
ロイター
中国とロシアが国際連合による制裁監視活動を妨害したことを受け、日米韓3か国が2024年10月中旬、北朝鮮に対する制裁の履行を監視する新たな多国籍組織を設置すると発表した。
2024年3月、北朝鮮の核・ミサイル計画の抑制を目的として制裁違反の事例を15年間監視してきた国連安全保障理事会(安保理)北朝鮮制裁委員会専門家パネルの任期を延長する決議案にロシアが拒否権を行使したことで、その活動が事実上の廃止に追い込まれた。この監視の空白を埋めるために、多国間制裁監視チーム(Multilateral Sanctions Monitoring Team – MSMT)が新設された。 中国は同決議を棄権している。
制裁の履行に関する定期的な報告書提出を含め、この新設組織は国連の北朝鮮制裁委員会専門家パネルの作業を引き継ぐことになる。 新設組織には日米韓の他、 オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ニュージーランド、英国が参加する。
韓国ソウルで開かれた共同記者会見では、岡野正敬外務次官、金烘均(キム・ホンギュン)韓国外交部第一次官、カート・キャンベル(Kurt Campbell)米国務副長官、その他8か国の大使による、新組織の設置が発表された。
金第一次官は、「これまで国連の制裁委員会専門家パネルの代わりとして機能する効果的な監視体制の構築について議論を重ねてきたが、その間も北朝鮮の制裁違反が続いたことで、これ以上先送りせずに速やかにその溝を埋める必要があるという意見で一致した」と述べている。
日米韓は引き続き国連機構の復活を目指す構えだが、制裁履行の確保に向けて、協力する意思のあるすべての国に門戸を開いていると、金第一次官は付け加えている。
キャンベル国務副長官の発言によると、ウクライナ侵攻のためにロシアが北朝鮮から軍事装備と軍需品を違法に調達したと専門家パネルが報告したことから、決議におけるロシアの拒否権行使が誘発された可能性が高い。
キャンベル国務副長官は、「この新組織の設立により、一連の挑発的行為を通して北朝鮮が従事している行動を追跡し、その責任を追及する大々的な取り組みを実現できる可能性が生まれた」とし、 「これは正義に向けた大きな第一歩となる」と語っている。
北朝鮮とロシアは2024年6月に相互防衛条項を含む包括的戦略パートナーシップ条約を締結しているが、韓国政府と米国政府は露朝が違法な軍事取引に従事したと主張している。
ソウルに拠点を置く転換期正義ワーキンググループ(Transitional Justice Working Group – TJWG)のイーサン・ヒソク・シン(Ethan Hee-seok Shin)法律アナリストは、この新たな制裁監視の取り組みにより、国連議会において対北朝鮮制裁の軽視姿勢を取るロシア政府と中国政府の思惑を抑制し、北朝鮮をより効果的に監視できる可能性が高まったと話している。
同氏はさらに、「今後、志を同じくする諸国の政府は、北朝鮮における重大な人権侵害を助長している北朝鮮や他国の個人や団体を対象とした制裁を発動することを検討すべきである」と述べている。