていることに、ますます懸念を強めている。
宇宙通信、ナビゲーション、気象衛星を無効にすれば、軍事作戦だけでなく、経済が依存する民間インフラも麻痺する可能性がある。 宇宙条約は、特定の軍事活動を禁止し、宇宙の平和的利用と探査を奨励している。
国際社会にとって、海底および宇宙インフラの保護は最優先事項であるべきであり、国際社会は、グローバル・コモンズを守るために、以下のようなより強固な枠組みや協定を確立すべきだ。
- 国際法の強化: 海底ケーブル、パイプライン、宇宙資産を保護するためには、明確で法執行可能なルールが必要である。
- 監視とモニタリングの改善: 国家は、海底や宇宙での活動を追跡するための先進技術に投資しなければならない。 これには、脅威を検知するための衛星の配備や、ケーブルやパイプラインの安全確保のための自律型水中センサーの配備などが含まれる。
- サイバーセキュリティプロトコル: グローバルなインフラがデジタルテクノロジーにますます依存するようになるにつれ、サイバー攻撃からの保護が最重要課題となっている。 各国政府は、海洋および宇宙のサイバーセキュリティに関する国際的な規範を策定し、サイバー攻撃への対応手順を確立しなければならない。
- 共同防衛イニシアチブ: 各国は同盟を結んで重要なインフラの相互防衛を確保すべきであり、その中には共同海上パトロールや共同宇宙パトロール、潜在的な脅威に関する情報共有などが含まれる可能性がある。
パイプラインやケーブルに対する最近の攻撃と、宇宙における脅威の高まりは、重要なインフラの脆弱性を浮き彫りにしている。 混乱を防ぐために、各国は協力して資源を保護し、グローバル・コモンズがオープンで安全な状態を維持できるようにしなければならない。
米国陸軍第8戦域維持コマンドはハワイ州ホノルルに拠点を置いている。