ガスティ・ダ・コスタ（Gusty Da Costa）
海賊行為、テロリズム、国際的な犯罪、IUU漁業（違法・無報告・無規制漁業）など、共通の安全保障上の脅威に対抗することが、インドネシアとフィリピンとの間で最近結ばれた安全保障協定を更新する合意の基礎となっている、とアナリストは述べている。 インド太平洋の両国間の防衛協力の緊密化は、フィリピンの重要なインフラを強化するための防衛産業の協力増加につながっている。
2022年9月初旬、インドネシア政府とフィリピン政府は、1997年に締結された防衛安全保障協力協定（DSCA）と、1975年に締結された改訂国境通過協定と国境パトロール協定を更新・アップグレードすることで合意した。
フィリピンのフェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領のインドネシア訪問中、インドネシアのプラボウォ・スビアント（Prabowo Subianto）国防相とフィリピン国防総省担当官のホセ・ファウスティーノ・ジュニア（Jose Faustino Jr.）氏が協定に署名した。 国営のフィリピン通信社（PNA）によると、防衛安全保障協力協定の更新は、両国の長期的防衛協力を強化する枠組みとなる。 （写真： 2022年9月、インドネシアのボゴールで儀仗隊の前を歩くフィリピンのフェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領とインドネシアのジョコ・ウィドド大統領）
NGO団体のデストラクティブ・フィッシング・ウォッチ・インドネシアの国内コーディネーターを務めるモハンマド・アブディ・スフーファン（Mohammad Abdi Suhufan）氏はFORUMに対して、「両国には、国境に隣接する海域の海上および海運の安全性を向上させるための戦略的必要性がある。 この結果、両国は注意を必要とする国境水域における実際の脅威を特定している」と述べた。
同氏は、海賊行為やIUU漁業に加えて、暴力的過激派による漁師の誘拐や違法取引などの脅威が存在するとしている。 フィリピン通信社によると、今回の協定更新により、共同訓練および合同訓練演習、国境警備、相互訪問、情報共有および相互運用性を含む領域での防衛協力の拡大が期待されている。
「インドネシア側から見れば、フィリピンは、インドネシアがフィリピンの防衛ニーズを満たし、貿易パートナーシップを通じてインドネシアの防衛産業を発展させることを含め、地域におけるインドネシアの政治的目標を達成するための戦略的パートナーであることが求められる」と、ジャカルタの安全保障戦略研究所（Institute for Security and Strategic Studies）の軍事専門家であるカイルル・ファハミー（Khairul Fahmi）氏はFORUMに語った。
インドネシアの造船会社PT PALがフィリピン海軍のために長さ123メートルの輸送揚陸艦（LPD）を2隻建造する予定であることを、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は9月にマルコス比大統領との会談後に述べている。 PALは2016年と2017年に就役したフィリピン海軍の現用LPD2隻を建造した。 ウィドド大統領は、フィリピン空軍がインドネシアの航空宇宙企業ディルガンタラ・インドネシア（Dirgantara Indonesia）から2機のNC 212 i輸送機を早期に調達することを期待していると述べた。
一方、マルコス大統領はインドネシアがフィリピンのインフラ整備を支援してくれたことに感謝した上で、さらなる二国間協力を望むと表明した。
また、ウィドド大統領はインドネシア、マレーシア、フィリピンの三国間協力体制協定（TCA）の更新を発表した。 2016年に最初に締結された同協定をきっかけに、三か国の軍によるスールー海とセレベス海での共同海上パトロールが始まった。
ギリシャに拠点を置く海運・海事ニュースサイト「Safety4Sea」によると、パトロールが開始されてから、これらの海域での身代金目的の誘拐は2016年の10件の襲撃と6件の襲撃未遂から2021年にはゼロ件にまで大幅に減少した。
ジャカルタ在住の国防アナリスト、チェスター・カバルザ（Chester Cabalza）博士によると、インドネシア政府とフィリピン政府は1949年に外交関係を樹立して以来、20以上の防衛・安全保障協定を結んでいる。
「インド太平洋地域の安定は共有責任だ」とスフーファン氏は指摘した上で、 「両国は内外の脅威について共通の見解を持っていることからも、両国間の防衛分野での協力を強固なものにする取り組みがインド太平洋地域の強化につながることが期待される」と述べた。
ガスティ・ダ・コスタは、インドネシア発信のFORUM寄稿者。
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