オセアニアパートナーシップ特集

フィジー陸軍の 展望

陸から海と空を守る:平和と戦争における統合軍の貢献

オニシボロ・コブニサカ准将/フィジー共和国陸軍司令官

ィジーは南太平洋の西に浮かぶ小さな島である。この国は水に囲まれており、人々の生活は海と密接に結びついている。フィジーは孤立しているため、国家間の戦争や武力衝突、領土問題、国境の緊張といった紛争地域における従来の脅威は、最小限か存在しない。

しかし、気候変動や環境悪化、自然災害、国際犯罪、人身売買、麻薬などのこれまでにはなかった脅威がより顕著になっている。これらの脅威から海と空の領域を陸地から効果的に防衛するため、フィジー共和国軍(RFMF)は陸上部隊を通じて、包括的かつ多層的なアプローチで課題に取り組んでいる。これは、我々が非常に小さな軍隊だからだ。我々には、事業を運営するためのリソースやプラットフォームがない。

フィジー共和国軍と陸軍の観点から、これらの課題に対処するために我々が使用し、信頼している枠組みは、ルールに基づく秩序と制度へのコミットメント、政府一体となったアプローチ、即戦力のある機敏な陸軍、パートナーシップである。 

2024年5月、ハワイで開催された陸軍太平洋会議で演説するフィジー共和国軍のオニシボロ・コブニサカ准将。SGT.ヨハンナ・プルム(JOHANNA PULLUM)三等軍曹/米国陸軍

平和のための枠組み

フィジーは、ルールに基づく秩序と制度を維持することの重要性を認識している。フィジーは、1970年の独立以来、国際連合の加盟国であり、現在では世界中の平和維持活動に大きく貢献している。現在、旅団規模の陸上部隊を擁し、平和維持活動に大きく貢献しており、世界中で約500人の兵士が任務に就いている。これには、エジプトにおける多国籍軍、シリアとイスラエル間の国際連合兵力引き離し監視軍、およびイラクにおける国連支援ミッションが含まれる。レバノン、イエメン、スーダンにもオブザーバーがいる。

フィジーにとって平和維持活動は重要である。なぜなら、我々が海外で専念するのと同様の安定と平和維持活動が、国としての安全を保証するからである。これには、違法漁業、国際犯罪、麻薬密売から保護するための規則に基づく秩序の国際規範への依存、および発生しうる問題に対する救済メカニズムも含まれる。枠組みや制度に関しては、フィジーは太平洋諸島フォーラムの下、ボイ宣言などの合意に依存している。これにより、気候安全保障、人間の安全保障と人道支援、環境と資源安全保障、国際犯罪、サイバーセキュリティなどの安全保障上の課題に対処する上で、まず集団的な発言権を持ち、適切な調整メカニズムを含む実施を可能にする環境構築を行うという地域的な安全保障アプローチが確保される。

これまでにはなかった脅威から海と空を陸地から守るという観点で、太平洋地域全体の声を結集し、様々な機関が協力することが最も重要な手段になりうる。前提として、我々は太平洋諸島の州のように小規模ながらも、海と空の問題に対処できる相互接続のネットワークを構築している。 

フィジーは、経済力と陸上部隊の能力が限られているため、これらの脅威から防衛するために政府全体で取り組むアプローチに頼らざるを得ない。陸上の法執行機関は、国家災害管理局の政府の緊急事態対応権限と、商業用船舶や国営航空会社フィジー航空を活用した作戦配備と実施のために政府の資源に依存している。気候変動が原因で発生した事象の際は顕著である。

フィジー陸上部隊の使命は、様々な紛争において競争力を持ち、勝利を収めることを可能にする戦闘能力に優れた機動的な陸上部隊を創出することである。 

2022年、ナンディで行われた多国間軍事演習「カートホイール」で、ジャングル戦の訓練を行うフィジー軍の兵士。SGT.アンドリュー・ガフィー(ANDREW GUFFEY)一等軍曹/ 米国陸軍

主要なパートナー、演習

限られた資源を考えると、主に取り組む必要があるのは高度に訓練された軍隊を持つことである。将来の活動に関しては、フィジー共和国軍陸上部隊は、オーストラリアまたはニュージーランドの統治下にあるより大きな地域部隊の一部として、陸地から海と空を守るための基盤を提供できると考えている。このため、陸上部隊は、政府および全司令部の支援を受け、オーストラリア国防軍との2022年10月の地位協定であるヴヴェール・パートナーシップ (Vuvale Partnership)の下、またニュージーランド国防軍とのパートナーシップの下、米太平洋陸軍(USARPAC)との即応訓練および交流を実施している。

我々が実施している注目すべき演習には、米太平洋陸軍と米国国防総省の国家警備隊パートナーシッププログラムがある。毎年9月には、フィジーで、太平洋地域で第二次世界大戦中に行われた大規模な軍事作戦である「カートホイール作戦」にちなんで名付けられた「カートホイール演習」を米国陸軍と共同で実施している。当初、カートホイール演習は二国間の演習だった。しかし、オーストラリア、ニュージーランド、英国のパートナーとの多国間演習へと拡大し、最近ではトンガからのオブザーバーや参加者も加わった。

この演習により、統合陸上作戦における高い総合的な即応性を維持し、統合部隊の作戦能力を向上させるとともに、部隊間の相互に有益な情報の共有を促し、パートナー諸国間の連携強化を確実なものとする。

ヴヴェール・パートナーシップには、「コーラル・ウォリアー」と呼ばれる一連の訓練と交流が含まれている。オーストラリアが資金提供しているこのプログラムは、フィジー歩兵連隊第3大隊とオーストラリア第89大隊との「コーラル・ソルジャー」の単独パートナーシップから、フィジー共和国軍の技術者とオーストラリアの技術者による一連の「コーラル・サッパー演習」、フィジー共和国軍の兵站大隊とオーストラリアの同大隊との「コーラル演習」、そして海外での平和維持活動を担当する合同任務部隊司令部との「コーラル・ピースキーパー」へと発展した。

最近、ヴヴェール・パートナーシップの下、オーストラリア空軍はC-27(軽戦術輸送機)をフィジーに2週間配備し、我々の航空作戦を柔軟に計画し実行することを可能にした。さらに、オーストラリア国防軍は、平和維持活動に従事する部隊の交代要員を空輸で行なっている。また、2022年3月のドゥアバタ・パートナーシップ(Duavata Partnership)に基づき、ニュージーランドとの間で訓練交流も行われており、フィジーの歩兵大隊は第2/第1大隊と提携し、フィジーとニュージーランドの両国で訓練と研修を実施している。

フィジーのナウソリ高地訓練地域でのカートホイール演習中に、降下ロープを確認するニュージーランド兵士。オーストラリア、フィジー、英国、米国の兵士も訓練に参加した。ティモシー・グレイ二等軍曹/米国陸軍

新たなフォーラム

最近の動きとしては、太平洋小部隊フォーラム(Pacific Small Armies Forum)が挙げられる。これは、当時のニュージーランド陸軍参謀長ジョン・ボズウェル(John Boswell)少将が主導したニュージーランド陸軍出資の作業部会であり、フィジー、トンガ、バヌアツ、パプアニューギニアが参加している。フォーラムの目的は、将来の太平洋小国歩兵中隊グループを協力して形成することである。必要が生じた場合には、この構成を変更して地域の問題に対処することができる。

我々は、フィジー共和国軍内にさまざまな任務に対応する「即応歩兵中隊」を設置した。これには、人道支援・災害救援、テロ対策、水陸両用作戦、特殊作戦任務などが含まれる。このグループは、緊急事態に即座に配備される。これはフィジー全土に配備可能であり、政府は伝統的および非伝統的な脅威に対処するために利用できる。 

より小さな太平洋島嶼国は、安全保障上の課題や、気候変動や環境悪化、自然災害、国際犯罪、人身売買などの非伝統的な脅威に関して、それぞれ異なる優先事項を抱えている。そして、これらの課題に陸から取り組むには、我々の限られた能力を考慮すると、政府全体のアプローチと商業および国家のプラットフォームの活用に集結する。戦闘準備と作戦に関しては、通常、地域ネットワークを通じて行われ、陸から空と海を守るためのプラットフォームをより大きなパートナーからの提供に依存している。

オニシボロ・コブニサカ准将は、2024年5月中旬にハワイ州ホノルルで開催された米国陸軍協会主催の「陸軍太平洋会議」でこの発表を行った。内容はFORUMのフォーマットに合わせて編集。

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