北東アジア紛争・緊張

動乱は中国人民解放軍の能力を低下させ、不信感を助長する、 とアナリストが指摘

FORUMスタッフ

中国共産党の習近平総書記が軍部粛清の対象を忠臣にまで拡大したことで、中国人民解放軍の準備態勢や習近平の権力掌握、党首と中国人民解放軍のエリートとの間の不信感について疑念が生じている。

中国国防省は2024年11月下旬、 苗華(Miao Hua)中国人民解放軍海軍大将を「重大な規律違反」(中国における汚職疑惑の略語)の調査保留で停職処分にしたと発表した。 これは政治的な不誠実さを指すこともある、とアナリストたちは言う。 習主席の配下で十分な権力を得た苗は、党首を不安にさせた可能性があると観測筋は指摘する。

今回の停職処分に先立ち、中国共産党の董軍(Dong Jun)国防相も調査を受けているとの報道があったが、中国当局はこれを否定した。 シンガポールのニュースネットワークCNAによると、董国防相は報道から1週間後に公の場に姿を現したが、習主席の粛清から安全だと考えるのは時期尚早だとアナリストは指摘する。

習主席の下、汚職で告発される国防相は三人目となる。 董国防相の前任者たちはいずれも罷免され、接待と習主席への不誠実さで糾弾を受けた。 李尚福(Li Shagfu)は就任からわずか数か月で2023年10月に更迭された。 魏鳳和(Wei Fenghe)は2018年から2023年まで同職を務めた。

習主席が中国人民解放軍のトップに引き上げた苗は、中央軍事委員会のメンバーであり、中国人民解放軍における党への忠誠を確保する役割を担う政治工作部の部長だった。

シンガポールの南洋理工大学(Nangyang Technological University)S・ラジャラトナム国際学大学院(School of International Studies)の上級研究員であるドリュー・トンプソン(Drew Thompson)氏は、ニューヨーク・タイムズ紙に、「共産党の武装勢力の政治部門のトップを巻き込んだ今回の事件は、予算を管理せず部隊司令官でもない国防相を標的にした場合よりもはるかに深刻だ」と語った。

同氏はさらに、「そしてトップの政治委員は極めて重要な役割であるため、今回の件はより深刻であり、士気にも影響する」と述べた。

習主席は2023年以降、汚職撲滅キャンペーンを強化し、核兵器や弾道弾を管理する中国人民解放軍ロケット軍の指導層を縮小し、二名の国防相を解任した。

苗は習主席在任中に追放された7人目の中央軍事委員会委員となった。

中国共産党は2023年以降、国営の航空、造船、兵器、原子力産業を含む少なくとも15人の国防産業関係者を汚職の疑いで調査している。

インド通信社ANIによると、アジア社会政策研究所(Asia Society Policy Institute)のライル・モリス(Lyle Morris)氏は、「中国人民解放軍指導部と軍事調達に関わる国有企業の再編は、ここ最近で最大規模だ」と述べた。 「中国軍内部の深い不安と機能不全、習主席と軍部の信頼関係の破綻を示唆している」

米国海軍戦争大学(U.S.Naval War College)中国海洋研究所(China Maritime Studies Institute)のアンドリュー・エリクソン(Andrew Erickson)博士とクリス・シャーマン(Chris Sharman)大尉によると、中国人民解放軍の能力と軍事的即応性を損なう粛清は、中国共産党の弱点のひとつだという。

習主席は軍部に不満を抱いており、目的を達成するためなら動乱もいとわない、と両氏は書いており、習主席は政権を維持しているが、「急勾配の踏み板の上を時間切れに走っている急ぎ足の男であり、挫折すれば彼を突き落とそうと躍起になっている政敵に脅えている」のだという。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

Back to top button