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ソロモン基地建設意図否定も、国際的軍事化の動きを見せる中国共産党

FORUMスタッフ

中国共産党は、開発協定が締結された時点では現場に軍事基地を建設する意図がないと主張していたにもかかわらず、他国の施設を繰り返し軍事化してきた。

2022年5月下旬に共産党政権は、安全保障協定の一環としてソロモン諸島での軍事インフラ建設を否定したが、中国共産党のこれまでの言動を踏まえると、インド太平洋地域の国々はそのことを疑うだけの根拠がある、とアナリストは主張している。

中国の王毅(Wang Yi)外相は、ソロモン諸島に「軍事基地を設置する意図はまったくない」と述べているものの、フランス通信(Agence France-Presse)によると、2022年5月8日に漏洩した文書案には、安全保障協定が中国人民解放軍が使用できる両用港や飛行場の建設を含む、南太平洋での中国の軍事的展開を可能にすると記されている。(写真:2022年5月26日、中国による南太平洋地域への軍事的および財政的強制力に対する懸念が高まる中、ソロモン諸島のホニアラに到着した中国の王毅(Wang Yi)外相(中央))

AP通信によると、中国はクック諸島、フィジー、パプアニューギニア、バヌアツとも安全保障協定を締結しているが、現時点では協定は訓練と設備の提供に限定されている。

近年、中国共産党はカンボジア、ジブチ、パキスタン、南シナ海などで計画している施設の軍事化の意図を否定しながら、その数年以内、時には数か月以内に、こうした地域に軍事基地を建設したという経緯がある。

中国共産党中央委員会総書記の習近平(Xi Jinping)は、中国が南シナ海の紛争海域の岩礁に建設している人工島を軍事利用しないことを繰り返し約束した。ロイター通信が報じたところによると、2015年9月に習総書記は「中国が南沙諸島で行っている関連する建設活動は、どの国をターゲットにしている訳でも、影響を及ぼすものでもなく、軍事化する意図もない」とあえてスプラトリー諸島を中国名にして語っている。

しかし、その数か月前に軍事施設の建設が始まっていたことが、衛生画像により明らかになった。中国共産党は2022年3月までに、少なくとも3つの人工的に拡張した岩礁(ミスチーフ礁、スビ礁、ファイアリー・クロス礁)を南シナ海で完全軍事化し、対艦ミサイルシステム、対空ミサイルシステム、レーザー、ジャミング装置、戦闘機を装備した、と米インド太平洋軍司令官のジョン・C・アキリーノ(John C. Aquilino)大将はAP通信に語った。

同大将は、「こうした島々の装備の目的は、中国の攻撃能力を自国沿岸よりも広大な範囲に拡大することにある」とし、「これで中国人民解放軍は戦闘機や爆撃機、そしてミサイルシステムのすべての攻撃兵器をここから発射できるようになる」と説明している。

さらに、「これは実在している脅威であり、だからこそ、こうした島々の軍事化が非常に懸念されるのだ」とAP通信に対して語った。「これにより近隣だけでなく、すべての公海や公海上空で活動するあらゆる国が脅かされる」と述べている。

中国の否定に続く軍事化のパターンは世界中で繰り返されている。

アフリカの角に位置するジブチでは、中国共産党が以前から「物流施設」を建設していると主張していたが、実際には中国人民解放軍海軍は戦略的なアデン湾とアフリカ大陸に戦力投与することを可能にするため、2017年に同地に軍事基地を開設している。

「中国がジブチの港湾プロジェクトを軍事化したことは、タンザニア、アラブ首長国連邦、パキスタン、ビルマ(ミャンマー)などの他の国における北京の港湾利権について警鐘を鳴らすものだ」と、民主主義防衛財団(Foundation for Defense of Democracies)の中国担当専門家のクレイグ・シングルトン(Craig Singleton)氏は2021年9月に「ボイス・オブ・アメリカ」に語った。

否定はされているものの、カンボジアとパキスタンの中国の港湾プロジェクトで両用港が建設されるという証拠が数多く上がっている。

衛星画像によると、パキスタンのグワダル港に中国が建設した異常に高度なセキュリティ機能を備えた施設が存在することがアナリストによって確認されている。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙は2019年7月、中国共産党とカンボジアがリアムに軍事基地を建設する秘密協定を締結したと報道したが、両国はこれを否定している。アジア海洋透明性イニシアチブ(Asia Maritime Transparency Initiative)によると、2022年1月の衛星画像では、中国がより深い港を作るための浚渫工事を行っているところが記録されている。2020年、カンボジアはリアムにある米国が建設したカンボジア海軍戦術本部を破壊した。

スリランカ、ミャンマーなどの他のインド太平洋諸国やその他の地域で中国が出資する港湾も、両用施設に発展するのではないかとの懸念が高まっている。

2021年3月、オーストラリア戦略政策研究所(Australian Strategic Policy Institute)国防戦略・能力部門の上級アナリストであるマルコム・デイビス(Malcolm Davis)氏は、サウスチャイナ・モーニング・ポスト(South China Morning Post)紙に次のように語っている。「基地に関しては、これらは避けられないと考えている。中国は一帯一路構想(OBOR)を通じてこの目標に向けて取組みを進めている。中国は、商業的性質を持つ一方で、将来的には中国人民解放軍海軍の作戦を支援できる可能性のある港湾へのアクセスを確保し、場合によっては掌握しつつある」とし、

「オーストラリアでは、中国が一帯一路構想のもとで、二重役割の施設への商業投資を通じて基地や空軍基地へのアクセスを得ようとしていることに対して大きな懸念が存在する……これまで中国が南シナ海で外国漁船に対して妨害行為を行ってきたことを踏まえると、我が国は東海岸に近い海上安保上の利益にとって問題となる、中国の攻撃的な活動に直面することになる可能性がある」と述べた。

画像提供:AP通信

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