マーク・ジェイコブ・プロッサ―(Marc Jacob Prosser)
オーストラリア、日本、ニュージーランド、米国はパプアニューギニア(PNG)と協力し、2030年までに太平洋島嶼国パプアニューギニアの人口の70%に信頼性が高くグリッド接続された電力を供給することを目指している。
プロジェクトの多くは、官民の協力を促すために2018年に設立された米国の約223兆円(17億ドル)規模の「パプアニューギニア電化パートナーシップ(PEP)」と連携している。 このパートナーシップの目的は、「透明性があり、差別的でなく、環境に配慮し、…パプアニューギニアの人々の真のニーズに応え、持続不可能な債務負担を回避すること」だと、当時のスコット・モリソン(Scott Morrison)オーストラリア首相は述べている。
「パプアニューギニア電化パートナーシップ」はまた、中国がパプアニューギニアで活発化させている活動に対抗するものだ。
シンクタンク笹川平和財団の太平洋島嶼国プログラムチームリーダーである塩澤英之氏は、「日本は太平洋地域の国々に対して、民主主義の支援、市場の構築、資源へのアクセスなどの戦略的優先事項に基づいて援助を提供し協力しているが、これらはすべて、この地域における中国の活発な活動の影響を受けている」と、FORUMに語っている。
パプアニューギニアの電力アクセスは向上しているが、世界銀行のデータによると、2020年時点で人口の60 %以上がグリッドに接続されているものの、送電網は頻繁に停止している。 世界銀行によると、接続性はパプアニューギニアのビジネスにとって最大の制約の一つであり、信頼できる電気へのアクセスを持つ人は人口のわずか13%に過ぎない。 パプアニューギニアは、持続可能で変革的な変化を通じて、次のようにこうした状況を改善することを目指している。
- 14万5,000世帯以上を送電網に接続
- 45メガワットの新エネルギーと回収エネルギーの生成
- 800キロメートルの送電線と配電線の新規敷設または改良
- 220,000世帯の非電化住宅への電力供給
日本はパプアニューギニアの中核的支援国であり、同国への援助供与国トップ3に常に名を連ねている。 日本の電化支援には、工業の中心地であるラエの電力への安定的アクセスを向上させる「ラム送電システム強化プロジェクト」が含まれる。
また、日本が主導するアジア開発銀行は、最近、送電線と変電所の設置・改良とミニグリッドをパプアニューギニア全域に建設する約40兆円(3億500万ドル)の電力セクター開発プロジェクトへの資金援助を発表している。 (写真:パプアニューギニア・西ニューブリテン州キンベで行われる送電線敷設作業)
中国はまた、島嶼国パプアニューギニアの発電量を3分の1増加させる可能性のある約1,040億円(8億ドル)の「ラム 2」水力発電所の建設を含む、同国のエネルギー部門にも大きく関与しているが、中国が支援する多くのプロジェクトは持続不可能な債務につながると批判者は指摘している。 オーストラリア戦略政策研究所によると、パプアニューギニアの予算不足の原因の一つは融資であり、オーストラリアはすでに中国への負債と利払いを事実上補うための融資を行っているとのことだ。
中国企業はまた、パプアニューギニア国内での発電用に低価格のソーラーパネルの販売を推進している。
日本を含むインド太平洋地域のパートナーは、PEPプロジェクトでグリッド接続に焦点を当てているが、マイクログリッドや太陽光発電プロジェクトにも資金を提供している。
国際基督教大学の政治・国際学部のスティーブン・ナギー(Stephen Nagy)上級准教授はFORUMに対し、「日本のパプアニューギニアプロジェクトは、太平洋地域における日本の優先事項と、中国の影響力の増大を物語っている」と指摘する。
同氏はさらに、「日本は、さまざまな文脈で活用できるインフラ整備を通じて、提携国との強い絆を築こうと努力している」とした上で、 「それに比べ、中国のアプローチは、融資や大規模な開発プロジェクトを通じての大規模な資金注入を優先する傾向があり、非対称な力関係につながる可能性がある」と述べている。
マーク・ジェイコブ・プロッサー(Marc Jacob Prosser )は、東京発信のFORUM寄稿者。
画像提供:アジア開発銀行