特集

宇宙の脅威

対宇宙能力・開発・政策の分析

トッド・ハリソン(TODD HARRISON)、ケイトリン・ジョンソン(KAITLYN JOHNSON)、ジョー・モエ中佐(LT. COL. JOE MOYE)、マケナ・ヤング(MAKENA YOUNG)、CENTER FOR STRATEGIC AND INTERNATIONAL STUDIES(戦略国際問題研究所)

2020 年は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックとそれによる世界的な不況、米国およびその他インド太平洋地域の政治的変化がもたらす不確実性と予測不可能性に翻弄された年だった。一方、宇宙の安全保障については確かな継続性と予想可能性が感じられる1年となった。宇宙環境の最も顕著な変化は、スペースXが新たに約 900 基のスターリンク衛星を低地球軌道(LEO)に打ち上げ、衛星群の総規模が 1,200 基を超えたことである。これは史上最大の衛星群であり現在宇宙で運用されている全衛星
のおよそ3 分の1に相当する。SpaceX による衛星群の構築は続き、数週間ごとに 60基のスターリンク衛星が打ち上げられている。

米国の宇宙政策には、前政権下でもいくつかの注目すべき進展があった。当時のドナルド・トランプ大統領は、宇宙政策をめぐる指令(SPD)を新たに 3 つ打ち出している。SPD-5では、政府および商用の宇宙資産をより確実にサイバー攻撃から守るため政府の各部局・機関にサイバーセキュリティの方針と慣行の策定を指示している。SPD-6では、宇宙原子力発電と推進の開発および利用に関する国の方針をアップデートし、SPD-7 では宇宙ベースの位置決め、ナビゲーション、タイミングプログラムとアクティビティに関する方針およびガイダンスが更新された。2020 年には、この他に NASA からアルテミス協定(Artemis Accords)も発表されている。この協定は、アルテミス計画の参加国が遵守すべき 10 の原則や、宇宙飛行士を再び月に (そして、いずれは火星にも)送る計画を盛り込んだものである。2021年半ばまでにオーストラリア、日本、ニュージーランド、韓国、米国を含むインド太平洋 12 ヵ国が同協定に署名している。 

2020 年から 2021 年にかけては、米国宇宙軍と米国宇宙軍司令部の立ち上げが行われた。米国宇宙軍が請求した最初の予算は、既存の米国空軍口座からの振替 153 億米ドルを含む154億米ドルである。同軍はまた初のキャップストーン・ドキュメントとして
「宇宙軍のためのスペースパワー・ドクトリン (Spacepower Doctrine for Space Forces)」も発表した。これは、大きな変更より現行の方針を引き継いだ部分のほうが多いという点で注目される。2021 年2 月、米国宇宙軍司令部で中佐を務める米国陸軍の
ジェームズ・ディキンソン(James Dickinson)大将は、司令部全体で戦闘に向けたマインドセットを育て、同盟国およびパートナー諸国との重要な関係を維持し、米国政府全体および商業的宇宙組織との統合を進めるいう戦略ビジョンを発表した。 

他の国々では 2020 年を通じて対宇宙兵器の開発と試験が進められている。中でも目立つのは、ロシアが行った複数の対衛星(ASAT)試験である。これには2020 年 7 月に行われた共軌道ASAT兵器の試験や、2020 年 12 月に行われた直接上昇式 ASAT 兵器の試験が含まれる。これらの活動には、対宇宙能力の開発と再構築を続けてきたロシアの行動パターンが反映されている。

中国、インド、北朝鮮、ロシアの対宇宙兵器が大きな進歩を遂げたのは公然の事実だが、その一方では他の国々も対宇宙能力の開発に取り組んできた。日本では民間および軍による宇宙作戦が進んでいる。宇宙基本法案可決前の日本は、宇宙を国防に利用することを禁じていた。2008 年に宇宙基本法が成立すると、宇宙における軍事開発の開始が認められ、政府関係者は宇宙での中国の行動に対抗する防衛的な対宇宙能力の開発に言及するようになった。その 1 つが 2007 年に中国が行ったデブリを発生させるASAT(衛星攻撃兵器)の試験である。 

2020 年に、航空自衛隊内に宇宙ドメイン任務部隊 (Space Domain Mission Unit)を立ち上げ、2023 年までに作戦を開始するとした法案を承認した。2026 年までには宇宙環境を監視する最初の衛星を打ち上げる計画である。同じく 2020 年に発足した宇宙作戦中隊は、日本の衛星を武器による攻撃などの被害から守り、スペースデブリ、小惑星、他の衛星を含む宇宙環境を監視するという正式な任務を帯びた初の宇宙ドメイン任務部隊である。同中隊は、米国宇宙軍司令部や日本の民間組織である宇宙航空研究開発機構(JAXA)と協力することになる。国立防衛研究所の福島康仁主任研究員は、「日本の宇宙安保活動は米国との協力を前提としています」と述べている。

日本は、直接上昇式 ASAT システムの実証を行っていないものの、低地球軌道内の宇宙資産を攻撃する潜在能力を持つ米国製の SM-3 ミサイル防衛迎撃機を保有している。日本の宇宙軍事開発の歴史は比較的浅いため、これまでに行われてきた公的な発言のほとんどは共軌道式 ASAT やジャミング(電波妨害)技術などの能力を追求する可能性に関するものである。2020 年、当時の安倍普三首相は日本が「能力とシステムを大幅に強化して優位性を確保する」と宣言したが、具体的なプログラムは公表されていない。 

韓国では、政府が 2020 年 10 月のブログで、ジャミングとスプーフィング(なりすまし)に対抗するためには、衛星のナビゲーションを地上システムで強化する必要があると主張した。地上システムで GPS を拡張する理由として北朝鮮からのスプーフィング、特に 2010 〜16 年以降のそれによるトラブルを挙げている。同国の科学部からは宇宙能力のアップグレード計画を詳述した声明も発表された。この計画には 2029 年までにより強力なロケットを作るという目標に向け、衛星と軌道探査機を月 に運ぶ初の国産ロケットを打ち上げることなどが含まれる。

米国宇宙軍ガーディアンズ(U.S. Space force Guardians)への転属にあたり、カリフォルニア州トラビス空軍基地で宣誓を行う米国空軍兵たち。AP 通信社

中国の宇宙計画

2020 年にオープンソースの情報で確認された対宇宙兵器の開発やテストは非常に少なかった。しかし、中国には安定した直接上昇式ASATプログラム、共軌道 ASAT 兵器に必要な軌道上での軍民両用機能に加えて、広く使用されている電子・サイバー対宇宙能力がある。 

2020 年には、パンデミックにもかかわらず民間宇宙ミッションで成果をあげている。2020 年 12 月には、月面探査機「嫦娥5号(Chang’e-5)」が月の石 2 キログラムを持ち帰った。月面を 600 メートル以上移動した月面ローバー「玉兎2号(Yutsu-2)」は、2021 年半ばの時点でも月の裏側で稼働していた。2021 年 6 月には中国の国営宇宙ステーションのコアモジュールも打ち上げられている。 

中国による宇宙軍事利用の編成 

中国人民解放軍(PLA)の宇宙資産とミッションがどのように編成されているかは、未だにはっきりしていない。衛星の宇宙への打ち上げや購入、運用といった宇宙関連ミッションの多くは、依然として戦略支援部隊(SSF)に委ねられている。しばしば
「情報ドメイン」として紹介される同部隊は、サイバー戦、電子戦、心理戦そして宇宙をめぐる人民解放軍の努力を引き継いでいる。宇宙システム部とネットワークシステム部(共に戦略支援部隊内にある半独立の部門)は、対宇宙能力などの合同ミッションを共有している。中国軍事研究センター(Center for the Study of Chinese Military Affaires)の報告書には、 「戦略支援部隊の設計に影響を与えたと思われるもう 1つの重要な原則は、平時と戦時の統合という毛沢東主義の揺るぎないルールである」との指摘がある。この原則は、多くの宇宙・対宇宙能力が持つ軍民両用という性質によく適している。 

火星のローバーをはじめとする中国の民間宇宙能力は、同国の国家航天局が主導しており、その国家航天局は国務院国防科学技術産業局の管轄下にある。中国航空宇宙科技公司(China Aerospace Science and Technology Corp.)および中国航空宇宙科学工業公司 (China Aerospace Science and Industry Corp.)は、宇宙技術を専門とする数多い研究開発部門の 2 つである。

中国の対宇宙兵器 

中国は、運用可能な SC-19 直接上昇式 ASAT システムの試験を続けているものの、その直接上昇式 ASAT が低地球軌道内のあらゆる衛星を脅かせる上に、おそらくは中地球軌道や静止赤道軌道(GEO)内でもそうであることを実証済みである。 

天津大学では、スペースデブリ除去ミッションを支援するロボットが開発された。この触手に似たロボットアームは衛星に搭載され、すべての一般軌道からデブリを取り除くために打ち上げられることになる。同ロボットアームは理論上、敵の衛星を掴むために使用できる。しかし宇宙を野放し状態で回るデブリや機能していない衛星には効果の薄い極めて密接なランデブー近接運用(RPO)が必要となる可能性が高い。

一部のアナリストは、中国の地上レーザーステーションで大規模な開発が行われていると主張し、かかるプログラムが実施されている疑いのある国内5ヵ所を特定している。確認されたプログラムのいくつかは学術的なものであると思われ、ASAT システムではない可能性が高いが、最も懸念される場所の 1 つはキネティック・物理的 ASAT の試験を実施したことで知られ、レーザー兵器システムを収容している可能性もある軍事基地である。指令を受けて機能するこのようなエネルギーシステムがどれだけ高度か、または「動員可能な状態にある」かを示すヒントはなく、宇宙システムに対する潜在的なテストまたは攻撃について一般に入手可能な情報も存在しない。 

航空宇宙研究開発機構(JAXA)が提供するこのCG画像は、小惑星と小惑星探査機「はやぶさ2」のイメージである。AP通信社

2020 年 10 月下旬、インドの「ヒンドゥスタン・タイムズ(Hindustan Times)」は、中国がインド、パキスタン、中国の間で争われているカシミール地方の一部であるラダック(Ladakh)の実効支配線から60 キロメートル以内の地点に移動式のジャミング装置を移し、同地域における人民解放軍の動きを隠蔽していると批判した。 

米国その他の国の宇宙システムが、公に確認された中国からのサイバー攻撃を受けたことはない。とはいえ中国はこの能力の証明に成功しており、他のドメインでは金融や防衛関係の標的に対して盛んにサイバー攻撃を仕掛けている。

ロシアの宇宙軍事利用能力

新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、本報告書で言及した多くの国ではほとんどの産業が減速したが、唯一ロシアの宇宙軍事利用能力だけは堅調を維持した。2020年には数多くの対宇宙能力をテストし、複雑な近接運用を行ったほか、宇宙ベースの軍用インフラも拡大した。ロシアは、その安定した宇宙発射能力、対宇宙能力の継続的な進歩、国際宇宙ステーションを通じた民間宇宙活動への貢献によって宇宙大国としての地位を維持するとともに、宇宙ドメインで優れた能力を発揮することにより、他のドメインではライバルとなることもある諸外国と独自の関係を育んだ。 

ロシアが国家主導で進める宇宙活動は、ロシア航空宇宙軍(RAF)または民間のロスコスモス (Roscosmos)プログラムのいずれかが管轄する。ロシア軍内の宇宙能力は航空宇宙軍の管轄下にある。航空宇宙軍の下部組織であるロシア宇宙軍は、1992 年に創設された世界初の宇宙軍であり、宇宙ベースのあらゆる資産、軍用衛星等の打ち上げ、宇宙システムに対する潜在的な脅威の監視を担当している。 

2020 年にウラジーミル・プーチン大統領は、国の重要な政府・軍用インフラを標的とした通常兵器による攻撃があった場合、自らが核兵器を使って反撃できるとした文書を承認した。この文書では通常兵器による攻撃からの防衛のほか、宇宙ベースの兵器も脅威として挙げられている。したがって、宇宙におけるミサイル防衛と先手攻撃用の兵器がロシアにとっての脅威となるようにするには、それらの潜在的な展開が必要となる。同文書の承認は、宇宙から地球に向かう兵器が核兵器と同等の脅威になり得るとロシアが考えており、同国からも同じ反応を引き出せることを示唆している。 

ロシアの対宇宙兵器 

ロシアは、1960 年代に行ったソビエト連邦初の共軌道ASAT試験以来、キネティック・物理的対宇宙能力を保有してきた。ソ連時代のプログラムで使用された技術は、最近になってロシアが行った開発の強固な基盤となったことが証明された。同国は直接上昇式と共軌道式のASATの能力を何度も誇示し、2020 年には両方の試験を行っている。 

2020 年 7 月の試験では、ロシアのコスモス 2543 号 (Cosmos 2543)が無関係なロシアの衛星の近くで小さな発射体を発射した。米国宇宙軍司令部はこの試験を非難し、そのような発射体が衛星を標的として使われる可能性があると断言した。これに対しロシア国防省は、これらのマトリョーシカ衛星つまり入れ子式衛星は、ロシアの他の宇宙資産の日常的な査察と監視のために配備されていると述べた。ロシア政府は同国が常に宇宙空間の完全な非軍事化に取り組む国であり、これからもそうであると主張し続けてきた。 

その一方で防空・ミサイル防衛システムの開発を続けている。S-400、S-500 シリーズの地対空ミサイル (SAM)は、公式な ASAT 兵器指定こそ受けていないものの、低地球軌道内の衛星に届く可能性が高い。ロシア軍の情報筋は、S-500 が宇宙の物体を攻撃し、宇宙ベースの兵器からの防衛を行うように設計されていると断言する。ロシア空軍および宇宙軍の責任者によると、S-500 には地球に近い宇宙空間で超音速兵器や衛星を破壊する能力があるという。ロシア空軍地対空ミサイル部隊のユーリ・ムラフキン (Yuri Muravkin)副長は、このミサイル級の兵器が対宇宙兵器として使用される可能性があると述べた。同副長は、「空軍の敵が次第に宇宙軍の敵になるにつれ、空と宇宙の境界は消えつつあります。将来は完全に消えるでしょう」と語る。 

ロシアではさらに電子対宇宙能力の成長も続いており、外国の衛星を妨害する移動式の地上システムも開発している。同国の電子能力は 2000 年代の初めから着実に伸びてきたが、ロシア軍で電子戦闘部隊が発足した 2009 年にはさらに成長が加速した。最近開発された電子対宇宙兵器には、 「宇宙通信の隠蔽」に使われる移動式ジャミングシステム 「ティラダ2号(Tirada-2)」や、主に衛星通信チャンネルのジャミングに使われる移動式地上システム 「ビリーナMM(Bylina-MM)」などがある。 「ビリーナ」は、「自動化された移動式の地上局」であり、AIを使った指揮統制システムであると報告されている。資産を認識してその攻撃方法を決定することができる自動化システムが搭載されており地上、空中、宇宙の標的に対して使用することができる。ロシアは、このほかレーダー偵察衛星を妨害できるレーダージャミング装置 「クラシュカ2号(Krasukha-2)」および「クラシュカ4 号(Krasukha-4)」の2機を保有していると報告されている。 

2021 年 6 月、中国の酒泉衛星打ち上げセンターにて、 「神舟 12 号 (Shenzhou-12)」長征2号F型輸送ロケットへの搭乗前に敬礼する宇宙飛行士たち。 AFP/GETTY IMAGES

北朝鮮の宇宙活動

2020 年における北朝鮮の宇宙活動は抑制されていた。北朝鮮が直接上昇式または共軌道式の ASAT 兵器を活発に使用する能力を有する可能性は依然として低く、非キネティック・物理的能力を進歩させた兆しはほとんどないが、一部の情報筋は同国の電磁パルスの脅威が存在すると断言している。北朝鮮は電波妨害能力を通じて電子戦の能力を示した。また、同国のサイバー攻撃の脅威は常に存在し、今後も存在し続ける。これらの 2 つは対宇宙分野への応用可能性が最も高い能力である。北朝鮮とイランがミサイルと発射機の技術に関する協力を再開したという主張は、一方の国の進歩が他方に移転可能であることを示唆している。 

国連安保理事会の報告書は、北朝鮮の宇宙計画を国際平和に対する脅威と断定した。にもかかわらず、北朝鮮はその宇宙における活動が平和的な意図によるものであると主張し続けている。2020 年 5 月に、北朝鮮の国営テレビが同国の宇宙プログラムを
宣伝する国家航空宇宙開発局の番組を放映した。政府のプロパガンダ部である「ナエナラ(Naenara)」は、北朝鮮の宇宙計画の目的が、「国家の利益を守り、経済の構築や人々の生活に不可欠な科学技術上の問題の解決に科学技術を活用すること」であると述べている。しかしイランの場合と同様に、北朝鮮の宇宙活動の意図が弾道ミサイルの野心と密接に結びついていると見る向きは多い。 

同国が宇宙能力用に維持している発射エリアは、舞水端里(ムスダンリ)衛星発射場と西海(ソヘ)衛星発射場の 2 ヵ所である。2020年、舞水端里発射場の使用に関するオープンソース情報は出ていない。ウェブサイト「北緯 37 度(38 North)」では、通常のメンテナンス、除雪および日常的な活動を報告した画像と分析が公開されたが、2020 年に発射の準備や実行があったことを示すものはなかった。北朝鮮には、このほかに自国の衛星打ち上げと軌道上の衛星の追跡・監視を行う総合衛星管理ビル(GSCB)がある。報告書によると、同ビルの隣では科学試験施設と思しきものが建設中であるが、その正確な目的は不明である。 

北朝鮮も共軌道式 ASAT 兵器を持とうとしているようには見えない。これまでのところ、実行可能な共軌道式 ASAT の能力に必要な近接運用やアクティブな誘導措置を実施するための手段や専門知識は披露していないからである。現在宇宙にある北朝鮮の物体はほんの一握りに過ぎず、2 つの発射施設の活動もごくわずかであることから、北朝鮮が直接上昇式や共軌道式 ASAT の能力を積極的に追及しているとは考えにくい。 

電子戦作戦に関しては、自らのダウンリンク・ジャミング(衛星から地上への妨害)能力を使い続けている。2020 年 4 月には、韓国に対して使用する 「GPSジャミング装置」の導入準備を進めていると発表した。北朝鮮が朝鮮半島沿いに妨害活動を続
けていたことは、2020 年に何度も報告されている。多くのオープンソース報告書によると、ジャミングの主な標的は、軍事目標ではなく商業ラジオ放送の周波数や民間のGPS信号であった。米国陸軍が 2020 年7 月に発行した新マニュアル「北朝鮮の戦略(North Korean Tactics)」は、北朝鮮の電子戦の編成、濃緑、技術、戦略を詳しく解説している。 

米国当局によると、北朝鮮が対宇宙分野で米国にもたらす最大の脅威は依然としてサイバー攻撃である。北朝鮮の戦略の要は、「121 局」として知られる政権のサイバー戦指導部隊である。米国陸軍のマニュアルには、この 121 局が 6,000 名以上のメンバーで構成され、その多くがベラルーシ、中国、インド、マレーシア、ロシアなどの国で作戦に従事しているとの記載がある。 

2020 年 12 月、当時のマイク・ポンペオ米国務長官は、北朝鮮が米国のサイバーセキュリティにもたらす脅威はロシアのそれより深刻であると述べた。これは 2021年 2 月に同様の見解を示した米国のバイデン政権にも共通する感覚である。米国国務省のネッド・プライス (Ned Price)報道官は、米国とその同盟国を脅かす北朝鮮の悪意あるサイバー活動が、米国の政策見直しを報告するきっかけになったと述べている。

インドの成長

インドは 1980 年に同国初の衛星を打ち上げて以来、徐々に宇宙における能力を伸ばしてきた。2019 年にはASAT の試験にも成功し、キネティックな対宇宙能力を世界で 4 番目に実証した国となっている。民間の宇宙プログラムも前進しており、目下 3 回目となる月への飛行を準備中である。 

インドの宇宙活動は、民間の宇宙組織と軍事宇宙組織に二分される。民間の宇宙開発は、そのすべてが宇宙庁 (Department of Space)の下で活動するインド宇宙研究機関(ISRO)の管轄である。同機関が 2020年に行った打ち上げは、パンデミックにより 11 月の第 51 回打ち上げのみとなった。2021 年 2 月 28 日には、ブラジルの地球観測衛星1基を含む衛星19基を軌道内に送り込みインド発の軌道投入に成功した。 

2019 年に創設された防衛宇宙研究機関(DSRO)は、国家安全保障宇宙システムの研究開発を担当し、国防省防衛宇宙局の下で活動している。これらの新しい機関は宇宙の戦略的な運用を進めるというインドの目標の一部である。防衛宇宙研究機関の仕事は、宇宙戦のシステムおよび技術の開発である。インドの対宇宙能力の多くは、中国とパキスタンがもたらす安全保障上の脅威に対抗する目的で開発されている。 

「敵の資産を検知、特定、追跡」する宇宙ドメイン認識データの提供に向け、民間企業とも協力してきた。防衛宇宙局は、開発したシステムが防衛と攻撃の両方に役立つことを期待している。 

注視すべきポイント

対宇宙兵器の開発が進む中国だが、その軸足はこれらの能力を軍事力や作戦計画と融合させることに移りつつあるように思われる。注視すべき重要なポイントは、中国が宇宙関連の研究開発と(触手のようなホースが付いたデブリ除去ロボットのような)軍民両用の能力に投入する予算総額である。作戦という観点から見た場合に追跡したい重要な展開は、スプーフィング、ジャミングなどの電子対宇宙能力を今後中国がどれだけ非正規戦部隊や戦術に融合させるかである。宇宙の行動規範に関しては、対地同期赤道上軌道(GEO)にある中国の偵察衛星「実践17号(Shijan-17)」を主な指標として注視したい。同衛星は、これまで主に中国の他の衛星の偵察に使用されてきた。それが対地同期赤道上軌道を回る他国の衛星も偵察するようになると、大きな変化が起き広い範囲に影響が及ぶと思われる。

今後 1 年以内に追加の対宇宙試験・展開を行う可能性が最も高いのは、おそらくロシアだろう。2020 年に行われた直接上昇式ASAT兵器と共軌道式 ASAT 兵器の試験を考慮すると、注視すべき重要なポイントはそれらの試験が続行されるか否かと、新たな能力が実証されるか否かである。ロシアについては、このほか新たな航空機搭載プラットフォームと地上プラットフォームで使用するレーザー ASAT システムの試験、重要なプラットフォームを守る電子戦システム、民間のインフラや政府機関に対する大胆なサイバー攻撃なども注視していきたい。 

イランと北朝鮮の対宇宙能力は、共に比較的低いままである。しかし両国の電子・サイバー対宇宙能力は深刻な脅威となっている。イランは、今後1年間にわたりムスリム革命防衛隊の下で宇宙への発射活動を続行する可能性が高い。一方の北朝鮮も比較的静かだったここ 1 年の沈黙を破り、宇宙発射能力の試験再開に向けて動き出す可能性がある。注視すべき重要な進展は、イランと北朝鮮が宇宙技術や弾道ミサイル技術をめぐって協力する新たな兆しがないかどうかである。加えて、イランがペルシャ湾で継続している GPS スプーフィングや、北朝鮮が韓国に仕掛け るGPS ジャミングも監視する必要がある。どちらの国によるサイバー攻撃も、他のドメインに仕掛けられる頻度が増え高度化すれば、宇宙システムに対するサイバー攻撃の脅威レベルも上がったことになる。 

インドは、高出力レーザーやその他の非キネティックASAT 能力の開発を続行する可能性が高いと思われる。宇宙におけるインドの重要な指標は、新しい軍事・研究開発宇宙機関が今後どのように発展してゆくか、宇宙・対宇宙活動に投入される資金のレベル、宇宙システムに対抗する電子戦システムの導入や試験に踏み切る兆しなどである。 

2020 年は、一部の例外を除き対宇宙活動が全体的に低調となった年だった。その状況は各国がロックダウンから復活し、以前の計画やプログラムを再開するにつれて変わる可能性がある。バイデン政権は、現在、その全体的な国家安保戦略の策定と見直しを進めている。注視すべきポイントの1つは、その戦略が宇宙政策問題全般と対宇宙兵器の拡散にどう対処するかである。米国およびその他の国々では、宇宙での行動に関するより明確な規範を求める声が高まっている。バイデン政権が宇宙の規範構築に向けて進むつもりであるという最初の兆しが見えるのは、米国国防総省と情報機関の間の合意により、政府が支持し従うことのできる規範が定められた時だろう。政府機関の間で合意が成立しない限り、他国政府との有意義な対話を始めるのは難しい。

戦略国際問題研究所・航空宇宙安全保障プロジェクトは、2021 年 4 月、「宇宙の脅威アセスメント 2021」と題するこの報告書を発表した。FORUM のフォーマットに合うように編集されている。報告書全体へのアクセスこちらから 

https://www.csis.org/analysis/space-threat-assessment-2021.


対宇宙 兵器の種類

経済力と軍事力の増強に宇宙が果たす役割は、ますます大きくなっている宇宙の戦略的重要性を理解したいくつかの国は、宇宙システムの混乱、劣化や破壊を引き起こし、他国による宇宙ドメインの利用を脅かすような対宇宙兵器を保有
するようになった。その一方で宇宙の重要性は、紛争の抑止や緩和、宇宙ドメインの平和的利用に向けた保護への取り組みも促進している。たとえば、米国宇宙軍(U.S.Space Force)が発表した宇宙戦力に関するキャップストーン文書には、「宇宙軍は国際法および国の政策に従い、宇宙がいつまでも安全で開かれた環境であるよう責任ある行動規範を推進することにあらゆる努力を払うべきである」という記述がある。

対宇宙兵器、特に軌道デブリを発生させる兵器は、宇宙環境はもとより繁栄と安全のために宇宙ドメインを利用する国々の能力にも深刻なリスクをもたらす。対宇宙兵器は、その効果、展開方法、技術レベル、開発と配備に必要なリソースによって大きく異なる。これらの兵器は「キネティック・物理的」「非キネティック・物理的」「電子」「サイバー」という 4 つの大まかな能力グループに分類することができる。

キネティック・物理的

キネティック・物理的兵器は、衛星や地上基地を直接攻撃するか、付近で弾頭を爆発させる。これらの兵器による攻撃の主な形態は、直接上昇式対衛星(ASAT)兵器、共軌道式 ASAT 兵器、地上基地攻撃の 3 つである。直接上昇式 ASAT 兵器が地球から準軌道に打ち上げて軌道内の衛星に衝突させるものであるのに対し、共軌道式 ASAT 兵器は、軌道に投入してから標的やその付近に向かうよう操作する。地上局への攻撃は、衛星の指揮統制や衛星ミッションデータのユーザーへの中継を担う地上局を対象とする。 

宇宙でにおけるキネティック・物理的な攻撃は、軌道デブリを発生させ、同じ軌道内にある他の衛星に対し無差別に影響を及ぼすおそれがある。これらのタイプの攻撃は、有人の地上局や(低地球軌道内にある国際宇宙ステーションなどの)有人衛星を標的にした場合、人命が失われる可能性のある数少ない対宇宙作戦の 1 つである。他国の衛星にキネティック・物理的な攻撃を仕掛けたことのある国は1つもないが中国、インド、ロシア、米国は直接上昇式 ASAT 兵器の試験に成功している。

非キネティック・物理的

非キネティック・物理的な対宇宙兵器は、物理的接触なしで衛星や地上システムに影響を与えるものである。レーザーには、衛星のセンサーの一時的な遮断や永久的な故障を引き起こしたり、コンポーネントを過熱させたりする効果がある。高出力マイクロ波(HPM)兵器は、衛星の電子機器を混乱させ、電気回路やプロセッサに永久的な損傷を与えることができる。宇宙で核爆弾を爆発させると、影響を受ける軌道上の衛星に無差別な影響を与える高放射線環境と電磁波 (EMP)が発生する。 

衛星を標的とするレーザーや高出力マイクロ波による攻撃は、地上から行われることも、艦載施設、航空機搭載プラットフォームや他の衛星から仕掛けられることもある。衛星レージングシステムは、高品質のビーム、適応光学装置(大気圏内で使用する場合)、レーザービームを正確に操るための高度なポインティングコントロールを必要とすることから、多額の費用と高度な技術を要する技術である。高出力マイクロ波兵器を使用すると、衛星の電子機器の混乱、保存されたデータの破損、プロセッサの再起動を引き起こすことができるほか、出力を上げれば電気回路やプロセッサに永久的な損傷を与えることもできる。 

宇宙で核爆弾を爆発させると、その電磁波が及ぶ範囲内の衛星が直ちに影響を受けるだけでなく、高放射能環境が発生することで、影響を受ける軌道上にある防護シールドのない衛星においてコンポーネントの長期的な劣化が加速するおそれがある。宇宙で核兵器を爆発させることは、1963 年の部分的核実験禁止条約で禁止されている。同条約には 100 ヵ国以上が調印しているが、中国と北朝鮮は調印していない。

電子

電子対宇宙兵器の標的は、宇宙システムがデータを送受信する電磁スペクトルである。ジャミング装置は、同一の無線周波数帯のノイズを発生させることで衛星との通信を妨害する。アップリンク・ジャミング装置が地球から衛星へ向かう信号(コマンド制御アップリンクなど)を妨害するのに対し、ダウンリンク・ジャミング装置は衛星から地球上のユーザーに送られる信号を標的とする。スプーフィングは、攻撃者が受信者を騙し、偽の信号を本物の信号と思うように仕向けるものである。スプーフィング装置を使うと、データストリームに虚偽の情報を挿入したり、衛星に偽のコマンドを発信して動作を混乱させたりすることができる。全方位アンテナ付きのユーザ端末(多くのGPS受信機や衛星電話が該当)は、視野が広いため、地上のより広範な角度からのダウンリンク・ジャミングとスプーフィングの影響を受けやすい。 

「ミーコニング」と呼ばれるタイプのスプーフィングでは、暗号化された軍用 GPS 信号さえもスプーフィングの被害を受けるおそれがある。ミーコニングは、GPS の暗号の解読やデータの改ざんを要することなく、時間遅延を利用した元の信号のコピーを再送信するだけでよいためGPS の暗号を外す必要はない。さまざまな種類の衛星信号のジャミングとスプーフィングに必要な技術は、市販されている上に安価であるため、国家主体および非国家主体の間で比較的普及しやすくなっている。

サイバー

電子攻撃が無線周波数信号の送信の妨害を試みるものであるのに対し、サイバー攻撃の標的は、データ自体とデータの流れを使用、送信、制御するシステムである。衛星に対するサイバー攻撃は、データトラフィックパターンの監視やデータを傍受し、偽のデータや破損データをシステムに挿入する際に行われる。想定される標的は、地上局やエンドユーザーの機器または衛星自体である。サイバー攻撃は、標的とするシステムの高度な理解を要するものの、実行には必ずしも多くのリソースを必要とせず、民間団体や個人に委託することもできる。たとえ内部のサイバー能力を欠いている国家や非国家主体であっても、サイバー攻撃の脅威となる可能性はある。 

宇宙システムへのサイバー攻撃は、衛星が提供するデータやサービスの喪失につながるおそれがあり、GPS などのシステムが標的となった場合にはシステム上の影響が生じる可能性がある。敵が指揮統制システムを通じて衛星を掌握すると、サイバー攻撃の影響は永久に続きかねない。攻撃者はすべての通信をシャットダウンできるだけでなく、推進剤を使い果たしたり、電子機器やセンサーに損傷を与えるコマンドを出すことで衛星に回復不能なダメージを与えることができる。

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