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研究者らが 世界のサンゴ の詳細な地図を初めて作成

記事&写真提供:AP通信

研究者は、世界中の200万枚以上の衛星画像を用いて、世界のサンゴ礁の包括的なオンラインマップを完成させた。

この新たなマップは、サンゴ礁の保護、海洋計画、サンゴ科学の参考資料として、気候変動によって失われつつある脆弱な生態系を救おうとする研究者のために活用される。

マイクロソフトの共同創業者である故ポール・アレン(Paul Allen)氏にちなんでアレン・コーラル・アトラス(Allen Coral Atlas)と名付けられたこの地図は、2021年9月に完成した世界初の高解像度の地図だ。サンゴはもちろん、砂や岩、海草などの海底構造の種類を含む現地のサンゴ礁に関する詳細な情報を提供する。

水深15メートルまでの海域を含むこの地図は、海洋保護区、埠頭や防潮堤などのインフラの空間計画、サンゴの再生プロジェクトに関する政策決定に活用されている。

このプロジェクトのマネージングディレクターであり、アリゾナ州立大学地球発見保全科学センター(Arizona State Universityʼs Center for Global Discovery and Conservation Science)のグレッグ・アスナー(Greg Asner)所長は、「今回の業績における最大の貢献は、サンゴ礁の生物圏全体を統一的にマッピングしたことだ」と述べる。

同氏によると、何百人もの現地協力者からなるネットワークがサンゴ礁の情報を提供してくれており、研究者は衛星やソフトウェアをプログラムして、適切な場所に焦点を当てることができる。「そして、これまでの超局所的な意思決定により、より大きなスケールでの意思決定ができるレベルまで条件を引き上げることができる」と同氏は述べる。「もっと統一的に把握しなければ、国連が真の役割を果たすことはできない。500もの島々から成る列島政府が、どのように統一的な判断を下すのか」

このマップには、地球温暖化などの影響でストレスを受けているサンゴをチェックするためのサンゴ白化モニターも含まれている。アスナー氏によると、世界のサンゴ礁の約75%はこれまでこれほど詳細にマッピングされたことがなく、多くは全くマッピングされていない。

このプロジェクトは、2017年にアレン氏の慈善財団であるバルカン(Vulcan)社が、ハワイの研究者ルース・ゲイツ(Ruth Gates)氏と共同で、極限状態を生き抜く「スーパーサンゴ」を生み出し、サンゴ礁の再生につなげるアイデアをバルカン社が資金提供したことから始まった。ゲイツ氏とバルカン社は、当時ハワイでサンゴ礁のマッピングを行うグローバル エアボーン天文台(Global Airborne Observatory)で仕事をしていたアスナー氏を引き抜いた。

世界のサンゴ礁を救いたいと語るアレン氏は、技術を駆使してデータを可視化するというアイデアを気に入ったため、ゲイツ氏は衛星会社のプラネット社とグループを結び、アレン氏は約9百万ドル(約11億円)の資金を提供した。

オーストラリアのクイーンズランド大学では、人工知能技術と現地の参照データを用いてマップ上に層を生成した。マップは、ネット上で閲覧できる。

アレン氏とゲイツ氏は2018年に亡くなったため、アスナー氏らが本プロジェクトを引き継ぐことになった。「もしルースが生きていたら喜ぶだろう」とアスナー氏は言う。「これが実現するなんてくすぐられるような気分だろう」このマップを使って、「計画やサンゴ礁の再生に最大限の効果を発揮できるようにしたい」という研究者からの問い合わせが全体の3分の1を占めるという。

ゲイツ氏は自分が病気であることを知ると、友人で同僚でもあるナショナルジオグラフィック協会のヘレン・フォックス(Helen Fox)氏を選任し、自然保護団体がこのツールを使えるように支援した。現在、コーラル・リーフ・アライアンス(The Coral Reef Alliance)の保全科学ディレクターを務めるフォックス氏は、「本当に世界的な取り組みだった」と語る。「このツールや科学的また保全的価値の潜在価値について、人々に認識してもらうための普及活動には多大な努力があった」

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