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国連総会が6月5日を「違法、無報告、無規制(IUU)漁業と闘う国際デー」と宣言してから7年、インド太平洋地域の同盟国とパートナーは、国連が「海洋資源の保全と管理だけでなく、多くの国、特に発展途上国の食料安全保障と経済にも重大な影響を及ぼす」としている違法行為との闘いを主導し続けている。
研究者によれば、IUU漁業は毎年最大1,400万トンの漁獲量を占め、世界中で年間推定最大7兆7500億円(500億ドル) の経済的損害を与えているという。
「自然資源の窃盗犯が免れる場所は地球上に存在しない」と米国沿岸警備隊総司令官 リンダ・フェイガン(Linda Fagan)大将は2023年10月、ワシントンD.C.を拠点とするシンクタンク、戦略国際問題研究所に対し語っている。 また、同総司令官は「IUU漁業は、他国の自然資源を盗んだり、公海上で持続可能ではない、合意された国際法と矛盾する方法で漁をしている」とも述べている。
米国沿岸警備隊は2023年10月、ハワイに違法・無報告・無規制漁業専門家センター(Illegal Unreported Unregulated Fisheries Center of Expertise)を設立した。 同センターは、インド太平洋地域での違法漁業と闘うために国際パートナーと連携し、地域連携を促進し、IUU漁業と闘うためのパートナー諸国の装備強化を目指している。 同センターはまた、海洋領域認識の向上、情報交換、相互運用性の向上、ベストプラクティスの共有を目指している。
一方、パラオと米国は2023年8月、二国間法執行協定を拡大する協定に調印した。この協定により、米国沿岸警備隊はパラオの法務官が立ち会うことなく、太平洋島嶼国の排他的経済水域(EEZ)で規制を執行できるようになり、この地域における重要な節目となった。
「この協定は、パラオの排他的経済水域を監視し、違法、無報告、無規制の漁業から保護し、パラオの海域で不審な行動を取る招かれざる船舶の抑止に役立つ」とパラオのスランゲル・S・ウィップス・ジュニア(Surangel S. Whipps Jr.)大統領は声明で述べた。 さらに「この地域の平和と繁栄という共通の目標に向かって努力するためには、このようなパートナーシップが必要だ」と語っている。
国際法は沿岸国に対し、200海里のEEZにおけるの漁業を含む自然資源の使用と利益について排他的権利を認めており、 IUU漁業は、これらの主権的権利を侵害するものである。 ポセイドン・アクアティック・リソース・マネジメント(Poseidon Aquatic Resource Management)と国際組織犯罪対策グローバル・イニシアティブ(Global Initiative Against Transnational Organized Crime)による2023年12月の報告書によると、世界最大の遠洋漁船団を有する中国籍の船舶が、主にIUU漁業を主導しているという。
ワシントンD.C.を拠点とする金融透明性連合(Financial Transparency Coalition)による2023年11月の調査によると、中国はまた、漁船による強制労働の世界的な主要加害国であり、労働者の虐待が疑われる商業漁船の25%が中国籍であることがわかった。
IUU漁業は多くの場合、弱い立場の労働者や不利な立場にある人々を、二重の雇用形態に誘い込み、虐待や医療の欠如、栄養失調が蔓延する状況に何年も閉じ込めることで行われている。 国連国際労働機関の2022年版「現代奴隷制の世界推計」報告書によれば、世界中で推定12万8,000人の漁師が、船上での強制労働を強いられているという。
インド太平洋全域において、安全、安全保障、主権、経済的繁栄を促進する「ブルー・パシフィック作戦」の一環として、米国沿岸警備隊とパートナー機関による共同パトロールを含め、志を同じくする国々がIUU漁業対策に協力している。
二国間のシップライダープログラムでは、各国の軍人や海上法執行官が相手国の船舶に乗り込み、それぞれの水域やEEZ内で法を執行できる。 例えば、米国沿岸警備隊の艦艇ハリエット・レーン(Harriet Lane)は、2024年4月に終了した79日間のパトロールの間、EEZ内でパートナー機関と共に約30回の乗り込み調査を実施した。
インド太平洋地域では、クック諸島、フィジー、キリバス、マーシャル諸島、ミクロネシア、ナウル、パラオ、パプアニューギニア、サモア、トンガ、ツバル、バヌアツが共同パトロールに参加している。
米国沿岸警備隊は、「インド太平洋地域において、各国が自国の主権を行使し、確保するための能力を創出する」ことを支援する、とフェイガン総司令官は述べている。