北東アジア紛争・緊張

中国による海洋建造物は韓国への主権押し付けの表れ、とアナリストが指摘

ボイス・オブ・アメリカ

韓国とその同盟国・パートナーは、中国が係争中の海域の主権主張を正常化しようとする動きを阻止すべきだ、とアナリストたちは指摘する。

中国は長年にわたり、南シナ海の広大な領域に対する恣意的な領有権主張を行うために、違法、強圧的、攻撃的、欺瞞的な戦術を用いてきた。この主張に対して、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナムなどの国々が異議を唱えており、2016年には国際法廷によってその主張が無効だと裁定されている。

最近の中国の動きは、中国が韓国と共有する海域で同様の行動に出ようとしていることを示唆している、とアナリストらは指摘する。

朝鮮日報(The Chosun Daily)によると、韓国当局は2025年1月初旬、中国が韓国の西側にある係争海域に鉄骨構造物を設置したと発表した。 韓国の情報機関は偵察衛星を使って2024年12月にこの構造物を発見し、幅と高さが50メートルを超えると推測したとソウルを拠点とする同通信社は報じた。

この構造物は、韓国が西海(Western Sea)と呼ぶ黄海の暫定措置水域(PMZ)にある。 同海域の領有権を管理するために2001年に設定された。 紛争が解決するまで、この海域では漁業に関係のないあらゆる施設の建設や活動が禁止されている。

中国は2024年4月と5月に、近隣に同様の構造物を2つ設置し、韓国が抗議する事態となった。

ウィスコンシン大学マディソン校(University of Wisconsin-Madison)の東アジア安全保障専門家、テレンス・ローリグ(Terence Roehrig)氏はボイス・オブ・アメリカに、「最近の行動は、長期的に [中国の] 主張を強化するような形で、この地域を徐々に侵食していく…戦略と結びついている可能性が高い」と語った。

その目的は、「標的となる国家に、この地域の新しい常識をゆっくりと受け入れさせることだ」という。 「韓国は自国の立場を主張し続け、この海域の画定は交渉によって解決されるべきだと主張することで、そのような事態にならないようにしなければならない」と述べ、

さらに「中国は黄海を自国の安全保障にとって極めて重要な領域であり、中国本土への潜在的な玄関口であると考えている。 いずれは、これらの構造物が軍事利用される可能性もある」と付け加えた。

中国の戦術は、時間をかけて敵対勢力を弱体化させることを目的とした準軍事的威圧行動によって、合法と非合法の境界線を曖昧にしようとするものだ。 紛争水域での人工的な海洋構造物の浚渫や軍事化、中国海警局や海上民兵の他国水域への侵入などがそれにあたる。

オーストラリアを拠点とするシンクタンク、ローウィー研究所(Lowwy Institute)の東南アジア・プログラム研究員であるラフマン・ヤアコブ(Rahman Yaacob)氏は、「今回の事件は、中国が南シナ海で用いたのと同じ戦略を韓国にも用いていることを示している」と述べた。

中国は、南シナ海のスプラトリー諸島(南沙諸島)の一部であるミスチーフ礁に建設した人工的な海洋構造物に軍事基地を設置している。 この礁は、中国の軍備増強を非難する複数の国が領有権を主張している。

一方、暫定措置水域では、中国が「海底鉱業権にアクセスし、この海域を自由に通過できるようにすることで、この海域での商業や活動の流れをコントロールしたいのではないか」と、ワシントンD.C.を拠点とするアジア太平洋戦略センター(Center for Asia Pacific Strategy)のデビッド・マクスウェル(David Maxwell)副所長は述べる。

この地域で構造物が維持されれば、韓国と米国の海軍作戦に影響を与える可能性がある、と同氏は指摘する。

「特に韓国が、さらには米国や日本、その他の同盟国が、中国の活動を常態化させないようにすることが重要だ」とマクスウェル氏は述べ、 「自国の領土だと主張するために、自国の存在を常態化させたいのだ」と語った。

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