反政府勢力フーシ派の攻撃により、中国の偽りの決まり文句とグローバルコモンズ保護の不履行が露呈
FORUMスタッフ
イランとつながりのあるフーシ派の反政府勢力は、2023年11月中旬以来、紅海と北西インド洋で50回以上にわたり、商船を攻撃している。 報道によると、イエメンを拠点に活動しているこれらのグループは、2024年2月に船を1隻沈没させ、3月には3人の乗組員を殺害、4人を負傷させ、20隻以上の船に損害を与えたという。
この攻撃は国際的な海運危機を引き起こし、数百隻もの船舶がアフリカ南端付近での迂回を余儀なくされ、企業、消費者、各国に多大な損失を負わせている。
2023年12月、米国は、地中海とインド洋、スエズ運河とアフリカの角を結ぶ紅海の要衝を航行する商船を保護するため、現在20か国以上が参加する連合軍による「繁栄の守護者」作戦(Operation Prosperity Guardian)を開始した。 欧州連合の海軍もまた、紅海とアデン湾地域の貨物輸送を保護するため、「アスピデス」作戦(Operation Aspides)を考案した。 デジタルメディア「ブレイキング・ディフェンス(Breaking Defense)」は、インドなどの志を同じくする他の国々も、この地域に軍艦を配備していると報じている。
米国、その同盟国およびパートナーにとって、国際的な海上交通路(SLOC)やチョークポイントを保護することが安全保障上の優先課題となっている。 これらの同盟国およびパートナーは、重要な水路における貿易の自由を維持し、敵対行為からの保護を確保するために、定期的な訓練や安全保障活動を実施し、グローバルコモンズを保護するために協力している。
紅海における反政府勢力の攻撃は、インド太平洋全域をはじめとする海上交通路の保護が世界の安全保障にとって不可欠である理由を例示している。 例えば、敵対勢力や悪意のある行為者がインド太平洋のチョークポイントを混乱または封鎖しようとした場合、その影響は商業に壊滅的な打撃を与え、安全保障を脅かす可能性がある。
一方、米国国防大学准教授のドーン・マーフィー博士(Dr. Dawn Murphy)は、非営利教育団体である米中関係全国委員会が主催した紅海における中国の役割に関するフォーラムの紹介の中で、中国は「混乱を認めない」と公言しているにもかかわらず、この地域における国際安全保障の取り組みにほとんど貢献していないと述べた。
米国防総省報道官パトリック・ライダー(Pat Ryder)空軍少将は3月上旬に、「中国が生産的な役割を果たすことを歓迎するが、私の知る限り、現段階では、彼らは船員や国際海運を保護するためのいかなる種類の作戦も提案しておらず、実施もしていない」と述べた。
米中央軍(CENTCOM)によると、同月下旬、フーシ派の反政府勢力は紅海またはアデン湾において以前は「中国船舶を攻撃しない」と表明していたにもかかわらず、中国が所有・運航する石油タンカーに向けて対艦弾道ミサイル5発を発射した。
また、1発のミサイルがパナマ船籍の黄埔号(M/V Huang Pu)に命中した。被害は最小限で死傷者は報告されていない。
「ブレイキング・ディフェンス」によると、欧州とインド太平洋間の貿易の約40%が紅海とスエズ運河を航行しているにもかかわらず、中国は「繁栄の守護者作戦」や「アスピデス作戦」など、商業船舶を保護するための軍事連合への支援を控えているという。 その理由として、中国の石油輸入は主にホルムズ海峡を経由しており、中国政府は石油の53%を中東から輸入しているが影響を受けていなかったからだとアナリストは指摘する。
その代わり、中国海軍の艦艇が中国商船を護衛して紅海を通過したと報じた。
黄埔号が攻撃されるまでは、中国船舶は通常通り運航しており、航行を妨害される恐れはほとんどなかったとアナリストは述べた。 実際に、他国で登録された船舶の中には、標的にされるのを防ぐために中国国旗を掲げたり、識別データを変更し中国船であるかのように示すものもあったとブルームバーグ・ニュースが2024年1月に報じている。
海上犯罪に関するウェブサイトによると、同月、フーシ派の反政府勢力報道官は、スエズ運河を航行する中国とロシアの船舶に対し、イスラエルとの関係がないことを条件に「安全な航行」を保証した。 この誓約は、中国とロシアにとって海運保険料を引き下げる可能性があり有利に働くとアナリストは述べている。
西側諸国の船舶に対する攻撃によって、中国は経済的・政治的に利益を得ている可能性があると、中国のアナリストでさえ主張しているとニューズウィーク誌は報じている。
人民解放軍国防総合大学のシャオ・ユンファ(Xiao Yunhua)教授はソーシャルメディアプラットフォーム「抖音(Douyin)」で「フーシ派は当初のイスラエル封鎖を西側諸国に対する封鎖に変えてしまった。
この攻撃により、中国はアジアから欧州への鉄道網を発展させることができた」と述べている。 また、ニューズウィークによると、「ある意味、フーシ派は我々中国に大きな恩恵を与えてくれた」と同氏は述べたという。
中国は、反政府勢力がイスラエル、イギリス、米国と関係がある商船に対して無人機と弾道ミサイルによる攻撃を繰り返していることを非難しておらず、中国政府は、米国からの要請を受けて、1月にようやくイランに攻撃を抑制するよう圧力をかけたが、効果はなかったと報道されている。
安全保障アナリストは、中国が他の国々とともにグローバルコモンズを守っていれば、中国船への攻撃は防げたかもしれないと主張している。
「中国政府は、湾岸とインド洋北西部における自国のプレゼンスと影響力を強化するために、米国と欧州の安全保障を利用している」と大西洋理事会欧州センターの客員研究員であるレオニー・アラード(Léonie Allard)氏は2024年2月に米国を拠点とするシンクタンクに寄稿した。 また、同氏は「中国が利益を享受し、自国の目標を前進させている一方で、他の国は海上交通路を確保するための取り組みや定評を維持するためのコストを背負っている」とも述べている。