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北京のグレーゾーン戦術から戦略的礁を守るフィリピン

トム・アブケ(Tom Abke)

フィリピンは外交、法治主義への訴え、確固とした海軍駐留により、排他的経済水域(EEZ)内にあるセカンド・トーマスショール礁を、中国のグレーゾーン脅迫戦術から守ってきた。現地報道によると、中国の沿岸警備隊と海上民兵の船舶が、南シナ海の礁が中国領土であると不当に主張し、数か月にわたって同礁を取り囲むように巡航している。

マニラの国際開発・安全保障協力(International Development and Security Cooperation)のチェスター・カバルザ(Chester Cabalza)代表は、この礁をフィリピン名で呼びながら、「アユンギン礁(Ayungin Shoal)は、石油と天然ガスが豊富にあるとされるリード堆(Reed Bank)への戦略的な玄関口だ」とし、「したがって、これはフィリピンの『EEZ』の戦略的な部分だ」と、FORUMに対して語った。

中国は、政権が独断的に定めた境界線「九段線」に基づいて、同礁の主権を主張している。国際的な常設仲裁裁判所は、2016年に国連海洋法条約に基づき、その主張を法的に無効として棄却した。国連海洋法条約は、自国の海岸から200海里に及ぶEEZを国に認め、EEZ内の海洋資源に対する唯一の権利を認めている。

1999年からは、第二次世界大戦時代の揚陸艦であるフィリピン海軍の「BRPシエラ・マドレ(BRP Sierra Madre)」号(写真)が、フィリピンのEEZ内であることを示す防衛拠点として同礁に定置されている。フィリピンの海兵隊員と水兵が常駐しているこの前哨基地は、定期的に食料や水の供給を中国の船舶により遮断される等の嫌がらせを受けている。

礁周辺に展開する中国艦艇のほとんどは沿岸警備隊または海上民兵で、この戦術はフィリピンを同礁から排除し、中国が違法に所有する戦略の一環だと、同氏は述べた。2012年、中国は同じくフィリピンのEEZ内にあるスカボロー礁(Scarborough Shoal)を最終的に支配するために同様の戦略を採用した。

「フィリピン・デイリー・インクワイアラー(Philippine Daily Inquirer)」紙が報じたところによると、2022年4月下旬、中国の船舶が漁網とブイを使用して、補給艇2隻とフィリピン沿岸警備隊の護衛艦がBRPシエラ・マドレ号に到達するのを阻止した。2022年6月10日、フィリピン政府は、中国の船舶がアユンギン礁周辺で漁業を行う権利、またはフィリピンの活動を監視または妨害する権利を有していないとする外交的抗議を提出した。

一週間後、米国国務省は、2022年4月に約100隻の中国船舶が集結したフィリピンのEEZ内のもう一つの地物であるセカンド・トーマス礁(Second Thomas Shoal)と牛軛礁(Whitsun Reef)を挙げて、中国に対し「南シナ海における挑発的行動を終結させ、国際法を尊重する」よう呼びかけた。

1951年以来、フィリピンと米国は軍事的同盟関係にある。

2022年6月下旬、フィリピン沿岸警備隊がBRPシエラ・マドレ号への補給と乗組員の交代を行った際、その直前にフィリピンが中国の領海内にあると中国沿岸警備隊の船舶が誤った無線通信を行ったため、補給作業には許可が必要となった、とマニラの「スター(The Star)」紙は報じている。

カバルザ氏は、マニラの外交、パートナーシップ、海軍駐留の組み合わせが、中国政府の侵略に対抗するための「最良の戦術」だと述べた。さらに、中国がセカンド・トーマス礁等を中心に「軍事力を誇示」することで、マレーシア、台湾、ベトナム等の領有権主張者の反対を煽る可能性が高い、と同氏は述べている。

画像提供:ロイター

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