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中国主導のインフラ計画、ラオスを多額の負債と高インフレに陥れる

ボイス・オブ・アメリカ

ラオスは、主に中華人民共和国に対する一連の大型プロジェクトの未返済の巨額融資の負担により、インフレが急上昇する中で苦境に立たされている。

人口約800万人の内陸国ラオスは、すでに一部の支払いを延滞している。 そして、エコノミストやアナリストは、中国が補償としてラオスの土地、資源、インフラへの権利を要求し始め、それによって隣国ラオスでの影響力を拡大する可能性があると指摘している。

アジア開発銀行(ADB)によると、ラオスのインフレ率は2022年に一桁前半から23%に急上昇し、2023年にはさらに31%まで上昇し、アジアで最高となった。アジア開発銀行(ADB)は、2025年までインフレ率が20%以上で推移すると予想している。

食料価格はさらに上昇し、2023年には40%近くにまで達した。 アジア開発銀行は、長引く物価上昇によりラオスのほとんどの家庭が打撃を受け、多くの人々が食事の量を減らしたり、手に入らなくなったものを補うために食料を探したりせざるを得なくなったと述べた。 ラオスはもともと、東南アジア大陸部で最も飢餓率の高い国であった。

ある住民は、牛肉の値段がこの1年で2倍以上に値上がりし、路上の屋台で食べる平均的な食事や焼き魚は以前の4倍の値段になったと語った。 その不足を補うために、多くの人々が果物や野菜を自分で栽培しようとしていると彼は述べた。

アナリストやエコノミストは、このインフレの急激な進行は、世界的な原油価格の高騰と、他国の中央銀行が金利を引き上げたことでラオスの自国通貨キープの価値が急落したこと原因だと指摘している。

インドネシアの東アジア・アセアン経済研究センター( Economic Research Institute for ASEAN and East Asia ‐ ERIA)の上級エコノミストであるスクリニラン・ケオラ(Souknilanh Keola)氏は、主にラオスが長年にわたって外貨準備高を蓄積できなかったことが原因だと指摘した。 そのため、政府は他国への支払いに外貨を大量に使うことを余儀なくされ、その結果、キープは下落し、輸入価格が上昇しているとケオラ氏は述べた。

ラオスの巨額の公的債務の返済負担が問題をさらに悪化させていると専門家らは指摘する。

ラオスの国内総生産の108%にあたる約2兆930億円(138億ドル)の負債は「持続不可能」であると、世界銀行は最近発表した。 ラオスが他国に負う約1兆5,900億円(105億ドル)の負債のうち、半分は中国に対するものだ。

その負債の多くは、中国が支援するいくつかの巨大プロジェクトの資金調達に充てられており、その中には、メコン川の水力発電ダムや、ラオスを経由して中国とタイを結ぶ約9,097億円(60億ドル)規模の高速鉄道計画などが含まれる。

「中国からの債務があるため、為替に圧力がかかったのは事実だ」とケオラ氏は述べた。 「市場で外貨を買うためにあらゆることをしなければならず、それがラオスキープ安の圧力となり、インフレ率を上昇させた」という。

世界銀行によると、キープは2022年に米ドルに対して価値が半分に下落し、2024年の第1四半期から第3四半期にかけてはさらに5分の1に下落した。

アナリストらは、北京がラオスを債務不履行にさせることはないとみている。

ラオスは2024年の東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国として、中国の利益を擁護し、南シナ海行動規範に関する議論を弱めていると、エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(Economist Intelligence Unit)の研究アナリスト、ウェン・チョン・チャ(Wen Chong Cheah)氏は述べた。

10か国で構成されるASEANは、中国がほぼ全域を自国のものだと主張しているこの資源豊富な海域について、拘束力のある規定を定めるための交渉を長年中国政府と続けている。2016年の国際法廷の裁定により、こうした中国の恣意的な主張は退けられている。 ラオスは南シナ海に領有権を主張していない。

中国は、圧倒的な規模をテコに、競合国と二国間で個別に対処することを好み、対応を先延ばしにしていると広く見られている。

「ラオスは中国に東南アジアにおける発言力を与えている」と、チャ氏は述べた。 「ラオスが債務不履行に陥らないようにすることが中国にとって最善の策といえる。なぜなら、ラオスが債務不履行に陥った場合、西側諸国や多国間組織に支援を求める可能性が高く、そうなれば中国の影響力が低下するからだ」という。

中国は債務の一部をさらに先延ばしにする可能性がある。または、債務の一部を土地、鉱物資源、その他の株式と交換する債務株式交換を追求する可能性も考えられる。

2021年、ラオスは中国国営電力会社と多額の負債を負うラオス電力公社(Electricite du Laos)の合弁事業における過半数株式を中国に譲渡した。 この取引により、中国は事実上、近隣諸国への電力輸出を含むラオスの送電網を支配することになった。

米国のウィリアム・アンド・メアリー大学(William & Mary)の研究部門であるAidDataによると、中国のラオスへの融資条件は不透明であるが、土地や天然資源が担保として含まれているという。

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