パートナーシップ南アジア紛争・緊張

インド洋西部で深まる米印防衛協力

マンディープ・シン(Mandeep Singh)

アナリストによると、インド洋西部におけるインドと米国の防衛協力は、ますます戦略的になっており、同地域の水路は、増加する商業船舶にとって極めて重要な海上交通路と考えられている。

中国船舶の強引な行動や海賊行為の脅威に対する懸念が、協力関係の拡大を促す要因のひとつとなっている。 防衛演習と基本協定は、法の支配を維持し、自由で開かれたインド太平洋を確保するという両国のコミットメントを強調している。

「インドと米国にとってのインド洋西部の明白な価値は、スエズ運河を通るエネルギーと物資の輸送ルートを守ることだ」と、ランド研究所(Rand Corp.)のシニアエコノミストで政策アナリストのラフィク・ドッサーニ(Rafiq Dossani)博士はFORUMに語った。

2024年3月、インドのビシャカパトナムでタイガー・トライアンフ演習に参加するインド軍と米国軍。
動画提供: パトリック・カッツ(PATRICK KATZ)軍曹/米国海兵隊

世界のコンテナ輸送の30%を含む、年間約150兆円(1兆ドル)の貨物がスエズ運河を通過しており、そのほとんどが最初にインド洋西部を通過する。 貨物の大部分はインド太平洋からのものだ。

インド洋西部における中国の活動は、その影響力と軍事プレゼンスを拡大しようとする中国政府の試みについて、インドや米国などの国々に安全保障上の懸念をもたらしている。 中国は、しばしば海賊対策任務という名目で、潜水艦や水上艦艇を含む海軍のプレゼンスを高めてきた。 しかし、原子力潜水艦などの先進的な資産の配備は、戦略的目標を示唆している。 2017年、中国政府はアフリカの「角」部分に位置するジブチ共和国に、初の海外軍事基地を設置した。ここは重要な海上交通の要衝に近く、海軍作戦の兵站の拠点として機能している。

近年、インドと米国の間で締結された協定により、兵站支援、安全な通信、情報共有が促進され、この地域におけるパートナーの作戦能力を高めている。

インドのオブザーバー研究財団(ORF)の戦略研究プログラムの研究者であるサヤンタン・ハルダール(Sayantan Haldar)氏とヴィヴェク・ミシュラ(Vivek Mishra)氏は、「インドと米国はともに、共有され、価値観に基づき、自由で開かれた、包括的なインド太平洋への規範的なコミットメントを示してきた」と書いている。 ハルダール氏とミシュラ氏はまた、「インド太平洋における中国の足跡の増大と好戦的な姿勢の強まりに、各国は警戒感を抱いている」と、2024年7月にORFから出版された『Western Indian Ocean: Key Geography for U.S.-India Cooperation(仮訳インド洋西部:米印協力の鍵となる地理)』の中で指摘している。

中国のプレゼンス拡大に加えて、インド洋西部、特にソマリア沿岸付近は海賊の多発地帯となっている。 紛争は減少したものの、海賊行為は依然として脅威である。

合同演習、情報共有、戦略的合意を通じて、インドと米国政府は海洋領域認識を高め、脅威に対応する能力を開発し、重要な水路における商業船舶の安全な航行を確保している。

直近では2024年3月に実施されたタイガー・トライアンフ(Tiger Triumph)がその代表例で、これはインド軍の3部門すべてが参加した初の演習となった。 演習の焦点は、人道支援と災害救援活動における相互運用性の向上に向けられた。 さらに、オーストラリア、インド、日本、米国が参加する毎年恒例のマラバール演習は、インド洋西部での海洋安全保障とテロ対策に焦点を当てた共同活動を含むまでに成長した。

ハルダル氏とミシュラ氏は「インドにとってのインド洋西部の重要性は、その中核的な海洋安全保障上の利益がこの地域にあることを考えると、いくら強調してもしすぎることはない」とし、 「特に海洋安全保障、海洋ガバナンス、重要なサプライチェーン、地域の安定の問題において、米印協力の範囲が広大で重要な地域であることに変わりはない」と述べている。

マンディープ・シンは、インド・ニューデリー発信のFORUM寄稿者。

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