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2024年2月から3月にかけてタイで開催された「コブラ・ゴールド(Cobra Gold)」演習には、30か国から9,500人以上の参加者とオブザーバーが参加した。この演習は、タイと米国が毎年共催している安全保障協力訓練のうち、パンデミック後としては最大規模となる。
タイ王国軍国防長のソンウィット・ヌーンパックディー(Songwit Noonpackdee)大将は、ラヨーンで行われた開会式で、「我々は、すべての領域にわたるあらゆる範囲の脅威に対処するため、軍事作戦の範囲を拡大した」と述べ、演習は地域の安定を高め、同盟国・提携国間の協力を促進すると付け加えた。
複数の国々から結集した軍の兵士たちが、水陸両用強襲作戦、合同実弾射撃、非戦闘員避難作戦(NEO)などの演習や、複数の州にわたる部隊レベルの訓練を実施した。
全領域合同作戦(CJADO)には、韓国の海兵隊・海軍、タイ王国空軍・海軍、米国の空軍・陸軍・海兵隊・海軍から2,200人以上の軍人が参加した。 部隊はほぼ同時に水陸両用強襲訓練、模擬封鎖の撃破、航空・海上諜報、監視、偵察(ISR)の実施、統合射撃の予行演習、統合部隊からの戦術通信の導入などを行った。 全領域合同作戦は、空中・特殊部隊・海上の諜報、監視、偵察・特殊部隊による小型ボート投入、医療避難、飛行場掌握、重要インフラ警備、兵站維持などを包括的に訓練した。
米国海軍のクリストファー・ストーン(Christopher Stone)少将は、「この演習の複雑さと、すべての国の協力体制に驚かされた」 と述べ、 「皆が共通の目的のために協力し合う姿は、本当に素晴らしいものだった」と語った。
陸・空・海での訓練に加え、「コブラ・ゴールド」では宇宙・サイバー演習も行われた。 宇宙領域での訓練では、人工衛星を使った情報収集のシミュレーションが行われたと、日経アジアが報じた。 参加者らはまた、サイバー攻撃の追跡と防御の模擬訓練も行った。
ロバート・ゴデック(Robert Godec)駐タイ米国大使は、「コブラ・ゴールド期間中のサイバー防衛に関するパートナーシップは、巧妙化する悪意あるサイバー行為者に対抗するため、最新のサイバー専門知識と訓練を活用する機会だ」と述べ、 「サイバー脅威に対抗する専門性を高めることは、デジタル・ネットワークを保護し、市民を守ることにつながる」と語った。
「コブラ・ゴールド」は人道支援・災害救援(HADR)に重点を置いているため、この演習は非伝統的な安全保障上の脅威にも関連している。
ゴデック大使は「昨年(2023年)4月、スーダンで大規模な武力紛争が発生した際、タイ王国空軍はコブラ・ゴールド)から学んだ教訓(非戦闘員避難作戦)を生かした」と語り、さらに、 「タイ王国軍機3機が、そこで学ぶ学生約200人を含む約300人のタイ国民が暴力から逃れられるよう空輸した。 非戦闘員避難作戦はコブラ・ゴールドでは定期的に実施されており、安全保障上の課題に対処するためのベストプラクティスを共有している」と述べた。
ストーン少将によると、2024年の人道支援・災害救援訓練では、多国籍の参加者が負傷者のトリアージ、水難救助、消火活動、建物倒壊への対応を同時に行ったという。 「言葉の壁にもかかわらず、流れるような動きで、本当に素晴らしいものだった」と語った。
ストーン少将は「これは単なる練習ではない、 日常的に普通に行っていることだ。 … 我々の任務部隊は、第31海兵遠征部隊や水陸両用強襲揚陸艦アメリカ(USS America)とともに、昨年のパプアニューギニアの火山噴火後の救援活動に参加した。 海兵隊は現在、フィリピンの洪水救援を支援している。 だから、今回の演習でそうしたことを実践することは、今後我々全員にプラスになるだろう」と語った。
演習の人道支援活動の一環として、日本陸上自衛隊、タイ海軍、米国陸軍・海兵隊の隊員が、チャチューンサオにあるバンノンヤイ学校(Ban Nong Yai School)の校舎を建設した。
一方、タイ紙「ザ・ネーション(The Nation)」によると、タイと米国の潜水士たちが、2022年12月にタイ湾の嵐で沈没し、乗組員24人が死亡、5人が行方不明となったタイ海軍のコルベット「スコータイ(HTMS Sukhothai)」を引き揚げた。
「コブラ・ゴールド」期間中、インドネシア、日本、マレーシア、韓国、シンガポール、タイ、米国が戦闘の模擬演習やその他の訓練に参加した。 オーストラリア、インド、中国は人道支援・災害救援訓練に参加した。 また、その他20か国の要員もオブザーバーや 計画担当者として参加した。 2024年で43回目を迎えたこの演習は、世界で最も長く続いている多国間軍事演習のひとつであり、東南アジアでは最大規模のものだ。