オセアニア自由で開かれたインド太平洋/FOIP

日本、連携強化で太平洋島嶼国のレジリエンスを強化

マーク・ジェイコブ・プロッサー(Marc Jacob Prosser)

日本は、太平洋島嶼国のレジリエンスを高めるための援助と開発を強化するため、多国間協力に重点を置いている。

太平洋島嶼国事業チームを率いる塩澤英之氏は、「日本とパートナーにとって2023年の最大のテーマの一つは、二国間協定やプロジェクトから多国間アプローチへの移行だ」とFORUMに語っている。

日本の林芳正外務大臣も多国間協力の重要性を強調し、オーストラリア、インド、日本、米国からなる四極安全保障対話(クアッド)のメンバーがインフラ開発で協力を進めていると、Nippon.comのインタビューで述べている。

フランス国際関係研究所の2023年3月の報告書「日本と太平洋諸島諸国:長期的な戦略的関心、最近の戦略的関与(Japan and the Pacific Islands Countries: Longstanding Strategic Interests, Recent Strategic Engagement)」は、「太平洋島嶼国を日本の自由で開かれたインド太平洋(FOIP)ビジョンに組み込むことは、ルールに基づいた国際秩序を維持し、中国の影響力の増大を釣り合わせるための日本政府の努力における太平洋島嶼国の立場を固める」とした上で、 「アジアの安全保障問題は、PALM サミット (太平洋・島サミット) の議題に取り上げられ始めている。 さらに、日本は、オセアニアにおける自由で開かれたインド太平洋の運用の一環として、最も近い同盟国やパートナーである米国やオーストラリアとの協力を強化してきた」と述べている。

日本政府は開発援助の主要な提供者であり、太平洋島嶼国の外交・安全保障上のパートナーとなっていると報告書は付け加え、日本はこの地域で海軍外交と防衛対話を強化し、さらに海洋能力開発、人道支援、災害救援に参加していることを指摘している。 (写真: 2023年2月、東京で行われた太平洋諸島フォーラムのヘンリー・プナ (Henry Puna) 事務局長を案内する日本の林芳正外務大臣(右))

開発途上国の経済・社会成長のための日本の開発援助の大部分を提供する国際協力機構(JICA)の太平洋・東南アジア事務所局長の堧水尾真也氏は、より緊密な連携と協力によって日本、パートナー、太平洋島嶼国に対してより良い結果をもたらすことができる付け加えた。 同機関の太平洋島嶼国予算は近年安定していると、担当者らはFORUMに語った。 太平洋島嶼国を含む2019年のオセアニア予算は、技術協力約52億円(4,000万米ドル)、融資約54億円(4,100万米ドル)を含む助成金総額約183億円(1億3,900万米ドル)だった。

協力と多国間努力は、JICAにとって地域全体での優先事項だ。

サモアの太平洋気候変動センター(PCCC)は、多国間協力の成功例だ。 気候変動に関する情報、研究、能力開発、技術革新のための地域センターである同センターは、日本政府とサモア政府のパートナーシップで、JICAの助成金により設立された。

パートナー国との協力関係の強化は、この地域の気候変動対応能力の向上に結び付く。 例えば、2019年の設立以来、ニュージーランドは太平洋気候変動センターの運営資金を援助してきた。 オーストラリアは最近、太平洋気候変動センターと提携し、異常気象に対する長期的な解決策を支援するために約26億円(約2,000万米ドル)を拠出することを約束した。

2023年には、JICAが支援する技術協力プロジェクトが、太平洋地域の革新的な気候ソリューションを推進し、官民パートナーシップを強化することを目指して開始される予定だ。

アナリストは、中国が太平洋地域で存在感を増し、影響力を行使しようとしていることが、協力関係強化の原動力になっていると指摘している。 中国が一見手厚く融資しているプロジェクトは、持続不可能な金利の支払いに直面しており、これを債務外交の一形態と表現するアナリストもいる。

立命館大学アジア太平洋学部学部長の佐藤洋一郎教授はFORUMの取材に対し、「中国がプロジェクトの条件や範囲に口を出すことはよくあることだ。 中国は、援助や開発プロジェクトを実施する際、資材や人員も輸入している」とした上で、 「これに対し、日本のアプローチは、援助先の国々と協力し、申請プロセスを経ることで、援助や開発プロジェクトがその国のニーズに合致する可能性を高めている」と述べた。

多国間援助の拡大は、参加者が効率性を最適化するために新たな方法で協力し合う中で課題をもたらす可能性があると堧水尾氏は指摘する。 参加者それぞれの専門分野を理解することが重要だ。 調整、プロジェクトのインフラ、財務ツールや監視など、参加者の熟練分野はさまざまだ。 「我々パートナーは、文化や組織の違いを超えて、このような分野の調整と明確なコミュニケーションにさらに磨きをかけ、最適な結果を出せるように努力している」と、堧水尾氏は語った。

マーク・ジェイコブ・プロッサー(Marc Jacob Prosser )は、東京発信のFORUM寄稿者。

画像提供: AP通信

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