AP通信
2024年1月中旬、台湾総統選の投票用紙の集計が進むにつれ、不正投票の噂が飛び交い始めた。 人々が票を捏造し、職員が集計を誤り、結果を歪曲したという根拠のない主張が見られた。
大勢の人に共有された映像には、投票を記録していた女性が、誤って間違った候補者の欄に1票を記入してしまう場面が映し出されていた。 それは明らかに、選挙は信用できないというメッセージだった。 結果は捏造だ、というメッセージだ。
しかし、そのメッセージは正しいものではなかった。
中国が偽情報を使って投票の完全性を損なうのではないかという懸念が選挙につきまとっていたため、台湾の対応は迅速だった。
事実確認グループはこの噂が嘘であることを明らかにし、自治領台湾の中央選挙管理委員会は記者会見を開き、選挙違反の主張に対して反論した。 ソーシャルメディアのインフルエンサーたちは、投票の集計方法を説明するコンテンツを投稿した。
選挙作業員が票を数え間違えたことを示す映像は、選択的に編集されていたことが事実確認者によって判明した。 独立系ファクトチェック・チャットボット、MyGoPenによれば、有権者は誤りに気づき、選挙管理員はすぐにカウントを修正したという。
現職の民進党頼清徳(Lai Ching-te)が勝利した今回の選挙では、このような映像が何十本も流され、事実確認担当者はそれらを否定する必要に迫られた。
「純粋にそう信じていた人もいたはずだ。 選挙結果が出たとき、彼らは何かおかしいと思っただろう」と、非営利ジャーナリズム組織である台湾のファクトチェック・センター(FactCheck Center)のイブ・チウ(Eve Chiu)編集長は語った。
同センターは、有権者の不正行為とされる複数の映像が偽りであることを証明した。 映像の出所は不明だ。
ダブルシンク・ラボ(Doublethink Lab)の調査によれば、台湾を自国領土と主張し、武力による併合をちらつかせる中国は、選挙に先立ち、台湾をターゲットに偽情報を流したという。 偽情報の多くは、民進党に対する信頼を損なわせようとするものだった。 また、米国による台湾支援をターゲットにしたシナリオも存在した。
大西洋評議会(Atlantic Council)のデジタル・フォレンジック・リサーチ・ラボ(Digital Forensic Research Lab)のシニア・レジデントフェローで、中国の偽情報を専門とするケントン・ティボー(Kenton Thibaut)氏によれば、台湾がこのような偽情報に効果的に対応できるのは、その脅威が真剣に受け止められているからだという。 ティボー氏は、台湾のアプローチを、偽情報やプロパガンダを告発する政府、独立したファクトチェック団体、個人に依存している「社会的全体的な対応」と呼ぶ。
台北の駐米経済文化代表であるアレクサンダー・ター・レイ・ユイ氏(Alexander Tah-Ray Yui)は、政府はデマに対抗するため、できるだけ早くデマ情報を特定し、否定しなければならないことを学んだと述べた。 MyGoPenや、Googleから約1億4,600万円(100万ドル)を受け取ったFactCheck Centerのような組織は、一般の人々から報告された個別の噂をが偽りであることを証明することで、人々の意識を高めることに注力してきた。
「昔はみんなビンや缶をゴミ箱に捨てていたのに、今は分別している。 それは、社会教育の期間を通じて実現したことだ」とチウ氏は述べ、 「誰もが意識を少しずつ高めていかなければならず、それには時間が必要だ」と語った。
台湾の選挙は大きな危機を迎えることなく終わったが、チャレンジは進化している。 住民や政府関係者は警戒を怠らず、偽りのシナリオに立ち向かっていかなければならない。 ダブルシンク・ラボが選挙後に行った分析によれば、中国による情報操作の試みはますます局地的かつ巧妙化している。