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ロシア・ウクライナ戦争で関心が離れるミャンマーに国際社会は焦点を当て続ける必要あり、と専門家

FORUMスタッフ

ロシアのウクライナ侵攻とその後の戦争は、インド太平洋全域、特に一年以上前に軍事クーデターにより民主主義が停止状態にあるミャンマーで政治的混乱を拡大させている。

東欧の戦争によりミャンマー危機に対する関心が離れたことで、2021年2月にミャンマーを制圧したミャンマー軍が民間人に対してますます暴力的な行為を行うようになったと、米議会が設立した無党派の独立機関の米国平和研究所(United States Institute of Peace)のミャンマー担当国別ディレクター、ジェイソン・タワー(Jason Tower)氏は述べている。

「全体的に見て、特にロシアのウクライナ侵攻後は、ミャンマー情勢を忘れないことが非常に重要だ」と2022年5月、米インド太平洋軍司令部の戦略的多層評価シリーズの一環として、「ミャンマー軍による東南アジアにおける民主主義と中国の戦略的利益への襲撃」と題した講演の中で同氏は語った。

2022年2月にロシアがウクライナに侵攻して以来、ミャンマー軍は民間人に対する空爆を増やし、準軍事的勢力を使って元国民民主連盟党員とその家族を暗殺している。報道によると、ここ数か月で8人の党幹部が殺害されたとされている。

同氏はさらに、ミャンマーの民間人のほとんどは、現在の状況は経済が崩壊しており、軍政が統治やサービスを提供することができなくなっているため、軍事政権を無効なものと見なしている、とした上で、ミャンマーに「新たな常態が戻ることはない」と述べた。国連の発表によると、この紛争によりミャンマー国内で60万人以上が避難を余儀なくされているが、実際の数ははるかに多い可能性もある。

一部のアナリストがミャンマー紛争は膠着状態にあるとしている一方、タワー氏は2021年9月以降、人民防衛軍(PDF)や様々な民族を含むレジスタンス勢力がミャンマーの主要地域を支配し、軍や不正な軍事政権の国家行政評議会を追い出した、と主張している。タワー氏によると、市民が都市部から移動し、国境地帯で訓練を受けており、全国で600を超える人民防衛軍グループが確認されている。クーデター以降、全国的な抗議活動が続いており、ますます暴力的になっている、と同氏は述べてた。(写真:2021年2月のミャンマーの軍事クーデターに反対する抗議者)

さらに、広く合法的な政府と見なされている親民主派の国民統一政府(National Unity Government)は、人民防衛軍勢力を統一し、民族勢力との結びつきを構築し、暫定連邦憲章の策定を進めている。一部地域では、人民防衛軍により学校が再開されている。

「ある意味で、ウクライナの状況と戦場でのウクライナのロシアに対する成功は、ミャンマーの人々を鼓舞している。ミャンマーの人々は、ウクライナで行われているロシアに対する闘争とミャンマーの人々がミャンマーの独裁と軍事統治に対して行っている闘争との間に類似点があるとますます感じているのではないか」とタワー氏は述べた。

ロシアはウクライナ攻撃により、ミャンマー軍に対してこれまでのような支援を提供できなくなった。一方で、ロシアの関心の低下は中国に門戸を開くこととなった。

「ロシアのウクライナ侵攻以降、中国が過去数か月間で軍への支援を劇的に増やしている。これは、国内の反軍政派にとって最も重大な問題のひとつだ。同時に、より広範囲で地域全体の民主主義への脅威を生み出している」とタワー氏は述べている。中国は軍事政権に経済的・技術的援助を提供するとともに、民主主義の回復を阻止し、西側諸国の影響力を低下させることを期待して、世論の心をぐらつかせるための経済プロジェクトを開始している。

ロシアの関心がウクライナに注がれる中、同盟国、提携国、志を同じくする国々にとっては、ミャンマーの民主主義と安定を回復するためのレジスタンス勢力の努力を支援する機会でもある。困難を緩和し、士気を高めるためにも、市民団体との協力を通じて、人民防衛軍や民族軍に人道的支援やガバナンスのサポートを提供することができる。また、カチン独立機構(Kachin Independence Organization)、アラカン軍(Arakan Army)、カレン民族同盟(Karen National Union)、国民統一政府(National Unity Government)などの主要抵抗勢力の連合を強化することも可能だ。さらに、ミャンマーの民主主義の活性化を支援する国々を支援し、インドやタイと協力して、特に国境地域でミャンマー軍の資金調達を支援している中国の国際組織犯罪を暴露することもできる。

「国際社会や米国がミャンマーの民主主義を守るために行動しなければ、中国がミャンマー国内で足場を固め、影響力を高めることになるだろう。この地域は、インドと東南アジア本土の間の非常に重要な戦略的空間だ。そこでは中国が影響力を強化し、最終的にはミャンマーを通じてインド洋における地位を固めようとしている」とタワー氏は述べている。

「ヨーロッパとインド太平洋の非常に重要な地域でこうした危機が同時に起こっている中、ウクライナと併せてミャンマーに焦点を当て、優先することは非常に重要なことだ」

 

画像提供:ウィキメディア/MgHla/Htin Linn Aye

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