
マリア・T・レイエス(Maria T. Reyes)
フィリピンは、新たな法律や取り組みにより、防衛技術革新と調達における自立性を高めるための取り組みを加速させている。
これまで他国の防衛産業に頼ってきたフィリピンは、2024年10月に国内企業を強化するために税制優遇措置や政府保証融資などのインセンティブを設けた「自立防衛態勢活性化法(Self-Reliant Defense Posture Revitalization Act)」を可決した。
この法律は、海上での衝突や長期にわたる外交紛争など、中国との緊張が高まる中、フィリピン軍(AFP)が自らの能力を強化し続けていることを受けたものだ。 フィリピン政府は今後10年間で、フィリピン軍の近代化のために約5兆4,400億円(約350億ドル)を割り当てる予定だ。
この活性化法は、外国のサプライチェーンへの依存度を減らし、フィリピン国外の関係者の利益を減らすのに役立つだろうと、フィリピンのフェルディナンド・マルコス・ジュニア(Ferdinand Marcos Jr.)大統領は署名式で述べた。 「地政学的な変化と不安定性の渦中に身を置く国にとって、これは理にかなった動きだ。 この法律の核心は、強固で持続可能な国防産業を育成することにある」と同大統領は述べた。
さらにマルコス大統領は、「我が国独自の必要性に応えるシステムを開発し、特に従来のシステムでは完全に対処できない非対称型の脅威など、進化する脅威に先手を打つため、研究開発(R&D)を優先する」と付け加えた。
さらに、この法律の背景にある戦略は明確であり、「まず基礎を固めること、すなわち研究、生産能力、制度的な支援を強化することから始め、その後、強固で自立した産業が生まれるまで、段階的に積み上げていく」と述べた。
フィリピン国防省(DND)は2024年12月、この法律は兵器および弾薬、陸・海・空の各種車両、通信および監視システム、そして無人機やサイバーセキュリティツールなどの新技術の開発に重点を置くことを発表した。
これらのプロジェクトは、フィリピン軍の国家防衛能力の強化と平和と安定の確保に加え、製造、技術、研究分野における現地の雇用の創出や、経済全体の活性化につながる、と同省は述べた。
フィリピン海軍退役少将のロンメル・ジュード・オン(Rommel Jude Ong)氏は、ロシアによる理不尽で一方的なウクライナ侵攻やその他の現在進行中の紛争は、持続的な軍事作戦を支援できる国内企業の重要性を浮き彫りにしていると指摘する。
フィリピンは、自国の防衛産業を構築するにあたり、インドネシアや韓国を参考にできると、オン氏はFORUMに語った。
「これらの国の政府は、航空機製造や造船などの主要産業に投資し、新しい技術の移転を受け入れる体制を整えてきた。 また、従業員に対するSTEM(科学、技術、工学、数学)教育にも投資し、研究開発を通じて革新を遂げた」と同氏は述べた。
さらに、「サプライチェーンの問題に対処するには、政府、学術界、産業界の協力が必要だ」とオン氏は指摘し、 「つまるところ、防衛産業は、世界市場または地域市場を視野に入れた、収益性の高い産業であるべきだ」と述べた。
2024年11月には、2021年の技術移転契約に基づき、フィリピン海軍がイスラエル・シップヤード(Israeli Shipyards Ltd.)の高速攻撃阻止行動用船舶「シャルダグ(Shaldag)」、別名「キングフィッシャー(Kingfisher)」の国産組み立て機を就航させ、一つの節目を迎えた。
フィリピン国防省は日本やその他の国々とも同様の協定を模索している。 2024年11月、フィリピンのギルベルト・テオドロ・ジュニア(Gilberto Teodoro Jr.)国防長官と日本の中谷元防衛大臣は、ラオスで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)国防相会の合間に、共同生産と技術移転について意見を交わした。
マリア・T・レイエス(Maria T. Reyes)は、フィリピン・マニラ発信のFORUM寄稿者。