インド太平洋ヘッドライン

関係筋、南シナ海行動規範の策定を再度推進

マンディープ・シン(Mandeep Singh)

南シナ海行動規範の迅速な策定に向けて関係筋からの働きかけが続いてる。これは、紛争海域での事件を抑止して管理し、地域全体の緊張を緩和するための多国間協定だ。

2022年9月に開催されたシンガポールでの会議で、フィリピンのフェルディナンド・マルコス・ジュニア(Ferdinand Marcos, Jr.)大統領とシンガポールのリー・シェンロン(Lee Hsien Loon)首相は、海を通過するすべての当事者の権利と利益を保護するための、効果的で実効性のある行動規範策定を求めた。 その後、マルコス大統領の姉であるフィリピンのマリア・イメルダ・マルコス(Maria Imelda Marcos)上院議員は、南シナ海で領有権主張が重なる国に限定して交渉を行うことを提案した。

この行動規範は、2002年に中華人民共和国(中国)と東南アジア諸国連合( ASEAN )加盟国が署名した「南シナ海における関係国の行動宣言」を土台として策定を目指すものだ。 この合意に署名した国々は、航行と飛行の自由、紛争の平和的解決、作戦行動の抑制を確認し、2019年に規範草案がレビューされ、2022年末までに第二読会を開催することが約束されている。

さらに、アナリストの見解によると、中国の継続的な引き延ばし作戦は、南シナ海での紛争リスクを低減するための規範が実施される前に、係争中の水路を掌握するための包括的戦略の一部だという。

ASEANがこのような規範に取り組み始めたのは1990年代のことだ。 以来、中国は1,200ヘクタール以上の土地を埋め立てている。これは他のすべての影響を受ける国・領土が埋め立てた土地を合計した面積の約19倍に相当する。 中国は数十年にわたって行動規範の採択を加速させると言い続けながら、現在も採択を阻止し続けているため、この行動規範は最終決定に至っていない。

ASEAN加盟国であるブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、台湾、ベトナムは、それぞれの排他的経済水域内で中国人民解放軍の艦艇によるハラスメントに直面している。 中国政府は「九段線」を宣言して海域の権利を主張していたが、2016年にハーグで開かれた国際仲裁裁判所はその大半を無効と判断した。

マニラに拠点を置くシンクタンク、ファウンデーション・フォー・ザ・ナショナル・インタレストのフリオ・アマドールIII世(Julio Amador III)会長はFORUMに対し、特に地域外の国々も関与するのであれば、行動規範の策定はそのようなハラスメントの防止に寄与するだろうと述べている。

アマドール氏は、「米国と日本はこの交渉に直接参加していないが、海洋コモンズの主要な利害関係者であり、 両国とも引き続き交渉に関わり、大国による小国いじめを防ぐためにプロセス上重要な役割を果たす」と語る。

2022年5月にワシントンDCで開催された首脳会議で、米国とASEANの首脳は、行動規範を確定して実施する必要性を強調した。

そうした各国の決意にもかかわらず、アナリストらはハードルは高いと警告している。 法的拘束力の有無、地域外の国の役割、地域外の軍艦や軍用機をどの程度対象とするかなど、行動規範の対象範囲については依然として論議が続いている。

2022年10月初旬、シンガポールの無任所大使オン・ケン・ヨン(Ong Keng Yong)氏はインドのアジアン・ニュース・インターナショナルに「結論が必要。結論がなければ、海運業界やこの地域で事業を行う国際企業は安心できないだろう」と語った。

マンディープ・シンは、インド・ニューデリー発信のFORUM寄稿者。

 

画像提供:ISTOCK

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