北東アジア特集自由で開かれたインド太平洋/FOIP

公海航行の自由

米インド太平洋軍、 航路の自由と開放を維持する グローバルキャンペーンの一環として通過作戦を実施

FORUMスタッフ

米インド太平洋軍(USINDOPACOM) は昨年1年間、統合全領域指揮統制 (CJADO) を支援する地域作戦を実施し、安全、安心で開かれた海上航路を通じて世界の経済的繁栄を確保した。

米インド太平洋軍は、他の米国統合軍司令(COCOM)および志を同じくする同盟国や提携国と、海上交通路 (SLOC) に沿った重要なチョークポイントの防衛を実証するために、世界中で日常的なオペレーションを使用して合同作戦を調整した。 これらのマルチドメイン同時作戦は、海・空・陸の共同作戦を採用した。

「米インド太平洋軍は自由で開かれたインド太平洋に引き続きコミットしており、これには歴史的に平時と戦争の両方でシーレーンを守ることを含んできた」と米インド太平洋軍のジョン・アクイリノ司令官(当時)は述べた。

米国のインド太平洋戦略は、「自由で開かれたインド太平洋を維持するために、提携国と緊密に協力し、この地域が開放的でアクセスしやすい状態を維持し、この地域の海と空が国際法に従って管理され利用されるようにする」と明言しており、自由で開かれたインド太平洋を維持する任務を米インド太平洋軍に付与している。この戦略はまた、米国国防総省に対し、米国、同盟国、提携国に対する侵略を抑止し、威圧行動に対抗する能力を強化するよう指示している。統合全領域指揮統制は、確立された規範や国際法を弱体化させようとする行為者を阻止するために、統合的抑止力というレンズを通して捉えられるべきだ。 

この通航作戦は、米国が、マラッカ海峡やホルムズ海峡からアフリカの角やパナマ運河に至る重要なチョークポイントを通じて、インド太平洋を横断する国際航路の存続可能性を守ることを、同盟国や提携国に効果的に保証するものだった。

米国は1982年の国連海洋法条約(UNCLOS)の理念を支持し、重要な水路が貿易と通商のために開かれていることを保証するため、海上交通路を保護してきた長い歴史がある。航行の自由作戦(Freedom of navigation operations – FONOP)は、統合抑止を達成するための米国戦略の中核をなすものだ。米国とともに、2024年も多くの志を同じくする国々が航行の自由作戦を実施し、海洋・海域での活動の法的枠組みとしての国連海洋条約への支持を再確認している。

脆弱な要衝を封鎖する可能性や、領土や資源に対する攻撃的な主張だけが、世界の海洋安全保障上の脅威ではない。海運事故、海賊行為、武装強盗、制裁逃れ、違法・無報告・無規制の漁業の増加は、域を越えた深刻な課題となっている。

米インド太平洋軍のインド太平洋における協調的な通過行動は、海上交通路を維持する決意を示すことで、全体的な抑止力を強化した。さらに、朝鮮半島への戦略的資産のローテーションも増やした。例えば、米国の核弾頭搭載型潜水艦が40年以上ぶりに韓国に寄港し、米国の核弾頭搭載型B52が1988年以来初めて朝鮮半島に着陸した。両資産は米インド太平洋軍の大規模な 通過行動の一部だった。

航行の自由作戦

米インド太平洋軍の全領域合同作戦は、米アフリカ軍、米中央軍(USCENTCOM)、米欧州軍、米南方軍を含む他の米国統合軍司による世界的な要衝内やその近辺での取り組みと時を同じくして、この地域の特定の場所で数多くの作戦を順次実施した。

太平洋陸軍、太平洋空軍、太平洋艦隊、太平洋海兵隊、宇宙軍、太平洋特殊作戦部隊など、さまざまな米インド太平洋軍部隊が、オーストラリア、カナダ、フランス、インド、日本、フィリピン、韓国、英国などの同盟国や提携国とともに作戦に従事した。空母打撃群、特殊水陸両用部隊、原子力潜水艦などが参加したほか、B-52Hストラトフォートレス、B1-Bランサーズ、第5世代戦闘機が、通過作戦を通じて航空支援を行った。

2023年2月から、米国、同盟国、提携国は、インド太平洋全域の主要なチョークポイント付近で、毎月この防衛作戦を実施した。防衛作戦は、バラバク、韓国、ルソン、マラッカ、ミンドロ、宮古島、シンガポールなどの西太平洋海峡の近くや、フィリピン海、アンダマン海、南シナ海の主要な場所で行われた。インド太平洋作戦地域以外では、スエズ運河、ジブラルタル海峡、ホルムズ海峡周辺でのチョークポイント防衛作戦も含まれていた。 

これらの水路を開かれた状態に維持することは、地域および世界の商業にとって不可欠だ。国連貿易開発会議によると、世界各地の海上貨物船の60%以上の貨物がインド太平洋の港湾で陸揚げされ、40%以上の貨物船が積み込みを行っている。 

このようなマルチドメイン作戦では、海・空・陸の統合戦力が、事前に調整された時間枠の中で同期して活用された。その後の海上交通路作戦では、さまざまな資産と部隊一式が、一連のフラッシュポイントで展開された。例えば、この作戦では2023年11月下旬に南シナ海の西沙諸島(パラセル諸島)付近の紛争地域をターゲットにした。また、誘導ミサイル駆逐艦ホッパー(USS Hopper)は、無害な通行を制限しようとする中華人民共和国などの国々の試みに異議を唱え、西沙諸島付近の南シナ海での航行権と自由を国際法に基づいて主張した。

第七艦隊は、2023年11月に南シナ海での通過を終えた後、声明の中で「南シナ海における不法かつ広範な海洋主張は、南シナ海沿岸諸国の航行と上空飛行の自由、自由貿易と妨げられない通商、経済的機会の自由を含む海洋の自由に深刻な脅威をもたらしている」と述べた。米国とその同盟国・提携国がインド太平洋における統合全領域指揮統制を慎重に実施し、航行の自由をさらに確保しているのはこのためだ。「米国は、請求者の身元に関係なく、世界中で過剰な海洋権益の主張に異議を申し立てる」

米軍は、安全保障と繁栄を促進する自由で開かれたインド太平洋に尽力する同盟国やパートナー国と連携して、100年以上にわたり日々南シナ海で活動している。

航行の自由作戦の定期的かつ日常的な実施は、海洋の自由に対する長年にわたる米国の国益を支えている。米国国防総省の活動は航行の自由(FON)プログラムを通じて慎重に計画され、法的な正確性が審査され、専門的に実施されている。国防総省のFON年次報告書によると、2022年度、米軍は世界中の15の権利主張者による22件の過剰な海洋主張に作戦上異議を申し立てた。

国際的な取り組み

米国の他の米国統合軍も、2023年を通じて、それぞれの責任地域で協調的な航行の自由作戦を実施した。中東地域を管轄する米中央軍は、米インド太平洋軍の努力や同盟国・提携国の努力と連携して、通過作戦を実施した。例えば、米国海軍の空母ドワイト・D・アイゼンハワー打撃群(USS Dwight D. Eisenhower Carrier Strike Group )は、2023年11月下旬にホルムズ海峡を通過してペルシャ湾に入った。「我々がこの重要な海峡を通過し、この地域で継続的に存在することは、地域の安全と安定の鍵となる航行の自由を維持する上で重要な役割を果たしている」と打撃群司令官のマーク・ミゲス(Marc Miguez)少将は語った。 

このような海上交通路作戦の重要性は、中東、特に2023年最後の四半期の紅海ですぐに明らかになった。報道によれば、12月中旬までにイエメンの反政府勢力フーシ派は、35か国以上からの貨物を積んだ少なくとも10隻の商船を、弾道ミサイルや無人偵察機で標的にしていた。 

この脅威に対抗するため、ロイド・オースティン米国防長官は12月中旬、紅海海域の商船を守るための多国間安全保障構想「プロスペリティ・ガーディアン作戦(Operation Prosperity Guardian)」の開始を発表した。毎年約2万隻の商業船舶が紅海とアデン湾を通過している、とディフェンス・ニュースは報じている。

「プロスペリティ・ガーディアン作戦は、イギリス、バーレーン、カナダ、フランス、イタリア、オランダ、ノルウェー、セーシェル、スペインなど複数の国を結集し、紅海南部とアデン湾における安全保障上の課題に共同で取り組むもので、すべての国の航行の自由を確保し、地域の安全と繁栄を強化することを目的としている」とオースティン国防長官は語る。

「これは国際的な解決策を必要とする国際的な問題だ」とイギリスのグラント・シャップス(Grant Shapps)国防大臣は言う。

イタリアのグイド・クロセット(Guido Crosetto)国防相は声明で、「安定化のための条件を整え、環境災害を回避し、テロ行為が商品価格に与えるインフレの再燃を避けるためには、この地域でのプレゼンスを高める必要がある」と述べた。

バーレーンに本部を置く「連合海上軍(Combined Maritime Forces – CMF)」として知られる多国籍パートナーシップが、この取り組みを監督している。2001年に11か国で設立された連合海上軍は、現在では39か国が加盟し、オマーン湾、インド洋、ペルシャ湾、紅海、アデン湾を守るためにさまざまな任務部隊が編成されている。 

フランスは連合海上軍の一員として、2023年12月に紅海南部とアデン湾のパトロールを開始した。フランス海軍のフリゲート艦ラングドック(Languedoc)は、イエメンからと思われる2機のドローンを撃墜し、ノルウェーの石油輸送船を威嚇したドローンを破壊した。フランス海軍によると、ラングドック号はハイジャックから石油輸送船を守ることに貢献したという。

米国海軍によると、連合海上軍は2022年に紅海、バブ・エル・マンデブ海峡、アデン湾での海上警備と能力開発を行うため、連合任務部隊(CTF)153を設立した。 

「中東地域はダイナミックで広大な地域だ。周辺海域を単独でパトロールできる海軍は1つもない」と、米海軍中央軍、米第5艦隊、CMFの司令官であるブラッド・クーパー(Brad Cooper)中将は、CTF153の就役に際して述べた。「提携国とチームを組んでいるとき、我々は常に最高の力を発揮する」

米国海軍によれば、連合海上軍の任務部隊には他に、オマーン湾とインド洋の海上安全保障に重点を置くCTF150、地域の海賊対策を指揮するCTF151、アラビア湾の海上安全保障に特化したCTF152がある。

全体的な作戦の成功

統合全領域指揮統制は、米国とその同盟国および提携国が、世界中の自由で開かれた経済回廊を確保する能力と、あらゆる場所の海上交通路を保護するために必要なときに迅速に対応する能力を示した。

米国とその同盟国・提携国は、世界的な、特にインド太平洋における安全保障のビジョンを共有するため、過去にないほど協力し合っている。米インド太平洋軍の協調的海上交通路作戦は、この地域での協力と相互運用性を飛躍的に前進させるのに一役買っている。

2023年12月、日本、韓国、米国は、北朝鮮に対抗するため、複数年にわたる三国間演習計画と、リアルタイムのミサイル警報データ共有メカニズムの稼働を発表した。オーストラリアと日本は、二国間および三国間演習や、既存の豪米戦力構想に日本を組み入れることで、協力関係を強化した。

一方、インドは米国との演習に最新鋭戦闘機と戦略爆撃機を組み込み、相互運用性を強化し、インド太平洋の安定と安全保障を促進するための努力を共有している。フィリピンは、あらゆる領域で米国との防衛協力を強化するためのガイドラインを導入した。さらに、その他の二国間および多国間演習も、規模と範囲を拡大し続けた。例えば、2023年の「パシフィック・ヴァンガード(Pacific Vanguard)」には、オーストラリア、日本、韓国、米国から2,000人以上の海軍関係者が集まった。

米国は2023年を通じて同盟国や提携国と協力し、自由で開かれたインド太平洋を支援するため、平和、安定、抑止のための画期的な成果を達成した。米インド太平洋軍の協同通過作戦は、今後も海の自由と安全を確保するために不可欠な要素であり続けるだろう。その海上交通路作戦は、インド太平洋およびそれ以遠における米国の防衛戦略にとって決定的なマイルストーンとなっている。

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