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南シナ海における「武力による威嚇や武力行使」に対抗する米国とベトナム

フランス通信社

2023年9月、中国共産党の船舶が関与する衝突事故の発生を受け、その数日後に米国とベトナムが中国側の行為を紛争海域の南シナ海における「武力による威嚇または武力行使」と指摘して警告を発した。

ジョー・バイデン(Joe Biden)米大統領とベトナム共産党のグエン・フー・チョン(Nguyen Phu Trong)書記長(同国最高指導者)は、戦略的水路に関して意見の対立が発生した場合は国際規範に基づいて解決する必要があると主張している。

常設仲裁裁判所が中国の主張には法的根拠がないという判決を下しているにも関わらず、中国は年間約145兆円(1兆米ドル)超に相当する物品を輸送する貿易船舶が通過する海域のほぼ全域の領有権を主張している。

バイデン大統領のベトナム訪問時、同大統領とチョン書記長は声明を通して、「武力による威嚇や武力行使なしに、国際法に基づいて紛争を平和的に解決することを断固として支持する」と発表した。

両首脳はまた、「南シナ海における航行の自由と領空通過権、そして潤滑かつ合法的な物流」の維持を促している。

ベトナムによる国賓歓迎式典に参加するジョー・バイデン米大統領。 動画提供:ロイター通信

両首脳は両国関係を「包括的戦略パートナーシップ」に格上げすることで合意しており、国際的にはこれは同地域に対する主張をますます強化する中国共産党への対抗手段と捉えられている。同声明の発表があったのはこの翌日のことである。 この合意に伴い、半導体供給網の構築などでベトナムとの連携を強化した米国は、ベトナムの能力開発と生産拡大の支援も念頭に置いている。

合意内容には、スマートフォンや電気自動車用蓄電池といったハイテク機器の製造に使用される希土類(レアアース)に関する取り決めも含まれている。

米国当局によると、ベトナムは世界第2位の希土類埋蔵量を誇ることから、サプライチェーンの多様化と強化を目指す米国政府にとって、ベトナム政府は重要な役割を果たす国になると考えられている。

1979年から88年にかけて中国と戦争を行ってきたベトナムは、北方に鎮座する巨大な隣国を警戒しており、南シナ海に点在する多くの小島や露頭の領有権を主張する数少ない国のひとつである。

2023年9月上旬、フィリピンがセカンド・トーマス礁で意図的に座礁させた軍艦の海軍水兵への物資補給を行う沿岸警備隊の船舶2隻に対して、中国海警局と海上民兵の船舶が妨害行為を働いたとしてフィリピン側が抗議を発表した。 フィリピン政府の訴えによると、南シナ海の哨戒活動および係争中の海域の岩礁周辺で群れ戦術を展開するために中国共産党から派遣された数百隻の船舶は、紛争海域を航行するフィリピン船舶を日常的に妨害および偵察している。

2023年8月にセカンド・トーマス礁で補給物資を搭載したフィリピン船舶の1隻に対して中国海警局の船舶が放水銃を発射してその補給任務を妨害するという事態が発生したことで、フィリピン政府と中国政府の間で燻っていた緊張が再燃することになった。 ベトナム漁船乗組員の報告によると、同月に中国海警局の船舶はベトナム漁船に対しても放水銃による攻撃を行い、漁船乗組員の1人が腕の骨折、船長が頭部負傷を負っている。 ベトナム中部沖に位置するリーソン島の漁業協会の訴えによると、2014年以来、少なくとも98隻のベトナム船が中国船舶の攻撃により破壊されている。 同島には紛争海域での漁業で生計を立てる数百世帯が居住している。

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