トム・アブケ(Tom Abke)
防衛力強化のため、オーストラリアは最近、国家防衛戦略(NDS)および2024年統合投資プログラムを発表した。 この包括的な計画では、2033~34年までに年間国防予算が10兆2,920億円(664億ドル)を超え、国内総生産の2.4%に相当すると予測されている。 この戦略的イニシアチブは、オーストラリア最大の脅威に対処し、紛争を抑止する統合的かつ集中的な防衛力の提供を目指している。
オーストラリア国防省によると、その基礎となるのは、強固な防衛態勢による抑止力を重視した「拒否戦略」の採用である。 オーストラリア国防軍 (ADF) は、サイバー、宇宙、航空、海上、陸上の全領域にわたる脅威に対処するため、統合軍へ転換しつつある。 その目的は、敵対勢力が地域的な目標を達成するための武力行使を防ぎ、それによってオーストラリアの戦略的な通信路を守ることである。
「国家防衛戦略は、紛争が始まる前に抑止することを目的とした政府の拒否戦略の採用を明示している」と、2024年4月中旬のニュースリリースで国防省は述べている。 この戦略は国防だけでなく、地域の安定を確保するためのパートナーとの協力にも焦点を当てている。
オーストラリア陸軍士官大学(Australian Command and Staff College)の地域安全保障研究の元ディレクター、カーライル・セイヤー(Carlyle Thayer)氏はFORUMの取材に対して「拒否戦略は、軍事力の『影響力のある投射』能力を開発することを目的としている。 これは、精密な長距離攻撃や阻止行動のための重要な能力を得ることを意味し、それによってオーストラリア沿岸からより遠距離にある潜在的な敵対国の資産を危険にさらすことで、その敵対国のオーストラリアに対する武力投射を抑止することが可能になる」と語った。
この投資プログラムは、国家防衛戦略の目標を達成するためのロードマップを示すものだ、と同氏は述べており、 アンザック級フリゲート艦の汎用フリゲート艦への置き換え、通常武装の原子力潜水艦の取得、オーストラリア国防軍の長距離攻撃能力の強化など、次世代能力の獲得を強調している。 後者には、オーストラリア陸軍のための高機動砲ロケットシステム、オーストラリア空軍のための統合攻撃戦闘機と新型ミサイルを搭載したスーパーホーネット戦闘機の取得が含まれる。
プログラム資金の約38%は海上能力に割り当てられており、これはオーストラリアが海上通信路の確保に重点を置いていることを反映している。22%はインフラや情報技術を含む企業および支援プログラムに割り当てられている。 残りの16%は陸上、14%は航空、7%はサイバー空間、3%は宇宙に割り当てられている。
国家防衛戦略はまた、オーストラリアの国防目標を達成するために人材が果たす重要な役割を強調している。 オーストラリア国防軍司令官のアンガス・キャンベル(Angus Campbell)大将は、ニュースリリースの中で、「新しいプラットフォームへの移行と、5つの領域にわたる新たな能力構築のために、我々は労働力の成長、再構築、再教育が必要だ。 人は、現在も、そしてこれからも、我々の能力の最も重要な要素あり続けるだろう」と述べている。
NDSは、軍人の資格基準を外国人にも拡大し、住宅補助、住宅所有支援、約511万5,000円(3万3,000ドル)の継続ボーナス、医療補助の拡大を提案している。
同戦略はまた、インド太平洋地域の地政学的緊張が高まる中、志を同じくする地域パートナーとの関与の重要性を強調している。
これに関し、セイヤー氏は次のように述べている。「オーストラリアの国家防衛戦略の主要な目的は、オーストラリア国防軍をあらゆる領域の主権に対する課題と脅威に対処できる統合軍に変革することだ。 これには、オーストラリアとその周辺地域の防衛、敵対国のオーストラリアに対する投射力の抑止、オーストラリアの海上通信路の保護が含まれる。」
トム・アブケは、シンガポール発信のFORUM寄稿者。