パートナーシップ主要テーマ東南アジア特集

特殊作戦の進展

新戦闘軍の指揮とパートナーシップの重要性に関する洞察

フランシスコ・アリエル・A・フェリシダリオ3世(Francisco Ariel A Felicidario III)少将は、フィリピン国軍特殊作戦軍司令部(AFP SOCOM:Armed Forces of the Philippines Special Operations Command)の司令官。37回目の「バリカタン(Balikatan)」演習の最中である2022年4月1日にフォーラムとのインタビューに応じた(「バリカタン」は、フィリピンとアメリカ合衆国の合同軍事演習)。4月1日はAFP SOCOMの創設4周年記念日にあたる。この日の祝賀会は、特殊作戦軍(SOCOM)が統合軍になったというフィリピン国軍からの発表で締めくくられた。2018年にSOCOMは、フィリピン国軍海兵隊特殊作戦群、海軍特殊作戦軍、空軍特殊作戦部隊、陸軍特殊作戦部隊の作戦機能を付与されている。

フェリシダリオ少将は、フィリピン国軍(AFP)の陸軍およびAFP司令部の要職を歴任した後、2022年1月にSOCOM司令官に就任。訓練教義コマンド参謀長、作戦担当参謀補佐官室および作戦担当参謀次長室の副司令官などを歴任した。

陸軍における少将の経歴はフィリピン陸軍士官学校から始まる。1989年に同校を卒業後、10年以上スカウトレンジャー(Scout Ranger)に所属し、2010~12年はスカウトレンジャー大隊司令官。2018年にはミンダナオ島で2個旅団を指揮し、2019年には師団長代理補佐官に任命された。その後、AFP平和開発庁(Peace and Development Office)の長官としてマニラ首都圏(NCR:National Capital Region)を管掌した。これまでフェリシダリオ少将に授与された勲章ならびに栄誉には、殊勲星章(2回)、ブロンズ十字勲章、功績勲章が含まれる。

これまで、少将の経歴は全体を通じて特殊作戦に軸が置かれてきましたが、その理由は何でしょうか?

それは、特殊作戦が刺激に満ちていて面白いからです。自分が任官してまもない尉官だった頃のレンジャーは特にそうでした。実際の軍務は別にして、レンジャーの各一個中隊は、対立が激化した場所があれば、いつでもそこへ展開します。例えば、スールー(Sulu)州で紛争が激化するたびに、8か月またはそれ以上の期間にわたって、そちらに展開することになります。紛争が他の場所へ移ると、ヴェサバス(Vesavas)であれ他の地方であれ、自分たちもそこへ移動するのです。少尉や中尉として、そして大尉や少佐になっても刺激的な日々でした。

その後、対テロ作戦に従事し、フィリピン陸軍で特殊作戦部隊の育成に携わりました。

特殊作戦における戦闘能力の構築方法を開発する途上で、自分はその最前列の席にいたわけです。フィリピン国軍(AFP)にとって、それがどれだけ重要であったかを考えると、特殊作戦部隊(SOF)の能力開発に携われたことにとても感謝しています。

2022年4月1日、フィリピンのフォート・マグセイセイ開催されたフィリピン国軍特殊作戦部隊設立4周年を記念する祝典に参加するフィリピン軍と米軍。フィリピン軍

AFPが共同統合機能の構築を打ち出していますが、これは少将の部隊にどのような影響を与えるでしょうか?

実際のところ、これは我々の進化と将来の在り方を計画する上で大きな変化になります。実は、特殊作戦軍が統合軍に改称されることに自分は反対していました。AFPの特殊部隊が立ち上がっていた頃、どういうわけか私たちはAFP全体の任務支援部隊のカテゴリーに入っていたからです。任務支援部隊と統合軍は明らかに異なるため、今後部隊が発展するなかで、その進歩を妨げるのではないかと、自分の意見を表明しました。予測し得る戦闘能力の開発などのすべての計画を即座に役立てることができなくなると考えたからです。しかし、今では、統合軍、特殊作戦軍と改称され再認識されたことに満足しています。

この方向で発展することで、特殊作戦の新たなトレンドに確実に焦点が当てられるようになります。たとえば「バリカタン」演習では、対テロ以外の分野で特殊作戦の役割について米国側当事者と話し合っています。

海洋安全保障への差し迫った脅威について話し合い、それに対してどのように特殊作戦部隊(SOF)が関与できるか、ウクライナをモデルにして、どうすればSOFが機動的に国の領土全体で戦うことができるかについて意見を交わしています。現時点で、SOCOMが全力で打ち込めることがあります。それは、まずは概念としてでも、5年後または10年後、自国に対する将来の脅威や差し迫った脅威に国内外で立ち向かうために、AFPにとって特殊作戦がどうあるべきかを検討することです。

「バリカタン2022」は合同訓練に重点を置いています。同盟国やパートナーと協力するという希望を実現する上で、二国間訓練が持つ価値について話していただけますか?

非常に長きにわたり、この二国間訓練は間違いなく大きな助けとなってきました。フィリピン陸軍の訓練部門にいたとき、私は同陸軍を代表して「バリカタン」を担当していました。また、二国間で行われたほとんどの個別訓練と、国際軍事教育訓練課程(IMET:international military education and training)も担当していました。私は、IMET関連のコースを受講する将校のために必要な手続きを取り、彼らを米国の学校に送り込んでいました。それと同時に二国間訓練も担当していたのです。私たちはG8フィリピン陸軍の一部として、深く関与していました。

スキルやコンピテンシーの育成に関しては、自分たちで実行できています。ただ、これらの特定の分野で自分たちより高度な経験を持つ他の国々との訓練を行うことで、自分たちの能力との比較を進めることが可能となります。

こうした能力の比較は双方にとって有益だと言われます。というのも、自分たちはすでに何十年も実戦を経験してきたからです。つまり、自国で反政府活動やテロに対して常に戦っているAFP兵士が持つ経験と、米国のような二国間パートナーがもたらすテクノロジーや新しい能力およびスキルとが融合されるのです。

このコンピテンシー、スキル、そして実戦経験の融合が、実際に能力開発を推し進めて、我が国の兵士にスキルとコンピテンシーの向上をもたらしたのです。パートナーである米国の当事者にとっても二国間訓練が有益だと考えられるよう、何らかの形で自分たちの経験が役に立つことを願っています。

テルナテにあるフィリピン海兵隊訓練センターにて、誘拐被害者救出の模擬訓練でビーチを急襲するフィリピン海軍「SEALs」。AP通信

この地域におけるSOF の機能を強化するうえで、AFP SOCOM が米国や他の国々の特殊作戦担当者と協力することの重要性ついて、お話をお聞かせください。

米国が特殊作戦に関して豊富な経験を持っていることは、自分たちにとって貴重です。私たちの経験は、自国の反乱鎮圧や内紛に対する特殊作戦に限られていますが、米国はこれまで多くの場所で活動してきて、さまざまなSOFの経験を持っているからです。米国や他の国々では、すでにSOFの基本原則が確立しています。言うまでもなく、そこから学ぶことはフィリピンの特殊作戦部隊にとって有益です。それだけでも二国間の取り組み、つまり米国に教えてもらうことは大きな収穫です。

もちろん、戦闘のテクノロジーにおけるさまざまなイノベーションを、どのように特殊作戦へ統合するかという知識も有用です。そして、米国側が持ち込んだ機材と、米軍兵士がその機材を特殊作戦で使用する様子を観察することで、自分たちのSOF訓練プログラムにも焦点を絞って臨むことが可能になります。米軍と一緒に機材を使用する経験が役に立つのです。対テロ特殊作戦演習では、オーストラリア特殊空挺連隊(SAS:Special Air Service Regiment)とも合同訓練を実施しています。

共同作戦構想の詳細について教えてください。また、共同作戦構想を導入するうえで、演習、戦闘、交換
プログラムがどのように役立つかを教えてください。

現在、フィリピン国軍は作戦の構想を練るうえで初期段階にあります。私たちがすでに共同作戦部隊として実際に地域の各部隊を立ち上げたことがその理由です。作戦は通常、陸上兵力の運用がほとんどであり、空軍は支援任務を受け持つだけで、海軍も支援任務担当です。実際のところ各軍の役割は同等ではありません。

しかし、それも変わってきています。空軍と海軍が新たなプラットフォームを獲得しているからです。二国間訓練が役に立つ理由は、そこにもあります。新しいプラットフォームを入手するにあたり、そのプラットフォームを使うためのコンピテンシーが必要ですが、幸いなことに米軍がそれを授けてくれます。

この近代化プログラムは現在進行中で、実を結びつつあります。つまり、新しいプラットフォームの導入によって成果が現れているのです。現在このプログラムでは、共同作戦構想の開発全体に予算を割り当てています。特に、すでに新しいプラットフォームを使用している現在、そのプラットフォームを念頭に置いて、共同作戦の基本原則の作成に最大限活かすことができます。やがて新しいプラットフォームを統合して、全面的に進化したAFP共同作戦構想の姿を見ることができるでしょう。

2017年10月、フィリピン海軍の水陸両用艦BRPターラク(Tarlac)から下船後にVサインをするフィリピン海軍特殊作戦グループ所属の兵士たち。それまでフィリピン南部のマラウィでイスラム国と連携したムスリム民兵と戦ってきた。AP通信

国内の対テロ要件と、外的脅威への対応能力とのバランスをとることの重要性について話してください。

当時のロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)大統領は、任期中の反乱終息を意図して本格的な軍事行動を宣言しました。そのため、現在の重点対策は、ほとんどが反テロと反乱鎮圧に絞られていて、どの部隊も忙しい状態です。

しかし、各軍には海上戦など、外的脅威への対処に継続的に的を絞っている部門があり、すでに相当の兵力が当てられています。概念レベルでは、主たる軍部門の内部に設置されたシンクタンクと、一般幕僚大学(GSU:General Staff University)がすでに我が軍の立ち位置を予見する試みを始め、反乱の鎮圧が終わり次第、全兵力を以て外からの脅威に対処する方法が探られています。

一方、バランスに関しては、反乱鎮圧と反テロに重点が置かれていますが、専門の人員が対外関係と外的脅威について調べており、少なくとも概念レベルでは対処方法が研究されています。

軍隊の能力育成に関しては、外からの攻撃に対する防衛に使用する装備を実際に調達しているところで、それらが手に入り次第、ただちに国内の脅威にも使用できるでしょう。つまり、現在取り組んでいることと、いかにして軍組織にとって今必要なものを調達するかのバランスなのです。

AFP SOCOMにとって主要な課題は何でしょうか?

今はまだ初期段階ですが、SOCOMは将来起こり得るすべての特殊作戦部隊(SOF)の課題に全面的に対処できるような能力を持たなければなりません。その点で、主たる軍部門に所属するSOF関連の全部隊は、反テロと反乱鎮圧の領域では全面的に対処する能力をすでに有しています。全部隊には十分な能力があります。

4年目を迎えたばかりということもあり、能力育成の必要があるのはこの部隊(SOCOM)です。ただし、兵士の能力、将校の能力に関してはすでに用意ができています。私たちは課題に対処できますので、問題はありません。

現在は反テロと反乱鎮圧に重点が置かれ過ぎているとしても、少なくとも概念レベルでは、SOFの運用が関係する分野においては、外的脅威に対処する方法について考えるための議論を開始し、自分たちの能力を高めようとしています。西フィリピン海(南シナ海とも呼ばれる)は、概念レベルで進めている特殊作戦における重点地域の1つです。セブ島とタウィタウィにある海の西側境界ですが、すべての国境地域も対象です。それにもちろん、非正規戦に対してSOFが必要になります。国民の戦闘能力を維持するためのSOFの活用方法としてウクライナ危機を例に挙げると、これは実際にはフィリピンの兵士が得意とする分野です。たとえば、第二次世界大戦中にゲリラ戦がありました。必要があれば、私たちはその能力を取り戻すことができるはずです。今ウクライナが自由のために戦う必要があるように、以前フィリピン人はそうした戦いを経験しており、私たちはそれらの能力を取り戻す必要があります。

現在、私が注目していることは、5年、10年、20年の間に生じる課題は何なのかです。SOFが抱える課題、そして国内の反乱が終息するという状況を考慮します。私のスタッフは、SOFに求められていることに的を絞って、将来我が国が対処すべき脅威に注意を向けています。そのために米国や他の国々と協力し合って、サイバーテロ、特殊作戦でのUAV(無人飛行機)の利用を含む複数の領域で、計画策定と各部隊の訓練を進めています。すでに砲兵隊と話を進めて、彼らが私たちと統合できるよう一緒に訓練を始めました。また、機甲師団とも話をしており、機甲師団とSOFを統合する必要性が出たときに備えて、問題を避けるために、装甲車両の一部をSOFとの作戦で利用できるようにすべきだと伝えました。空挺連隊とも話をしました。私はすでに、非SOF部隊のほとんどをSOFと統合し、合同で訓練して部隊間の相互運用性を高める必要があるという考えを述べています。

何かほかに、フォーラムにお話ししたいことはありますか?

最後に、フィリピンに対する米国政府と米軍の継続的な支援に感謝いたします。米比相互防衛条約(Mutual Defense Treaty)の扱いについて、両国はより堅実な話し合いに移っています。非常時に備えて、私たちは特殊作戦の面で準備を進めているところです。両国は海洋SOF、外的脅威、特殊作戦などについて話し合いを始めています。

米国がずっとフィリピンの友人でいてくれることと、ここに留まってくれていることで、私たちは本当に助かっています。o

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