オセアニアパートナーシップ

グアム島とテニアン島における軍事プレゼンスを強化する米軍

トム・アブケ(Tom Abke)

中国人民解放軍(PLA)によるミサイル脅威の高まりを踏まえ、インド太平洋の同盟・提携諸国に対する防衛の取り組みを維持することを目的として、米軍がグアムを含むマリアナ諸島周辺の防衛能力強化に注力している。 同取り組みには、軍事演習および群島・離島における軍事資産の計画的構築が含まれる。

シンガポールに所在する南洋理工大学(NTU)S・ラジャラトナム国際学大学院(RSIS)の研究員であるコリン・コー・スウィー・リーン(Collin Koh Swee Lean)博士はFORUMに対して、「中国人民解放軍の長距離攻撃能力が向上していること、特に同軍が保有する弾道ミサイルと巡航ミサイルの数が増加していることで、一段と第一列島線に沿ったインド太平洋周辺に位置する米軍基地への脅威が高まっている」と説明している。 リーン博士の説明によると、グアム島やテニアン島などの北マリアナ諸島周辺で米軍が防衛力の強化を図っていることは、地域の平和と安定性の維持に対する米政府の関心が高まっていること示すものである。

2023年に入ってからも、グアム島とテニアン島で防衛演習がすでに2回実施されている。 2月には、オーストラリア、日本、米国の約2,000人の航空兵、海兵隊員、水兵が参加して日米豪共同訓練「コープ・ノース23(Cope North 2023)」が実施された。今回の演習では、大規模部隊の空挺統合、迅速戦闘展開(ACE/Agile Combat Employment)、人道支援・災害救援(HADR)の訓練に焦点が当てられた。 (写真:2月に実施されたコープ・ノース23で、グアム島周辺の太平洋上空を飛行する航空自衛隊と米国空軍の航空機) 3月には、戦闘戦略に焦点を当てた演習「アジャイル・リーパー23-1(Agile Reaper 23-1)」が実施された。同演習には、ミサイル攻撃時などに衝突を回避することを目的として、戦略として小規模な西太平洋の民間空港に戦闘機などを迅速に移動させる訓練が含まれている。

グアムにはグアム海軍基地とアンダーセン空軍基地の2つの米軍基地が存在する。 2023年1月、米国海兵隊がグアムに16.2平方キロの新基地「キャンプ・ブラズ(Camp Blaz)」を正式に開設した。日米政府は、沖縄から海兵隊員を移転させ、そのうち5000人をグアムに移すことで合意していた。 エコノミスト紙が報じたところでは、グアムの防空強化を目的として、米国は2024会計年度に約2,000億円相当(15億米ドル)を計上することを目指している。この金額の大半はミサイル防衛に費やされると見られている。

グアムのパシフィック・アイランド・タイムズ(Pacific Island Times)紙が伝えたところでは、北マリアナ諸島のグアムから北東200キロ以内の地点に位置する米国自治連邦区(コモンウェルス)テニアン島では、2025年の完成予定でテニアン迂回飛行場と航空機駐機場(エプロン)建設が進められている。 米国国防総省が217億円相当(1億6,200万米ドル)を投じた同飛行場は、グアムのアンダーセン空軍基地が攻撃を受けた場合または他の理由で運用不能になった場合を踏まえて、代替の運用場所として機能することが見込まれている。

リーン博士は、「軍隊がわずか数か所に集中していると、中国人民解放軍により無力化される危険性がある。グアム島とテニアン島の防衛力増強計画は、軍隊を分散させることでその回復力を向上させるという広範な戦略に良好に沿った動きである」と説明している。

また、テニアン島には米軍の実弾射撃訓練場も建設される予定である。

ダニエル・クリテンブリンク(Daniel Kritenbrink)米国務次官補(東アジア・太平洋担当)は、「米国のインド太平洋戦略の核心は、地域内外の同盟・提携国と友好国とのつながりを構築し、相互に補強し合う強力な提携体制を確立して推進することにより、集合的な能力を構築し、諸国共通の課題に一丸となって革新的に取り組むことにある」と述べている。

画像提供:チャールズ・T・ファルツ(CHARLES T. FULTZ)/米国空軍

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Back to top button