海洋に関する規則の 成文化 & 秩序の再形成

海洋に関する規則の 成文化 & 秩序の再形成

南シナ海・東シナ海における中国の攻撃行動

グエン・タイン・チュン(NGUYEN THANH TRUNG)博士、レ・ゴック・カイン・グァン(LE NGOC KHANH NGAN)

中華人民共和国(中国)が  2021 年 9 月 1 日に施行した「改正海上交通安全法」(MTSL)により、中国が主張する領海を航行するすべての外国船舶には中国の交通運輸部海事局 (CMSA)への報告、必要な許可証の提示、中国の指揮・命令への準拠が義務付けられることになった。同法律が施行される前の 2021 年 2 月には、中国政府が主張する海域を防御することを目的として中国海警局 (CCG)が外国船舶に武力を行使することを認める「海警法」が可決された。両方の法律は国際秩序に深刻な影響を及ぼすだけでなく、沿岸諸国はすべての国家の船舶に対して領海の無害通航権を認める必要があると規定する「国連海洋法条約 (海洋法に関する国際連合条約/UNCLOS)」に違反している。

中国は 30 年をかけて、紛争海域に関する自国の主張を現在の広大な範囲にまで徐々に成文化してきた。1992 年に施行された 「中国領海法(中華人民共和国領海及び接続水域法)」も領海と接続水域などの基本定義を規定する国連海洋法条約に準拠していないことから、周辺諸国の懸念が高まる要因となった。中国は同領海法により、中国沿岸から遠く離れた諸島の隣接する基点の間の基線を結んだ直線から領海基線を形成する直線基線法を採用することで、自国の領海と排他的経済水域(EEZ)の定義を拡大し、国際法の下でこうした海域を使用する権利が認められている他国の権利を継続的に侵害してきた。

国際法下で認識される範囲よりも広大な海域を中国国内法により主張することで、中国は地域国家の領土や主権を犠牲にしながら強制的な手段を通じて中国の領土目標を前進させる機会を勝手に創出している。海警法第12条には中国が主張する海域の主権、海洋権益、人工島、施設、建設の保護が海警局の職責として規定されており、海警局は同法第 20 条に従って、中国の管轄下にある海域、島嶼、岩礁に外国が建築物、構築物、浮遊装置を建造・設置した場合はこれを解体する権利も有する。

改正海上交通安全法により、いわゆる中国の「水先区」で航行 および停泊する際に情報提供を義務付ける外国船の種類を指定することで、中国共産党(CCP)は同海域における活動を一層厳格に管理できるようになる。つまり、他諸国の排他的経済水域内であっても中国共産党が紛争海域に水先区を定義できるということである。

改正海上交通安全法と海警法は、単に国際法の違反となるだけではない。こうした法律は独自の司法手続を使用して中国の主張を強化するという広大な野心を推進する手段となる。

中国は必要に応じて法令を自国の有利となるように解釈できるように、漠然と定義された法的用語を用いるというアプローチを取る。海警法第74条には「中国の管轄下にある水域」には「他の水域」が含まれると規定されている。これは、紛争海域および物議を醸しながらも1992 年の中国領海法で中国が主張する海域を指している可能性が高い。一方、改正海上交通安全法については、運用の厳格性や範囲、または同改正法が実際に執行されるか否か、執行されるのであればどの海域が適用対象となるかは未だ不透明である。 

中国は何十年にもわたり地域的に定着していた秩序を覆すことを望んでおり、国内法はその海洋規則と規範の形成に向けた取り組みの重要要素となる。東シナ海と南シナ海に関して中国との領有権紛争が発生している諸国にとって、海警法は明らかに差し迫った脅威である。同法は、中国が海洋における物理的な対立を正当化するための法的根拠の確立を望んでいるという見方を裏付けるものである。

実際問題として中国政府はますます攻撃的な姿勢を取るようになっている。中国の経済力と軍事力の増大がこれ以上進めば、法的に中国の管轄内に含まれるか否かを問わず、意のままに領有権を主張する地域に中国共産党は国内法を適用できるようになる。2020 年度には 25 兆 2,000 億円相当(2,520 億米ドル)の軍事費を計上した中国では、中国人民解放軍海軍の艦隊と海上民兵の
船団が地域の海軍や法執行機関を凌ぐほどに巨大化している。
この観点から、小国の船舶に中国の法律を遵守させることは同国政府にとっては容易な事と考えられるため、地域の諸国や秩序に基づく国際社会の間で警戒心が高まっている。

グエン・タイン・チュン博士はホーチミン市に所在するベトナム国立大学ホーチミン校国際研究センター(SCIS)の所長を務める。レ・ゴック・カイン・グァン氏はベトナム 国立大学ホーチミン校国際研究センターの研究員である。元の記事は 2021 年 9 月 27 日に戦略国際問題研究所(CSIS)のアジア海洋透明性イニシアチブ(AMTI)ウェブサイトに掲載されたもので、FORUM のフォーマットに合うように編集されている。

Share