フィリピン、南シナ海での中国の脅威に対抗するため防衛関係を強化
マリア・T・レイエス(Maria T. Reyes)
中国がもたらす脅威は、南シナ海での国際法違反から自治権を持つ台湾への侵攻の可能性まで、フィリピンの国防政策と安全保障提携国にとって中心的な関心事となっている。 これは、フィリピンが東南アジア諸国連合(ASEAN)の一員であり、オーストラリア、日本、韓国と共にインド太平洋地域で共有している米国の同盟国としての役割にも当てはまる。
中国によるフィリピンの排他的経済水域(EEZ)内での国際法違反には、南シナ海のスプラトリー諸島(南沙諸島)にある3つの低潮海域での施設建設と軍事化が含まれる。 さらに、中国海警局の船舶は、同じく排他的経済水域内にあるセカンド・トーマス礁(フィリピンではアユンギン礁と呼ばれる)で軍事拠点として活用されているフィリピン海軍の「シエラ・マドレ」号に補給するフィリピン船舶に対して嫌がらせを繰り返している。 2023年8月初旬には、中国海警局の警備船がフィリピン海軍の補給艦に向けて放水銃を発射した。
フィリピンの排他的経済水域(EEZ)のいかなる部分に対する中国の領有権主張も、2016年に国際法廷によって国連海洋法条約(UNCLOS)の下で違法と裁定されており、この裁定は2019年にASEAN首脳によって採択された「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」でも支持されている。 同アウトルックは中国について言及していないものの、各国が国連海洋法を含む国際法を遵守する必要性を明記している。
インドネシア、マレーシア、ベトナムを含む他のASEAN諸国も、違法漁業や資源探査など、中国による排他的経済水域の侵犯をめぐって中国と衝突している。
マニラのデ・ラ・サール大学で国際学を教えるレナート・クルス・デ・カストロ(Renato Cruz De Castro)教授はFORUMの取材に対し、「我々(ASEAN諸国)に共通しているのは、もちろん中国を非常に警戒しているということだ」と述べた。
2023年 8 月下旬にマニラ沖で行われた、オーストラリア、日本、フィリピン、アメリカの海軍が参加する多国間演習では、このような地域的緊張を背景とした南シナ海の安全確保が中心的な目的だった。
AOIPは「自由で開かれたインド太平洋」というビジョンと基本原則を共有しており、日本もこれに賛同している」と、 海上自衛隊の西山高広海将補は演習後のニュースリリースで述べた。
フィリピンの米国やその他の提携国との防衛協力は、海洋の自由の保護だけにとどまらない。 「すでに台湾に焦点を合わせている」とデ・カストロ教授は語る。
20万人以上のフィリピン人労働者が住む台湾に中国が侵攻する脅威は、中国が台湾とフィリピン北部の間にあるルソン海峡を支配しようとしている可能性を含め、フィリピンに直接的な脅威をもたらす、と教授は説明している。
これに対してフィリピンは、オーストラリア、日本、韓国との安全保障パートナーシップを強化している。 さらに最近、米国との防衛協力強化協定に基づき、北ルソンを含む4か所の軍事施設への立ち入りを許可した。
「我々は東南アジアの北側に位置し、台湾に最も近い」とデ・カストロ教授は述べ、 「つまり、我が国の関心は基本的に米国の他の同盟国の関心、 そしてもちろん、米国の関心とも一致している」と語った。
マリア・T・レイエス(Maria T. Reyes)は、フィリピン・マニラ発信のFORUM寄稿者。