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米国の競争関係の高まりを受け、中国がマイクロチップ業界の腐敗取締り

フェリックス・キム(Felix Kim)

アナリストによると、中国のマイクロチップ産業で汚職が横行している中、競争を促進し、国家安全保障を強化するための米国の新法が、チップ企業幹部による資金の不正流用に対する中国政府の取締りにつながっている可能性があると見られる。

日経アジアが2022年8月に報じたところによると、中国当局は最近、半導体企業幹部の捜査を開始した。中国のあるメディアは、中国最大の国家主導チップファンドである中国国家IC産業投資基金(China Integrated Circuit Industry Investment Fund)を「腐敗の温床」と呼んでいる。

中国国営メディアによると、国内の先進的なチップ製造を促進するために中国政府が投じた資金の一部(500億米ドル相当)が、反逆的な業界有力者によって流用されているという。 当局は、これまで複数の幹部を拘束している。

アナリストによると、最近可決された「CHIPS法(CHIPS and Science Act)」により、中国のマイクロチップ産業の苦悩はますます深刻化する可能性があるという。この法律では、米国のマイクロチップ企業への投資を奨励するもので、企業が米国の補助金を受ける場合、中国やその他の国家安全保障上の懸念のある国々にチップ製造施設を建設することを10年間禁じている。

ランド研究所(Rand Corp.)のティモシー・ヒース(Timothy Heath )上級国際防衛研究員はFORUMに対して、「高度なチップの開発ができなければ、中国は外国のチップサプライヤーに依存することになる。そして、その多くは韓国や台湾など、中国と明確な友好関係がない、あるいは敵対的な関係にある国にある」と述べた。

また、高度なマイクロチップを入手できなければ、中国共産党軍による人工知能ベースの無人システム、量子コンピューティング、戦闘機などのアセットの開発に遅れが生じる可能性がある、と同氏は付け加えた。

中国のマイクロチップ産業は世界市場では依然として「比較的劣っている」ものの、「中国が国家安全保障機能を満たすマイクロチップを製造する能力を過小評価することは重大な誤解だ。ただし、そのコストはかなり高額な可能性がある」と、台湾の中華戦略学会(SAS:Society for Strategic Studies)の研究員であるチン・チャン(Ching Chang)博士はFORUMに語った。

チャン氏によると、中国政府は官僚機構内にある幹部や役人を厳格な方策でけん責してきた歴史があるという。

しかし、そのような高圧的な姿勢はチップ開発のための中国の人材プールを枯渇させる可能性があるとヒース氏は述べている。

同氏はさらに「多くの海外からの専門家が中国で働くことを望むには、中国はあまりにも抑圧的で統制が過ぎている」とした上で、 「したがって、中国は主に自国の技術者と専門家に依存しなければならないが、彼らのほとんどは、中国政府が望むようなチップを構築するための最先端の欧米企業での豊富な経験を欠いている」と述べた。

ヒース氏は、中国共産党による独立系メディアの弾圧と党の高官に対する監視の緩さがこうした腐敗の原因であるとし、こうした汚職は不動産・銀行部門、ならびに地域の党指導者による公的資金の不正使用といった形でも起こっていると述べている。

ヒース氏とチャン氏は共に、CHIPS法が中国のチップ産業にどのような影響を与えるかを限定するには時期尚早であると述べた。 しかし、この法律が米国のマイクロチップ産業にとって有益であることが証明され、中国が「低迷し続ける」場合、ヒース氏は「米国がテクノロジーのリーダーシップと軍事的近代化の競争において大きな優位性を得る可能性がある」と述べた。

フェリックス・キムは、韓国ソウル発信のFORUM寄稿者。

 

画像提供:ISTOCK

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