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責任、提携、軍務

米国「インド太平洋戦略」における軍隊の役割:米国防長官の見解

ロイド・オースティン国防長官/米国国防総省

2021年7月下旬にフィリピン、ベトナム、シンガポールの東南アジア3ヵ国を歴訪したロイド・オースティン(Lloyd Austin)米国防長官がシンガポールで行った演説をご紹介。これはジョー・バイデン(Joe Biden)米政権が新たに発表した「インド太平洋戦略」における米国国防総省の役割を米国が初めて明確化する機会となった。

シンガポールを訪問できたことを大変喜ばしく感じています。また、シンガポールに所在する国際戦略研究所(IISS)主催の年次会議における「第40回フラートンレクチャー」で講演させていただけるのは非常に光栄です。インド太平洋地域に関する対話を充実させるため、IISS[国際戦略研究所]は多大な努力を払ってくださいました。現在、世界は困難な時期にありますが、友好諸国と協力を図ることでパンデミックを克服して以前よりも強力な世界を築けると確信しています。

本日は米国新政権の代表として講演させていただきますが、永続的な米国の取り組みを再確認するという使命も帯びています。とりわけ、提携体制の戦略的必要性についてお伝えしたいと思います。

平時か有事かを問わず40年以上にわたり軍事に従事してきた自分自身の経験から、「単独で進める者はいない。少なくとも非常な長期にわたり独りで物事に臨める者はいない」という著しく重要な教訓を得ました。米国と同盟・提携諸国はお互いが分離していた時間よりもはるかに長い時を協力して進み、はるかに強くなりました。同盟・提携諸国と協力することで米国と地域の安保を高め、発展・繁栄を実現することができるのです。

友好諸国と共に米国はこの地域で共通の措置が必要となるさまざまな課題に直面しています。パンデミックや気候変動による実存的脅威、台頭勢力の強制行為からの悪影響、北朝鮮の核脅威といった越境脅威、ビルマ のような国内弾圧、そして法治を無視し全人類に与 えられるべき基本的な権利と尊厳を損なう国家指導者による政治などに対する懸念が存在します。米国は諸国と共にこうした課題の克服に取り組んでいきます。

2021年6月、南シナ海での任務実施中、共に航行するシンガポール海軍のステルスフリゲート「イントレピッド(RSS Intrepid)」(前方)と米国海軍の誘導ミサイル巡洋艦「シャイロー(USS Shiloh)」オズワルド・フェリックス・ジュニア(OSWALD FELIX JR.)上等水兵/米国海軍

諸国に共通の安保は同盟・提携諸国の手にかかっています。今回東南アジアを訪問したのは、こうした国々と米国との絆を深めるためです。同盟と友好による 提携網は比類のない戦略的資産となります。米国が味方のありがたみを忘れることは決してありません。一丸となって努力すれば地域がパンデミックの打撃から回復でき、法治に基づく国際秩序が強固に確立された一段と明るい未来に向けて前進することができます。つまりより優れた安保、安定性、発展状況、弾力性、開放性を備えた世界が生まれるということです。

米国は長年にわたり大規模な課題や変遷が発生した 時代においては、特に提携関係が重要になるという 超党派的信念を掲げています。ここでこの信念を再確認 できることを喜ばしく感じています。すべての諸国は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの影響に喘いでおり、未だに人々は酷い犠牲を強いられています。

それでもインド太平洋諸国にはこれまでも試練を乗り越えてきたという歴史があります。今日発生している事象は、重大な危機、そして共通の目的として危機克服に向けた勇ましい努力という特徴で表現することができます。第二次世界大戦の余波から冷戦の冷えた対立構造、また1997年の金融危機時のパニックや2004年の津波被害に至るまで、何度も同様の情勢が発生しました。しかし、これまで非常に多くの危機に直面したにもかかわらず、インド太平洋諸国はこうした時期に起こりがちな内向的姿勢に陥るのではなく、強力な絆を構築することでより包括的で安全かつ繁栄した地域を築き上げてきました。

今日、この容赦のないコロナ禍の中、諸国は再び提携の威力と分裂の危険性のいずれかを選ばなければならない重要な分岐点に共に立っています。個人的には、インド太平洋諸国はその総力を結集することで再び挑戦に立ち向かうと確信しています。そして、米国は長年にわたる友好国として諸国を支持・支援していくつもりです。

パンデミック収束後の目標は単に元の状態に戻
ることではありません。ジョー・バイデン米大統領が述べたように、諸国は協力を図ることで「より優れた世界を再建」するのです。すべての諸国にとっての中核問題は、「どのように団結して回復と再建を成し遂げるか?」、そして「どのように協力を図って取り組めば、より弾力性のある地域秩序を構築できるか?」です。その答えには3つの要素が関与すると米国は考えています。そして、この要素はすべての提携体制の必要性に根ざしたものです。

第一に、最も緊急の課題は「回復」であるということが挙げられます。パンデミック対策への取り組みを倍増し、より安全で健康的かつ豊かな未来を切り開く必要があります。

第二に、より長期的な視点をもって協力体制と能力開発、およびここ東南アジアとインド太平洋全域の安保課題の必要性を満たす抑止構想の確立に投資していく必要があります。

第三に、太平洋諸国として一致団結して壮大かつ長期的な構想に改めて専念することで、提携関係、発展・繁栄、進歩における新たな未来像に繋がる自由で開かれた地域を構築していかなければならないのです。

この3つの分野をより詳しく説明しましょう。

まず、回復については、基礎に焦点を当てる必要があります。速やかに協力を図ることでコロナ危機の収束に取り組み、地域の経済的活力を取り戻さなければなりません。パンデミックの発生により、人類は世界がどれほど密に絡み合っているかを思い知らされました。今日では、地球のどこか1ヵ所で健康・衛生上の問題が発生すれば世界的な安保脅威となります。

2021年5月、米国海軍・第12ヘリコプター海上戦闘飛行隊(HSC-12/愛称:ゴールデン・ファルコンズ)に配属されたベトナム・ホーチミン市出身のチュン・グエン(Trung Nguyen)二等空兵が、米国海軍のロナルド・レーガン(USS Ronald Reagan)空母の飛行甲板に着陸するMH-60S哨戒ヘリコプター(愛称:シーホーク)に信号を送る様子サマンサ・ジェッツァー(SAMANTHA JETZER)二等兵曹/米国海軍

インド太平洋全域における緊急な必要性を満たすため、米国は速やかに支援を提供することに注力してきました。支援物資には試験装置、酸素生成装置、PPE (個人用保護具)、人工呼吸器、ワクチン貯蔵庫などが含まれます。後方支援や新たな軍事医療訓練の提供、また移動診療所の設立など米軍支援隊は多岐にわたる支援方法を模索しながら懸命に努力を払ってきました。 

しかし、世界的な回復を実現するには全世界諸国で予防接種を実施する必要があります。米国はこの地域への救命ワクチン供与に早急に取り組んでいます。2022年末までに世界各地にワクチン5億回分以上
(後に11億回分に増やすことを表明)の供給を誓約したバイデン大統領は、インド太平洋を最優先地域と考えています。米国はこのパンデミックが完全に収束するまで尽力を続けます。この地域の諸国が一丸となってコロナ禍対策に取り組む姿に当国は感嘆しています。

インドが危機的状態に陥ったとき、近隣の友好諸国は救援に立ち上がりました。C-130J軍用輸送機2機に約250本の酸素ボンベを積載してインドに送付したシンガポールに敬意を表したいと思います。また、シンガポールでは3棟の新規ワクチン製造施設が計画中または建設中です。こうした施設が開設されれば、将来的に危機が発生した場合もワクチンを地域全体により迅速に供給できるようになるはずです。

一方、日米豪印4カ国戦略対話「Quad(クアッド)」のワクチンイニシアチブを通してオーストラリア、 インド、日本、米国の加盟4ヵ国はここインド太平洋地域でワクチン10億回分を生産して提供することを誓約しています。韓国も年末までに最大でワクチン10億回分を製造することを目指しています。この目標を達成するため、韓国と米国は包括的なグローバルワクチンパートナーシップ(KORUS Global Vaccine Partnership)を構築することで合意しています。

新型コロナウイルス感染症は今も猛威を振るっています。完全な回復までの道程は長いと思われます。こうした提携体制は諸国共通の決意と人類共通の人間性を反映するものです。そこで今回の第二の要点として、諸国が一丸となって地域で現在発生している課題や浮上しつつある問題に取り組むことで、この協力体制により一段と強力な地域を構築できるということを強調したいと思います。これは国防総省が最優先している戦略的事項です。

バイデン大統領は米国が外交を主導すると表明しました。そして国防総省は米国外交官の後ろ盾となり、実際の紛争が発生する前に問題を確実に解決することに取り組んでいく構えです。すでに申し上げたように、燃え盛る火を消火するよりも、おき火を踏み消すほうが良策です。

今後も抑止が米国の安保の礎石となります。数十年にわたり、米国は紛争を回避する上で、また諸国が共通して目指す繁栄・発展の中核となる安定性を維持する上で必要となる能力、存在感、関係を維持してきました。新たに出現した脅威や最先端技術により、戦闘の局面と速度が変化しています。米国は「統合抑止」と呼ばれる21世紀の新たな構想に基づき戦略を策定しています。

統合抑止とは、米国の同盟・提携諸国と足並みをそろえながら手の内にあるすべての軍事装備と非軍事手段を行使する戦略を指します。統合抑止とは、ますます発展する友好諸国との提携関係を活かしながら既存の機能を活用すると同時に新機能を構築し、そのすべてを連携網で繋がった全く新しい方法かつ全地域の安保環境に合わせて調整された形態で展開するということです。協力体制においてより優れた協調、より緊密な提携網、より高速な革新を実現することを目指しているのです。米国はその同盟・提携諸国が機能と能力を確立し、必要な情報を確保できるように支援しています。

2021年7月、ハノイでロイド・オースティン米国防長官(左)の訪問を歓迎するベトナム国防省職員たち チャド・J・マクニーリー(CHAD J. MCNEELEY)/米国国防総省

友好諸国と協力することで、サイバー空間と宇宙領域を含め、諸国の抑止力、回復力、提携体制が一層強化されます。

今回の訪問では米国とシンガポールのサイバー防衛協力の強化について協議しました。米国は打ち上げる観測衛星のセンサーについて日本と提携を図っています。これが実現すれば脅威に発展し得る活動をより良好に検知できるようになるだけでなく、他の友好諸国とも同様の機会を模索することが可能となります。

米国空軍の統合打撃戦闘機(JSF)計画に基づくF-35戦闘機の運用をシンガポールが決定したことは米国にとって朗報です。これにより両国の集団的能力が向上し、新しい高度な統合訓練の機会が開けます。

統合抑止にはまた、いわゆる「グレーゾーン」を含め東南アジア地域住民の権利や生計に圧力がかかる状況など、紛争範囲全体における強制や攻撃を阻止するという意味があります。そのために米国は地域の能力強化および海洋領域認識(MDA)の向上を推進しているのです。そうすれば、諸国は自国の国家主権だけでなく国際法で認められている漁業権やエネルギー資源を保護することが可能となります。  

米国はまた、安保提携網全体における相互運用性の向上を図っています。この取り組みにはより複雑な演習と訓練の実施が含まれます。たとえば、最近日本で野心的かつ大規模な演習を完了しました。同演習では米軍と自衛隊が高機動ロケット砲システム(HIMARS)を用いて日本の自衛隊演習場で初の実弾射撃演習を実施しています。 

この他に最近では、米国はオーストラリア、日本、韓国の軍隊と共に、豪海岸沖で「パシフィック・ヴァンガード(Pacific Vanguard)」や「タリスマン・セーバー(Talisman Sabre)」と称する演習を実施しています。こうした演習により、同盟国軍隊と協力しながら高度な統合海上作戦を遂行する米軍の能力を実証することができます。

個人的な意見としては、友好国の軍隊が相互により強力な安保関係を構築し、複数国の提携軍隊が海洋における侵略行為に対抗する能力の強化に励む姿を見て、自信が湧き上がるような気持ちになりました。一方、米国は台湾関係法(TRA)に基づく米国の義務に則り、また米国による「1つの中国」原則の理解に準拠して、台湾が独自の能力を向上し、脅威や強制を抑止する上での即応性を強化できるように支援を提供しています。

同時に、米国は他の親密な同盟・提携諸国と共にインド太平洋における統合的な存在感を強化することに取り組んでいます。英国海軍による歴史的な空母打撃群の太平洋への展開はご存知だと思います。多国籍空母打撃群「英国空母打撃群21」の中核を成す英国海軍の「クイーン・エリザベス(HMS Queen Elizabeth)」空母が米国駆逐艦や米国海兵隊F-35戦闘機隊などを率いてこの地域を航海しています。

これらすべてを考慮すれば、この地域にふさわしい未来に向けて共に前進できると結論付けられると思います。今回、重要な利益を有するインド太平洋諸国の代表としてこうして壇上に立っています。地域が安定かつ発展し開かれた環境が確立してこそ、この利益がより有意義なものとなるのです。諸国との戦略的提携関係により、内政的にも対外的にも平和な「自由で開かれたインド太平洋」を確立するという歴史的な共同構想の実現を推進していくことができます。これは国が紛争を友好的に解決し、全住民のすべての権利を支持することで実現できるより強力かつ安定した地域秩序が確立されたインド太平洋を指しています。

2021年7月、マニラを訪問してロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)比大統領との会談で二国間関係について協議したロイド・オースティン 米国防長官(左)チャド・J・マクニーリー(CHAD J. MCNEELEY)/米国国防総省

より迅速にこの目標を達成できるようにASEAN(東南アジア諸国連合)、日米豪印戦略対話、国連安全保障理事会(国連安保理)など、米国は従来からの同盟関係や新たな提携諸国、また地域的・多国間ルートを通じて努力を重ねています。

米国は長年にわたりインド太平洋諸国がそれぞれに最も素晴らしい目標を実現し、国民の権利を擁護できる環境を確立することを目指してきました。友好諸国とのこうした共同の取り組みは、単に相互の利益のみに基づいているわけではありません。これは諸国共通の原則、つまり国家の主権の維持と自国の未来を自由に構想する自由、透明性・包含性・法治への深い献身、海洋における自由への献身、人権・尊厳・品位への献身、中核的な国際的規則・義務の遵守、紛争の平和的解決の主張を支持することに対する深い信念から生まれたものです。しかし、この地域ではこの共通原則と相反する事象が発生しています。

南シナ海における大部分の海域の領有権を訴える中国政府の主張には国際法に基づく根拠が全くありません。この中国の主張によりこの地域の国家主権が踏みにじられているのです。国際法に基づく権利を守るため米国は今後も地域沿岸諸国を支援していくつもりです。尖閣諸島を実効支配する日本や南シナ海の紛争に悩むフィリピンが米国と締結している防衛・安保条約に基づき、米国はその義務を引き続き遂行していきます。

残念ながら、紛争の平和的解決や法治の尊重を不本意とする中国政府の攻撃的姿勢が見られるのは海洋ばかりではありません。その例として、中印国境紛争の発端となったインド領土侵略、台湾への撹乱的な軍事挑発や他の形態の強制行為、新疆ウイグル自治区のウイグル人イスラム教徒に対する大量虐殺や人道に対する罪が挙げられます。このように意見の相違や紛争が存在するのは事実ですが、重要なのはこれをどのように処理するかです。たとえ米国の利益が脅かされても、当国は怯むことはありませんが率先して対立を招くこともしません。

ここで明確にしておきたいのは、私は米国防長官として、中国人民解放軍と詳細なクライシス・コミュニケーションを図ることを含め、建設的かつ安定した関係を中国との間で構築することに取り組んでいるということです。ご存知のように、大国は優れた透明性と対話の見本を示す必要があります。共通の課題、特に気候変動対策について米国は中国政府と協力を図りたいと考えています。たとえ競合関係にあるときでも、東南アジア諸国と米国の永続的な関係は単なる地政的な要因以上の絆で結ばれています。シンガポールのリー・シェンロン(Lee Hsien Loong)首相の助言のように、米国はこの地域諸国に米国と中国のいずれかを選択することを迫っているのではありません。実際、米国が結んでいる地域諸国との提携関係の多くは、中華人民共和国建国以前から続いています。

そのため、米国はインド太平洋諸国やASEAN加盟諸国との重要な協力関係を拡大しているのです。ASEANはすべての諸国の意見を促し、より深い協力関係を築く傾向を促進する重要な組織です。

米国防長官として、前任者も自分自身も地域の安保構造の中核となりつつある拡大ASEAN国防相会議には欠かさず出席してきました。個人的はこれは優れた姿勢だと自負しています。ASEANはまた、地域の最重要課題を主導する上でも指導力を発揮しています。米国はミャンマー(ビルマ)で発生している悲劇的な暴力行為の終結に向けたASEANの取り組みを称賛しています。国軍のビルマ国民における不可侵の権利を尊重せず、住民の基本的な福利の保護を拒否した姿勢は全く容認できるものではありません。軍隊は国民に尽くすために存在しているのです。軍隊が国民に奉仕を強要するのでは本末転倒です。米国はミャンマー(ビルマ)軍に対して、ASEAN臨時首脳会議で合意に至った「合意5項目」の遵守および永続的な平和の構築を要請しました。 

2021年8月、ミシシッピ州に所在する米国特殊作戦軍(USSOCOM)の海軍小型舟艇教導・技能訓練学校(NAVSCIATTS)で、バハマ、マレーシア、フィリピン、タイから参加した 研修者等を訓練指導する教官 マイケル・ウィリアムズ(MICHAEL WILLIAMS)/米国海軍

ASEANが中心的な役割を果たすこと踏まえ、米国は地域で補完的な機構を構築することにも目を向けています。2021年3月に米国主導で初の日米豪印首脳会談が仮想形式で実現しました。個人的にもバイデン大統領がどれほどこの機会を喜んだかを認識しています。日米豪印戦略対話のような構造により、地域の安保構造の耐久性がさらに高まります。米国はまた、国連安保理でも主導的な役割を果たしています。これには朝鮮半島の核脅威に関する重要な決議の行使が含まれます。米国は侵略の阻止、条約に基づく義務の遂行、国連安保理の意志の支持を実施する即応性を維持しながら、北朝鮮との外交の可能性を残せるように調整された実用的なアプローチを取っています。

米国の提携体制は、より優れた開放性に対する共通の信念および自身の意志で行動できる人生が最も優れているという信条により支えられています。民主的価値観を達成することは必ずしも容易ではありません。また、米国内で常にこの価値観に合致する行動が行われているかと言えば、必ずしもそうとは言えません。実際、米国でも非アメリカ人差別といった受け入れ難い悲痛な堕落行為が発生しています。ここ数ヵ月の間にも、何人かのアジア系アメリカ人や太平洋諸島民がその犠牲になりました。

米国はそれほど愚かではないはずです。はるかに優れているはずです。しかし、米国は過去の過ちを隠そうとはしません。民主主義政権で何らかの失策が発生すれば、その真実がすべての人々の目と耳に届きます。事態は確かな音量で明確に放送されます。政府がこれを隠蔽することはありません。

この開放性・率直性により、自己修正してより完璧な団結に向けて努力する機能が体系に組み込まれるのです。米国の行動が期待に応えられなかったとき、また憲法の教えから逸脱したとき、米国はこれまでもそれを潔く認めて改善を図る道を選んできました。大きな課題に直面したときですら、米国の民主主義はそれ自体の改善に向けた強力な駆動力として機能してきました。パンデミック発生後、米国は野心的な「B3W(Build Back Better World/より良い世界の再建)」構想を導入しました。バイデン大統領は対面する世界諸国の首脳等に対して、よく「『米国と対立する』ほうに賭けるのは決して得策ではない」と話します。

このすべてを結び付けて考えると一つのシンプルな洞察が生まれます。友好諸国と協力しながら取り組むことで、一国で臨むよりも剛健性と安全性をより高めることができるということです。国防長官としてこれを念頭に置き、この最も重要な地域に対するアプローチを決定しています。

米国との同盟は比類のない無敵の強靭性と安保をもたらす源として働きます。インド太平洋諸国の一つである米国は、バイデン大統領の言葉を借りれば、この地域の新たな幕開けは希望と歴史が共鳴する感動的な序章になると確信しています。

同盟国として、提携国として、そして友好国として米国は諸国と共に歩んでいきます。なぜなら誰も独りでは進めないことを知っているからです。一丸となって協力すれば、次世代のためにより優れた明るい未来を築くことができると確信しています。

本誌に掲載されているオースティン国防長官の演説は、FORUMのために編集されています。 

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