フィリピンの新海事法、根拠のない中国の領有権主張に断固とした意思表示

マリア・T・レイエス(Maria T. Reyes)
フィリピンは、主権と海洋権を主張する上で2つの新たな法律を制定するという、さらなる決定的な一歩を踏み出した。
「海域法(Maritime Zones Act)」と「群島航路法(Archipelagic Sea Lanes Act)」は、特に南シナ海におけるフィリピンの領有権主張を強化することを目的としている。また、フィリピンの海域における経済および環境管理を強化するものでもある。 2つの新法は、国際法と法治に基づく海洋秩序に対する同国のコミットメントを強調するものであると、アナリストや政府関係者は指摘している。
マニラに拠点を置くシンクタンク、国際開発・安全保障協力(International Development and Security Cooperation)のチェスター・カバルザ(Chester Cabalza)代表は、FORUMに対し、これらの法律は「受入国の国家主権や領土の保全を妨げることなく、強固な地域貿易と軍事作戦を促進」できる可能性があると述べた。
動画提供:アナドル通信社/ロイター通信/フィリピン沿岸警備隊
群島航路法は、国際法に則り、外国の船舶および航空機がフィリピン領土を通過するための航路を指定している。 航路には、北部のバリンタン海峡(Balintang Channel)と、スールー海(Sulu Sea)を経由する南部の2つの航路があり、いずれも南シナ海の一部として国際的に認められているが、中国が不法にその一部の領有権を主張している西フィリピン海(West Philippine Sea)を横断している。
ニュースリリースによると、フィリピンのフェルディナンド・マルコス・ジュニア(Ferdinand Marcos Jr.)大統領は、2024年11月の法律署名式典で、「指定された海上航路により、国家安全保障を損なうことなく、また、良好な環境管理の能力を低下させることなく、外国の船舶や航空機の安全な航行が可能になる」と述べた。
中国は自国の領土が含まれているとして、これらの法律に反対しているとAP通信が報じた。 これに対し、フィリピンの議員らは、これらの措置は、重要な国際貿易航路である資源豊富な南シナ海における中国の広範囲にわたる主張を無効とした2016年の国際法廷の判決をより強化するものであると述べた。
中国は、係争海域で人工的な海洋地形を軍事化し、海警局の乗組員や民兵を乗せた船を配備して、それぞれの排他的経済水域内で合法的に活動するフィリピンを含む他の領有権主張国の民間船舶や軍艦を威嚇するなど、この裁定に引き続き従わない姿勢を示している。
海域法は、1982年の国連海洋法条約(UNCLOS)に準拠して、フィリピンの内部水域、群島水域、領海、接続水域、排他的経済水域、大陸棚を規定している。 海事・海域委員会の委員長を務めるフィリピンのフランシス・トレンティーノ(Francis Tolentino)上院議員は、これまでにも、同国の海洋資源の管理と活用には、その境界線の明確化が不可欠であることを強調してきた。
署名式典では、関係者が新法がもたらすであろう利益について概説した。
群島航路法の共同起草者であるルイス・レイムンド・ビラフエルテ・ジュニア(Luis Raymund Villafuerte Jr.)下院議員は、この法律は外国の船舶や航空機によるフィリピン海域の汚染を禁止するものであると述べた。 国家海事協議会のアレクサンダー・ロペス(Alexander Lopez)広報担当官は、懲役刑や最高約1億8,900万円(120万ドル)の罰金を含む刑罰を伴う法律を執行するために、海上資産と監視能力の強化の必要性を強調した。
群島航路法の実施にあたり、フィリピンは指定航路を国連の国際海事機関に宣言するとともに、その航路を利用する各国と協議する必要があると、海事・海洋問題担当のルイス・アルフェレス(Louis Alferez)次官補は述べた。
法律の施行規則が発表され次第、国家地図・資源情報局が同国の海図を更新する予定だと、フィリピン・デイリー・インクワイアラー(Philippine Daily Inquirer)紙が報じた。
トレンティーノ議員は記者団に対し、中国がこの新しい法律を支持してないことを指摘した上で、国際的な支持がフィリピンの立場を強化するだろうと述べた。
また、カバルザ氏は、沿岸地域のコミュニティに彼らの権利について教育することも、外国の侵害や違法行為に対抗するために不可欠であると述べた。
同氏は、国連海洋法条約に基づく法治秩序を促進するために、東南アジア諸国連合(ASEAN)の他の加盟国もフィリピンの例に続いて自国の領海を画定すべきだと指摘し、
「フィリピンと重複する領有権を主張する国際社会や近隣諸国も、この制定された海洋法を順守しなければならない。そうすることで、違法漁業、外国軍の存在、潜在的な封鎖を阻止するための法治に基づく秩序を維持することができる」と述べた。
マリア・T・レイエス(Maria T. Reyes)は、フィリピン・マニラ発信のFORUM寄稿者。