ガスティ・ダ・コスタ(Gusty Da Costa)
2023年11月にインドネシアのジャカルタで開催された第10回東南アジア諸国連合(ASEAN)国防相会議(ADMMプラス)では、地域の緊張が高まる中、多国間防衛外交を通じて安定の促進を中心に、東南アジアの国防指導者とインド太平洋の他の地域のカウンターパートが話し合った。
会議にはASEAN10か国のうち9か国から国防相が参加したほか、ASEAN対話パートナー8か国( オーストラリア、インド、日本、ニュージーランド、中国、ロシア、韓国、米国)も参加した。
2021年2月の軍事クーデター以来内戦状態に陥っているASEAN加盟国のミャンマーからは代表者は出席しなかった。
会議では、「インド太平洋地域におけるASEANの展望」(AOIP)を防衛の観点から実施するためのコンセプト・ペーパー、「ASEANアワ・アイズ(ASEAN Our Eyes)」情報プラットフォームの標準運用手順の改訂案、地域の食料安全保障を支援するための軍事資産の利用に関するものなど、10件の文書が採択された。
シンガポールのウン・エンヘン(Ng Eng Hen)国防相とインドネシアのプラボウォ・スビアント(Prabowo Subianto)国防相は、緊張が高まっている現在におけるフォーラムの価値を強調した。
参加者たちは「問題のある箇所をまるで存在しないかのように覆い隠そうとはしなかった」とエン国防相は述べ、 むしろ、地域の安全保障上の重要課題について話し合い、「これらの困難な問題で前進を遂げるために集まった」と語った。
プラボウォ国防相は、重要な航路における「誤解」を避けるため、南シナ海の行動規範を確立する努力が続けられていると述べた。 同相はさらに、「我々の意に反して事件が起こるかもしれないが、緊張が高まることは望んでいない」と述べた。
プラボウォ国防相はミャンマーの紛争についても言及した。 「ASEANは他国の内政に干渉しないという原則を掲げている」とした上で、 「しかし、我々は平和的解決に向け、影響力を行使する」と述べた。
プラボウォ国防相は、ASEAN国防相会議の傍ら、ロイド・オースティン米国防長官と会談し、両政府間の防衛協力協定に署名した。 プラボウォ国防相は、今回の会談は、東南アジアの流動的な安全保障情勢についての認識を深め、協力関係を強化するための貴重な機会だったと述べた。 また、米国との協力で不可欠な分野は進化する課題に直面するASEANの能力を向上させることだ、と述べ、
「平和、繁栄、安全保障の場である、より強く、より強靭なインド太平洋地域を構築するために、この機会を活用していきたい」と語った。
インドネシアのジョグジャカルタにあるUPNベテラン大学で国際関係を専門とするニコラウス・ロイ(Nikolaus Loy)氏は、国防の観点から「インド太平洋地域におけるASEANの展望」の実施を提唱することで、国防相らはASEANの安全保障、独立、繁栄を支持する重要な立場を取った、とFORUMに話した。
また、「この独自の立場は、海洋、経済、開発分野におけるオープンで包括的な協力を通じて追求される、インド太平洋地域の平和、安定、経済成長を強調するものだ」と述べ、
中国が軍備を増強し、「グローバルパワーになろうとしている」ことや、麻薬や人身売買、自然災害、パンデミックといった非伝統的な脅威を考えると、防衛協力の重要性はますます高まっている、と指摘し、 「これらの要因は莫大なコストとリスクを伴うため、一国だけで 地域の安定を維持することは不可能だ」と述べた。
プラボウォ国防相によれば、ASEAN国防相会議はまもなく拡大する可能性があり、2002年に独立した東ティモールにオブザーバー資格を与えるガイドラインが11月に採択され、ASEANの11番目の加盟国となることが決まっている。 また、EU、フランス、英国もASEAN国防相会議に代表を派遣することに関心を示しているという。
ガスティ・ダ・コスタは、インドネシア・ジャカルタ発信のFORUM寄稿者。