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ソロモン諸島の選挙遅延をめぐり高まる懸念

FORUMスタッフ

ソロモン諸島の総選挙の延期は、同国政府の民主主義への取り組みに疑問を呈し、中国との関係の深まりとの関連について憶測を呼んでいる。

ソロモン諸島のマナセ・ソガバレ(Manasseh Sogavare)首相(写真中央)は、2022年9月上旬に選挙を2023年から2024年に変更することを呼びかけた。これは表面的には、2023年後半に13日間開催されるパシフィック・ゲームズ(Pacific Games)の開催に抵触しないことが理由とされている。 議会は憲法を修正して延期を認めた。

これに対し、選挙の遅延は国民から適時投票を奪うものだと批判の声が上がっている。 ロイター通信によると、野党のマシュー・ウェール(Matthew Wale)党首は2022年9月上旬に「選挙の実施とパシフィック・ゲームズの開催のどちらかを選択する必要はなかった。 首相による権力掌握以外にもっともな理由はない」と述べている。

パシフィック・ゲームズはオーストラリア、ニュージーランド、太平洋島嶼国の選手が参加して4年ごとに開催される。 中国はソロモン諸島に7つの会場とスタジアムを建設中で、パシフィック・ゲームズ審議会に提出された首相の提案を支持している。

ソガバレ首相は、当初2023年5月から8月の間に予定されていた選挙に対する、オーストラリアからの資金援助の申し出を拒否した。 「オーストラリアン・ファイナンシャル・レビュー(Australian Financial Review)」紙によると、「これは議会制民主主義に対する攻撃であり、外国政府による国内問題への直接的な干渉だ」とソガバレ首相は述べている。 米国をはじめとする多くの国が、自由で公正な選挙の実施を支持している。

選挙の延期は、2022年4月下旬にソロモン諸島と中国との間で調印された安全保障協定に続くものだ。 オーストラリア、その他の太平洋諸島諸国、米国は、中国の治安部隊をソロモン諸島に展開させて騒乱を鎮めることを可能にする大いに秘密主義の条約が、中国人民解放軍が同地に海軍基地を設置する前段階となる恐れがあることを懸念している。

選挙の遅れに対する抗議が、ソガバレ首相が中国の治安部隊を呼び寄せるきっかけになるのではないかとの懸念も上がっている。 米国平和研究所(U.S. Institute for Peace)が2022年9月上旬に発表した報告書によると、これにより不安定性が生じ、更なる選挙の延期やソガバレ首相の一層の権力強化につながる可能性がある。

ニューヨーク・タイムズ紙が伝えたところでは、ソガバレ首相と中国はいずれも同首相の任期延長で恩恵を受ける可能性があるという。 同紙が報じたところによると、ソガバレ首相はこれまでに3回首相を務めているが、任期を全うするほどの人気を維持できたことはない。

一部の観測筋は、中国が自由裁量的な金銭を議員に提供していることで、ソロモン諸島における影響力が大きくなりすぎていると主張している。 「これは汚職だ… 中国はこの政府を維持している」と汚職防止団体トランスペアレンシー・インターナショナル(Transparency International)のルース・リロクラ(Ruth Liloqula )氏はオーストラリア放送協会(ABC)に対して述べている。

オーストラリア放送協会の報道によると、中国はソロモン諸島の伐採、鉱業、電気通信に利権を持っている。現地関係者や外部の批評家の中には、一般的に中国人労働者を雇用する中国企業が、ソロモン諸島が支払うことの額を請求し、最終的には戦略的に重要なソロモン諸島における支配権を獲得するのではないかと懸念する向きもある。

ニュージーランドのマッセイ大学(Massey University)の国防・安全保障研究センター(Centre for Defence and Security Studies)の上級講師を務めるアンナ・ポールズ(Anna Powles)博士は、ソロモン諸島が海底ケーブルを含む、主要な通信ラインに沿って位置していると指摘している。 オーストラリア放送協会によると、太平洋諸島の地政学、安全保障、紛争に関する専門知識を持つ著者で研究者であるポールズ博士は、中国のこの地域への進出を注意深くフォローしてきた。 「オーストラリア国内では、ソロモン諸島におけるいかなる類の外国勢力も、オーストラリアに直接的な安全保障上の脅威をもたらすことが深く懸念されている」と同博士は述べている。

2019年9月にソガバレ首相が外交関係を自治台湾から中国へ切り替えて以来、サロモン諸島は最近の選挙の遅延をはじめさまざまな論争を呼んでいる。 「ザ・ディプロマット(The Diplomat)」誌によると、2021年11月には、平和的な抗議ののち、首都ホニアラで暴動が発生した。 デモ参加者らはソガバレ首相の退任を求めた。

その翌月、ソガバレ首相は議会の不信任票を切り抜けた。

中国政府が影響力を高める一方で、米国はソロモン諸島との関係強化を模索している。 ジョー・バイデン(Joe Biden)米政権は、ソロモン諸島に大使館を再開することを計画している。また、ウェンディ・シャーマン(Wendy Sherman)米国務次官補は、2022年9月中旬にハワイで開催される太平洋島嶼国首脳会合(Pacific Islands Conference of Leaders)でソロモン諸島のジャーマイア・マネレ(Jeremiah Manele)外相と会談した。ロイター通信が報じたところによると、会談では選挙の遅延と民主主義的価値観の重要性、そして両国の関係強化について話し合われた。

 

画像提供:GETTY IMAGES

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