オセアニア

中国共産党の軍備増強阻止に向けて大規模な防衛戦略改革を計画するオーストラリア

AP通信

2023年4月下旬、オーストラリアは政府委託による報告書の概要を発表した。それによると、中国共産党の軍事力増強を踏まえ、オーストラリアは国防費の増加、軍需品の国内生産、長距離ミサイルの開発を推進する必要がある。

2023年3月には米英豪がAUKUSと呼ばれる3か国軍事同盟に基づき原子力潜水艦8隻をオーストラリアに導入する計画で合意したと発表したばかりだが、防衛戦略見直しを提言したこの報告書には、AUKUSを支持する内容が含まれている。

アンソニー・アルバニージー(Anthony Albanese)豪首相の発表によると、防衛に関して現在の戦略的環境における自国の防衛能力、態勢、準備体制の整備状況を評価するため、豪政府は防衛戦略見直しを諮問委員会に委託していた。 (写真:2022年の環太平洋合同演習(RIMPAC)で、編隊航行するオーストラリア海軍の艦船)

オーストラリアにとって今回の包括的な見直しは第二次世界大戦以来最も重要な仕事であると述べたアルバニージー首相は、 「国家安保上の課題が常に進化している今日の世界では、従来的な仮定に頼るべきではないことが報告書には示されている」と語っている。

防衛戦略見直しに関する機密報告書の中から今回公開された概要には、現在の国内総生産の2%以上を国防費に割り当てること、軍需品の国内生産を推進すること、オーストラリア国防軍(ADF)の長距離攻撃能力を向上させることを豪政府に推奨する内容が含まれている。

他の推奨事項としては、豪北部の基地における部隊の運用能力の向上および主要インド太平洋諸国との防衛提携体制の深化などが挙げられる。

報告書には、第二次世界大戦終結以来、中国共産党の軍事力増強は「どの国よりも劇的かつ最も野心的である」こと、 また「中国の戦略的意図は不明で、インド太平洋地域における安心感が失われるような方向性で軍事力増強が進んでいる」ことが記されている。

アンガス・ヒューストン(Angus Houston)元オーストラリア国防軍司令官とスティーブン・スミス(Stephen Smith)豪国防相が著述した報告書によると、今回防衛戦略見直しの対象となった戦略的状況は過去の状況とは「根本的に異なる」ものだ。

新たな優先事項を実現するための財源を確保するため、豪政府は直ちに6,968億円相当(52億米ドル)の国防費使用の延期または削減を計画している。

パット・コンロイ(Pat Conroy)豪国防産業相の発表によると、歩兵戦闘車(IFV)発注の削減と第二連隊の自走榴弾砲の発注取り消しにより確保できる財源で、米国の高機動ロケット砲システム(HIMARS)の購入時期を速める構えである。高機動ロケット砲システムの有効性は、ロシアに対するウクライナ防衛で実証されている。

コンロイ国防産業相の説明では、購入が実現すれば、最大ミサイル射程は現有兵器の40キロから300キロ超に拡大され、精密攻撃ミサイル(PrSM)を搭載すれば射程は500キロ超になる。

同国防産業相は、「将来的にオーストラリア陸軍が直面し得る事態がどのようなものであろうと、これにより、その事態に対応するために必要な火力と機動性が得られる」と述べている。

過去50年にわたり、オーストラリアの防衛政策は、小中規模の近隣諸国から発生し得る低レベルの脅威の抑止と対応が主軸となっていた。 今回の見直しに関する報告書には、「このアプローチはもはや目的に適さない」と記されている。

同報告書によると、オーストラリアの空軍、陸軍、海軍は「適時かつ適切に能力・機能を発揮する」ことに焦点を当て、調達において「完璧な解決策やプロセスを追求すること」を放棄する必要がある。

画像提供:オーストラリア国防軍/AP通信

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