パートナーシップ東南アジア

地域の安全保障上の課題に適応する5か国防衛取極加盟諸国

サラ・チャン(Sarah Chan)

地域の安全保障情勢が変化する中、5か国防衛取極(FPDA)の加盟国は、共同訓練を強化し、先進的な資産を配備し、ハイレベルの人脈を増やしている。 新たな措置は、2024年10月のベルサマ・リマ(Bersama Lima)演習で示された。当局者やアナリストは、この取り組みが相互運用性をさらに向上させ、地域の安全保障を強化すると期待している。

2024年10月、オーストラリア、マレーシア、ニュージーランド、シンガポール、英国が参加する年次演習ベルサマ・リマで兵士が訓練を行った。
動画提供:オーストラリア国防省

1971年に設立された5カ国防衛取極は、オーストラリア、マレーシア、ニュージーランド、シンガポール、英国の間で結ばれた非拘束的な安全保障協定であり、当初はそれぞれ比較的新しい独立国だったマレーシアとシンガポールの防衛が中心だった。 2025年1月、マレーシアのアンワル・イブラヒム(Anwar Ibrahim)首相とシンガポールのローレンス・ウォン(Lawrence Wong)首相は、マレーシアのプトラジャヤで開催された第11回マレーシア・シンガポール首脳会議後の声明で、5か国防衛取極は「多国間戦線における」継続的な進展の見本だと称賛した。

5か国防衛取極の訓練には、実動訓練であるベルサマ・リマに加え、戦術統合訓練ベルサマ・シールド(Bersama Shield)、陸上指揮所演習スーマン・ウォーリアー(Suman Warrior)があり、いずれも毎年実施されている。

シンガポールのS・ラジャトナム国際学大学院(S・R・School of International Studies)のシニアアナリスト、トーマス・リム(Thomas Lim)氏はFORUMの取材に対し、「このような多国間演習の深化は、よりハイエンドで先進的な軍事装備の参加という点だけではなく、テロ対策や海洋安全保障といった共通の関心分野へのより綿密な取り組みという点からも起こりうる」と語った。

2024年5月にシンガポールで実施されたシャングリラ会合のサイドラインで、5か国防衛取極の国防相らは、無人機、第5世代戦闘機、偵察機を統合し、演習の複雑さと高度さを高めることで合意した。

シンガポール国防省によると、シンガポールが主催した2024年のベルサマ・リマ(マレー語で「五か国協力」を意味する)には、オーストラリア国防軍のF-35A6機に加え、ニュージーランド空軍のP-8A哨戒機を含む第5世代戦闘機が初めて参加し、訓練効果を大幅に高めた。

2024年10月、シンガポールで行われたベルサマ・リマ演習で出撃するシンガポール空軍F-15SG戦闘機。
画像提供: オーストラリア国防省

オーストラリア派遣部隊の司令官、マーク・タンブリン(Mark Tamblyn) 少佐はニュースリリースの中で、「F-35Aの配備は、訓練のリアリズムと洗練性を向上させ、5カ国防衛取極の能力を高めるという我々の継続的な取り組みの中で大きな成果だ」と述べた。

新たな安全保障上の脅威に対応するため、5か国防衛取極の演習では、無人航空機や、人道支援や災害救援といったテーマでの専門家交流も取り入れている。

近年、地域的な課題は著しく拡大している。 中国による軍備増強と、資源豊富な南シナ海を含む恣意的な領有権主張に起因する地政学的緊張がエスカレートしている。 2024年中旬、中国はマレーシアに対し、マレーシアの排他的経済水域内にあるルコニア礁での石油探査を中止するよう要求した。 マレーシアは、自国海域での石油・ガス探査を継続すると改めて表明した。

一方、アジア海賊対策地域協力協定(Regional Cooperation Agreement on Combating Piracy and Armed Robbery against Ships in Asia)によれば、マラッカ海峡とシンガポール海峡では、2024年に62件の海賊・武装強盗事件が発生しており、船舶に対する海賊行為や武装強盗は依然として脅威となっている。 さらに、東南アジアは津波、台風、洪水などの自然災害に見舞われやすく、沿岸インフラ、海運、経済の安定を脅かす。

5か国防衛取極は、変化する安全保障上の懸念に適応する上で適している、とアナリストらは指摘する。

「5か国防衛取極は……作戦的要素を持つ協定というユニークな位置づけと、最も差し迫った脅威に基づいてその作戦を毎年調整するという、非常に柔軟な性質を持つ、優れた手段だ」とリム氏は述べ、 「軍事的な活動にとどまらず、さまざまな国の防衛専門家が交流し、親善と相互理解を促進する場となっている。

各国がこのような合同演習に参加することは、法治に基づく国際秩序を守ることの価値を強化し、争いの絶えない国際舞台における協力とコミュニケーションの重要性を促進することにもつながる」と語った。

サラ・チャン(Sarah Chan)はシンガポール発信のFORUMの寄稿者。

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