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中国の軍事能力を脅かす人材流出とイノベーション抑制

トム・アブケ(Tom Abke)

制限的な政治的・経済的政策によって、一流の人材が国外に流出しており、特に、人工知能(AI)やサイバーセキュリティといったイノベーションの重要分野において、中国の防衛部門に大きな課題をもたらす可能性がある。 アナリストたちは、中国共産党の習近平総書記の下で、有能な専門家の流出とイノベーションに対する規制強化が進むことが、台湾への潜在的な侵攻など、自決権を有する台湾に対する重要な任務において、中国共産党の軍事力と作戦遂行能力が長期的に損なわれる可能性があると指摘している。

中国共産党の権威主義の深化は、学歴を持つ若い専門家の間で不満を募らせており、多くの人が国内の制限を避けるために海外での就職機会を求めている。 例えば、ランド研究所の国際防衛上級研究員であるティモシー・ヒース(Timothy Heath)博士によると、パンデミック中の厳格な隔離措置やゼロ・コロナ政策、政治学習の義務化、そして縮小する雇用市場が、中国の労働者の間で幻滅感を広げているという。

国連のデータによると、2022年に移住した中国人の数は、入国した移民の数を31万人以上上回ったとニューヨーク・タイムズ紙が報じた。 2023年の最初の9か月で、その数はすでに2022年の総数に達していた。 最近の移住者の多くは、海外留学後にそのまま留まることを選んだ若い中国人や、より良い機会を求める技術労働者だと同紙は2023年末に報じている。

従来、多額の国家予算によって支えられてきた中国の防衛産業にとって、人材の流出は大きな課題となっている。 熟練労働者の不足はイノベーションを妨げ、防衛技術の開発と維持における国家の能力を制限することになる。

「中国がとうの昔に学んだように、資金投入だけでは成果を保証できない」とヒース氏は言う。 「手厚い国家予算を確保する難しさが中国の科学イノベーションにおける最大のボトルネックとなることはほとんどない。 むしろ、イノベーションが成功するための環境を整え、適切な人材を確保することがより重要だ」

AIを含むハイテク分野に対する中国の厳格な規制は、安全保障と国家統制の強化を目的としているが、技術の進展を遅らせる恐れがある。 2023年7月、中国は「国家安全保障と社会的公共利益の保護」を目的として、大規模言語モデルなどの生成AIに関する規制措置を導入した。

中国政府は技術系専門家に高い成果を求める一方で、業務上の柔軟性を制限している。この組み合わせは、ヒース氏によると「非常に負担が大きく、実行が困難であり、多くの若者がより合理的な条件のもとで海外で働くことを選ぶ可能性がある」という。

中国の政治情勢もまた、人材の国外流出を促進している。 国家情報法は国民および組織に対し、諜報活動への協力を義務づけており、熟練労働者や企業の間で懸念が高まっている。 こうした圧力が不信感を生み、専門家が中国国外に代替先を求める状況を引き起こしていると報じられている。

中国の人材流出は、同国の軍事近代化を脅かしている。 ヒース氏によると、人民解放軍(PLA)はAI強化ツールを用いて軍を「インテリジェント化」することを目指している。 しかし、人材プールの縮小と専門家の流出が続けば、「後退や遅延」を招き、現代戦に不可欠な先進的システムの開発と配備における中国の能力に影響を与える可能性がある。

「これは、台湾有事において有用となり得る先進的な標的システムや自律型無人システムの構築に支障をきたす可能性がある」とヒース氏は述べた。

トム・アブケは、シンガポール発信のFORUM寄稿者。

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