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インド太平洋全域で拡がっている核兵器と非核ミサイルは、この地域全体の安全保障上のジレンマに拍車をかけている。 中国は、大陸間弾道ミサイルや地域間弾道ミサイル、中・短距離弾道兵器など、増大する能力によって、広大な主権を主張している。
一方、挑発的な姿勢を見せる北朝鮮は、国際連合が禁止している兵器開発計画に固執しており、米国戦略軍(USSTRATCOM)によれば、核兵器運搬能力を強化する意向を示しつつ、米国とその同盟国である日本や韓国に到達可能なミサイルを開発している。
ミサイル防衛能力は、敵対国からの攻撃や威圧行動を阻止する鍵であると、米国戦略軍司令官アンソニー・コットン(Anthony Cotton)大将は、2023年の米国上院軍事委員会で語った。
ミサイル技術の拡散は、システムの統合と同盟国や提携国との協力への継続的な投資が必要だ、とコットン司令官は述べた。
インド太平洋における米国軍事資産は、パトリオット地対空バッテリー、終末高高度防衛ミサイル(THAAD)、イージス艦などのミサイル防衛システムによって守られている。これらのシステムは、レーダーや衛星システムを使って脅威を追跡し、ミサイルやロケットを飛行中に破壊する。
2022年に中国が自国本島上空に弾道ミサイルを発射したのを目の当たりにした台湾は、地対空ミサイル「スカイボウIII(Sky Bow III)」の発射施設12か所の整備を進めている。 この兵器は航空機だけでなく、巡航ミサイルや短距離弾道ミサイルも標的にする。 台湾の主要な兵器メーカーである国家中山科学研究院(National Chung-Shan Institute of Science and Technology)によれば、台湾は「スカイボウ」システムをパトリオット・システムとともに配備し、島の低高度防空基幹を形成しているという。
韓国軍は終末高高度防衛(THAAD)ミサイルとパトリオットミサイル防衛システムを運用し、韓国型ミサイル防衛システム(KAMD)アーキテクチャーを構成する能力の開発と配備を続けている。 多層構造の韓国型ミサイル防衛システムには、レーダーと運用管制を備えたさまざまな射程と高度の迎撃ミサイルが組み込まれている。 韓国はまた、北朝鮮のロケットを探知・追跡・破壊するイスラエルの「アイアンドーム(Iron Dome)」をモデルにしたシステムの開発を加速させている、とザ・ジャパン・ニュース(The Japan News)は報じている。
2023年12月には、日本、韓国、米国が、ミサイル発射をリアルタイムで探知・評価するシステムを稼動させた。 関係者によれば、これら三国はまた、増大するミサイルの脅威への対応を強化するため、複数年にわたる軍事訓練の計画を策定したという。
日本の二段構えの弾道ミサイル防衛は、イージス艦から発射される迎撃ミサイルで大気圏外の発射体を破壊し、パトリオットミサイルで再突入後の脅威を狙い撃つ。 日本は2027年までに、パトリオット・システムを補完し、弾道弾や標的が難しい極超音速迎撃用誘導弾を阻止できる改良型迎撃ミサイルを導入する計画だと、日経アジア誌は報じている。
一方、日本と米国は、このような兵器が高速で降下する前にインターセプトする対極超音速システムを開発することで合意した。
オーストラリア政府は、2023年の「国防戦略見直し(Defence Strategic Review)」で統合的な空とミサイルの防衛システムの必要性が指摘されたことを受け、統合空戦管理システムの第1フェーズについて、米国のロッキード・マーチン(Lockheed Martin)社に約733億円(4億8,700万ドル)の契約を発注した。 このミサイル・シールド・プロジェクトは、「すべての戦闘領域にわたるすべてのプラットフォームとセンサーを、脅威を追跡し、共同対処を調整し、その対処を標的に向けることができる単一のインターフェースに接続する」とオーストラリア防衛誌は報じている。 「まさに、『オールセンサー、ベストシューター 』いう言葉がぴったりだ」という。
インド太平洋の別の場所では、インドが弾道ミサイル防衛を拡大し、レーダーによる追跡と能力強化を図っている、と報道されている。
米国ミサイル防衛局(U.S. Missile Defense Agency)によれば、グアムでは、巡航ミサイル、弾道ミサイル、極超音速攻撃に対して重層的な防御を実現する「持続的な360度ミサイル防衛システム」を計画している。
米国は「2022年ミサイル防衛見直し(2022 Missile Defense Review)」の中で、同盟国や提携国との協力は引き続き優先事項であり、志を同じくする国々と統合し、協力し、海外の提携国間の協力や情報共有を促進することを表明した。