国際法を侵食する中国人民解放軍の組織的強制力
FORUMスタッフ
各国のリーダーたちは、中国の人民解放軍(PLA)が国際空域で軍用機の危険なインターセプトを行ったり、 公海でリスクの高い船舶操作をしていること、また中国の海警局や海上民兵が主権国家の領海で攻撃的な戦術をとっていることを、長年にわたって非難してきた。
米国国防総省(DOD)の中華人民共和国の軍事と安全保障の発展に関する2023年報告書によると、この高圧的で危険な動きは、国際法で許可されている地域での安全な飛行、航行、運用を妨げるために図られた試みの一環であるという。
このようなグレーゾーン戦術(戦争行為に近い強制的な動き)の目的は、北京が主張する領土付近での「合法的な活動を停止するよう、米国や他の国に圧力をかけること」である。 これらの主張は、国際的に認識された国境を越えて行われることが多くなっている。
対立はエスカレートしている。 米国国防総省によれば、2021年から2023年にかけて、中国人民解放軍のパイロットは、東シナ海と南シナ海で米軍機に接近する際、過去10年間の合計を超える180回という数の無謀な操縦を行ったという。
インド太平洋安全保障問題担当のイーリー・ラトナー(Ely Ratner)米国防次官補は記者団に対し、「人民解放軍が他国に対して威圧的で危険な傍受を行ったケースを考慮すると、その数は過去2年間で米軍、同盟国、パートナー国の航空機に対する300件近くに上る」と述べた。
最近機密解除された写真と動画は、中国人民解放軍のパイロットが米軍機からわずか数メートルしか離れていないことを示している。 オーストラリアとカナダでも同様の危険なインターセプトを報告している。 米国国防総省は、中国人民解放軍の無謀な行為の例として、他国の軍用機の近くで行われたバレルロールやその他の空中アクロバット飛行を挙げている。
米国の国防当局者によると、直近のこのような事件は2023年10月下旬に発生したもので、中国人民解放軍の航空機が南シナ海上空の米軍のB52爆撃機から約3メートル以内に接近した。
一方、中国政府は日本やフィリピンを含む国々に対して海上での威圧を強めている。
中国が領有権を主張し、支配の脅しをかけている尖閣諸島は日本の統治下にあるが、2024年初頭、中国海警局が日本の漁船や巡視船と衝突し、日本の航空機にこの海域から離れるよう警告したことで、緊張が再度高まった。 ホノルルにあるイーストウエストセンター(East-West Center)のデニー・ロイ(Denny Roy)上級研究員はディプロマット誌に、中国の戦略は、軍事衝突の危険性が常にあることで、「日本を怯えさせ、服従させる」 ことを期待し、島々への圧力を強め、維持することだと記載している。 それは失敗した。
フィリピンの領海では、南シナ海で中国が不法に領有権を主張している場所で、中国海警局や海上民兵が定期的に放水砲を使用し、阻止行動、シャドーイングなどの危険な作戦を状態化している。 2024年3月、中国海警局が船舶に放水砲を発射し、フィリピン船員4人が負傷した。 フィリピン政府は、アナリストが「アサーティブな透明性」と呼ぶ、中国の侵略に関する公開情報を用いることで対応してきた。
「多くの政府にとって、何もかも通常の状態に戻したいがために、何も公表せず、静かにしていたいという誘惑がある」と、カリフォルニア州スタンフォード大学の海事透明化プロジェクト『シーライト(SeaLight)』のディレクターであるレイモンド・パウエル(Raymond Powell)氏は、ラジオ・フリー・アジア(Radio Free Asia)ニュース・サービスに語った。 しかし、通常の状態は「この地域や他の東南アジア諸国にとって、ますます好ましくないものになってきている」と氏は言う。
「グレーゾーンの活動を常態化させればさせるほど、それは単に期待されるものとなり、最終的には、法的にも国際的にも合法的な権利のすべてを失うことになる」