中国 との経済摩擦

特集

共に脅威に立ち向かう

シェール・ホロウィッツ(SHALE HOROWITZ)博士、ウィスコンシン大学ミルウォーキー校(UNIVERSITY OF WISCONSIN-MILWAUKEE)

中国の経済的台頭は、もはや内向きな発展と国際的な共存などという穏やかな話ではない。特に習近平総書記の下では、中国共産党の特徴的な国内経済・政治統制のやり方が以前より中央集権的かつ抑圧的になっている。外交政策はより露骨に攻撃的だ。こうした政策変更の背景には、中国経済がより資本集約に特化し移行したことがある。このことは他の国々、特にインド太平洋地域の国々に新たな経済安保上の脅威をもたらすとともに、軍事的な安全保障上の脅威もしばしば深刻化させている。

脅威にさらされた国が取り得る最善の対応とはどのようなものか?この複雑な問いに答えるには、さまざまな脅威と対応能力を分類してみる必要がある。中国共産党の経済的・軍事的脅威に直面している大国は、最も効果的な対応を促進できる最強の
連合体を形成する可能性が高い。これらの国は、主として経済的な脅威に直面している第二の重要な国家グループの協力を引き寄せる可能性がある。このことは、インフラとサプライチェーンの安全保障をめぐる3つの脅威(通信、レアアースおよび半導体に対するもの)と、オーストラリア、インド、日本によるサプライチェーン・レジリエンス・イニシアティブ(SCRI)という国家間の政策調整の例によって説明される。

こうした理論とエビデンスは、中国の脅威が別の中核国家群を誕生させているという結論を裏付けるものである。これらの中核諸国には、中国が経済的な影響力を駆使して国々に不本意な経済的依存を強制し、その外交の自律性と軍事的安全保障を脅かすことを阻む意志と能力がある。ケーススタディでは、中国がもたらす脅威への最善の対応を構築するための指針も示されている。これにはまず国内政策を充実させる、志を同じくする他の中核諸国と可能な限り緊密に連携する、これらの基本的な政策と両立する国際的な基準の推進・普及に取り組むことのほか、具体的な脅威に焦点を当て、それらに直接かつ効果的に対処すべく同盟国やパートナー諸国と協力することなどが含まれる。

中国の経済的脅威:目的と戦略

習近平の時代となって以来、中国の経済的野心は質的に変化している。中国は、もはや経済近代化のための 「改革開放」運動の一環として国際経済に溶け込もうとしているのではない。この近代化が過渡期に達した今、労働集約的な生産をマスターした中国は、世界の経済先進国と直接競合するより資本集約的なセクターに移行しようとしている。習近平の目標は、市場勢力が現在経済先進国の間で主流となっている分業体制に中国を誘導するのを許すことなく、すべての主要ハイテク産業で中国を支配的な地位に押し上げることである。

この目標はどのように達成されるのか?公式には、 「メイド・イン・チャイナ 2025」計画やその改訂版と同様に、国の補助金と(通信などの厳選優先セクターでは)保証された国内市場が主な手段である。だが非公式には、他にも強力な手段がある。1 つは、中国市場で競合する外資系企業に対するより広範な差別である。それらの企業の技術を現地パートナーに移転させてから、差別的な規制や補助金を使って国内生産者との完全な入れ替わりを図ろうというものだ。同時に外国の技術を直接盗むことを目的とした空前のサイバー窃盗キャンペーンも国の後押しにより展開されている。中国の国内生産者が最終的には輸出に軸足を移せるのも、直接補助金と自国市場の保護に支えられてのことである。こうした取り組みを公然と批判したり、対抗措置をとったりする国は、わずかに残る中国市場を加速度的に狙われるだけでなく、自国を訪れる中国人観光客や留学生も減少するという脅威にさらされることになる。これと同様の扱いは、中国の他の外交政策や国内政策に反対する国に対しても行われている。

中国のハイテク産業の統合が本格化するにつれ、他の国々では経済の中国依存と脆弱化が進むことになる。これらの国々の経済は中国が非対称的な影響力を有する中、サプライチェーンで従属的・代替可能な立場に置かれることになるだろう。中国との間で領土問題を抱える国々の見通しはさらに暗い。かかる脅威が存在すると断言できるのは、中国が並の規模の国ではないからだ。また中国は通常、そのような紛争を相手国の主な脆弱性とは区分することができる。標的となった国や他の国々は、相応の対応をしたり問題をエスカレートさせることを望まないのが普通だからだ。

北京の展示会で披露されたファーウェイの5Gサービス。AP 通信社

中国の脅威の種類および標的となった国の対応能力

中国の経済的脅威の論理は均一だが、各国が直面する脅威はさまざまであり、その対応能力も異なる (表 1)。中国の軍事的脅威に加えて経済的脅威にも直面する国々は包括的な対応を必要とする度合いが最も高い。たとえば日米豪印安全保障対話(Quad)の加盟国であるオーストラリア、インド、日本、米国がこの部類に属する。主に経済的な脅威にしか直面していない国にとっての脅威は、発展のレベルによって異なる。先進国の直面する脅威がすでに得意とする資本集約的な商品やサービスに対するものであるのに対し、中間所得国にとっての脅威は、バリューチェーンの上位にあるより資本集約的な 分野に移行できなくなることである。その点、資本集約的な分野への上昇がまだずっと先の話である低所得国は最も脅威が少ない。このような低所得国にとっての主な脅威は、外交問題において中国の指導に従うか、または少なくとも中立を保たなければ、儲かる中国の国内市場から排除されることである。

一方では、各国の対応能力も異なるため中国の 脅威に対抗する共同の措置を構築するにあたっては、このような違いを考慮する必要がある。過度に対応を統一しようとすれば最低公約数的な政策しか生まれず、そのような政策でさえ確実に実施される可能性は低い。特定の国が直面する特定の脅威に対処すべく、すでに取られた対抗措置を評価することで最も効果がありそうな柔軟かつ累加的な政策の種類が見えてくる。

脅威への対応の具体化:重要なインフラとサプライチェーン

中国がもたらす経済的脅威への対応が最も広範囲で行われているのは、中国のサプライヤーが重要なインフラやサプライチェーンを支配または妨害する能力を発達させたところである。重要なインフラの最も顕著な例は、通信ネットワーク機器である。この分野では、ファーウェイ(Huawei)をはじめとする中国企業が、競合製品(主にヨーロッパのエリクソンとノキア、韓国のサムスン)を大幅に下回る価格で最先端の製品を販売し、世界市場で支配的な地位を確立している。ファーウェイの優位性は、その大部分が盗んだ技術、補助金および国内市場での恵まれたポジションの上に築かれてきた。しかし仮にファーウェイのポジションが公正に勝ち取られたものだったとしても、同社が深刻な脅威をもたらすことに変わりはない。外国のネットワークへのアクセスは、中国共産党政権が悪意のあるソフトウェアを送り込み、通信をスパイしネットワークに依存するインフラやサービスの大規模かつ長期間にわたる中断や停止を引き起こすことを可能にするからである。

こうした脅威はファーウェイが新しい 5G ネットワークの主要サプライヤーになることが確実視されるにつれて大きく膨れ上がっている。この問題への対応は驚くほど効果的だった。米国議会における超党派のコンセンサスにより、ファーウェイ、ZTE およびその他の中国のサプライヤーの機器の早期禁止が決定されたのである。当時のトランプ大統領政権は、リスクを公に説明した上でファーウェイの機器は諜報分野における同盟国の協力を損なうと付け加えた。トランプ政権は、これらの製品の全面的な
禁止を主張しただけではない。中国への明らかな言及は控えたものの政府、諸機関、企業による連絡調整を通じて信頼性が高く安全なネットワーク (およびアプリ、クラウドサービス、コンピューターその他ハードウェアなどの関連事業)を維持する
取り組みである「クリーンネットワーク(Clean Network」イニシアティブにも支持を表明した。同イニシアティブは、これと同様の補完的な取り組み(EU の「5G クリーンツールボックス(5G Clean Toolbox)」など)に基づいている。

2012 年、マレーシアのゲベン (Gebeng)で当時建設中だったライナス社のレアアース処理工場中国による輸出規制後、日本政府は中国以外のレアアース鉱山に投資した。2010 年に90% を超えていた中国への供給依存度を 2020 年には60% 以下にまで引き下げることに成功した。AP 通信社

中国共産党の経済的報復を恐れた各国政府は、中国の 5G 機器の公式な禁止にしばしば公然と抵抗した。しかし多くはすでに疑念を抱いており、そこから生じた議論がリスクに対する人々の意識の向上につながった。その結果、ファーウェイその他の中国
メーカーの機器を公式・非公式に禁じる措置が幅広く実施されたのである。「クリーンネットワーク」イニシアチブは現在、NATO、EU、経済協力開発機構(OECD)のほぼすべての加盟国を含む 60 を超える国々(世界の国内総生産の 3 分の 2 以上に相当)のほか、通信サービスや関連するソフトウェア、ハードウェアを提供する何百もの大手民間企業に支持されている。

各国の対応のパターンは、軍事的・経済的脅威の多様なパターンと概ね一致している。中国の重大な軍事的脅威に直面しているすべての国が公式または非公式の禁止令を採択し、重大な経済的脅威に直面しているほとんどの国も同様であったが、どちらの脅威も顕著でない国がこれを行った例ははるかに少ない。とはいえ、「ほぼ脅威なし」のカテゴリーでも大きな進展はあり得る。ここではトランプ大統領政権もその政策に好意的な国の決断を促すべく、国際開発金融公社(DFC)を設立したほか、米国輸出入銀行 (EIB)の権限を拡大して中国の補助金による資金調達を相殺し、他のサプライヤーが行う入札の競争力を向上させた。エチオピアは最近、欧州主導の「クリーンな」コンソーシアムを利用して 5G ネットワークを構築することを選んだが、その選択を促進したのは国際開発金融公社の融資である。

レアアースは電子機器、再生可能エネルギー、軍用ハードウェアといった重要なセクターの産業プロセスに必要な鉱物である。中国は1990年代以降、レアアースの生産・加工において支配的な地位を占めるようになった。2010 年には、東シナ海の島嶼問題をめぐる日本への制裁と国内ユーザーへのコストメリット提供を目的に輸出規制を強化している。2015 年からは再び輸出が上昇したものの、中国への経済的依存の危うさを感じさせるエピソードである。

レアアースが自国産業にとっていかに重要かを認識していた日本は、すぐに対抗措置を打ち出した。政府が中国以外のレアアース鉱山に投資し、中国からの供給への依存度を 2010 年の 90% 以上から 2020 年には 60% 以下に引き下げたのである。米国は、日本とオーストラリアの協力を足場とした。米国政府の比較的少額な補助金でも、米国内のレアアース採掘はもとより、オーストラリアのライナス(Lynas)社その他の企業が米国で行うレアアース加工を奨励するには十分だった。

米国は、このほかオーストラリアやカナダなど信頼できる産地でのレアアース採掘を奨励する目的で購入契約にも署名している。技術的要求と市場の需要を考慮した上で、採掘・加工施設の最小限の規模を決定する必要がある。それは平時の状況下および想定される紛争シナリオにおいて、中国がもたらす潜在的な混乱を防ぐのに十分な生産と備蓄を確保できる規模でなければならない。このような能力は、中国からの供給に代わるものがほとんどない脆弱な同盟国やパートナー諸国にも同様のレベルの安全保障をもたらす。レアアースの確実な採掘・加工能力を現地で構築する同様の取り組みは、一部の東南アジア諸国でも始まっている。これらの国の取り組みもまた、オーストラリア、日本、米国およびその他関係諸国からの支援に値する。

近年、サプライチェーンの安全保障をめぐるさらに深刻な問題を提示してきたのが半導体である。半導体は、電子機器をはじめとするほぼすべての機械の中核で制御・演算・記憶機能を担っている。半導体製造工場の資本集約度が上昇し、工場誘致に使われる国の補助金も増えたのに伴い、米国その他の企業はチップ設計に注力し、生産はアウトソーシングするようになった。その結果、世界生産に占める米国のシェアは、1990 年の 37% から 2021 年には約 12%に低下した。生産は台湾のメーカーである TSMC や、韓国のサムスン、SK ハイニックスにどんどんシフトしている。世界最大の半導体委託製造メーカーとなった TSMC は、電子製品の製造拠点を中国に移す傾向が高 まったここ数年、中国本土に多くの工場を建設してきた。

トランプ政権時代、米国では半導体の製造を国内に戻す「リショアリング(reshoring」が大きく進んだ。これは主に海外メーカーの最大手である TSMC および サムスンとの協力により達成された部分が大きい。TSMC がアリゾナ州、サムスンがテキサス州に、それぞれ巨大な複合製造施設を建設している。なぜこのような進展が可能だったのか?第一に、米国政府のさまざまなレベルからようやく他国が提供しているような補助金が交付されるようになった。第二に、米国政府が経済的・軍事的安全保障のために国内半導体製造拠点の拡大が必要と判断すると、TSMC もサムスンも米国にそのような拠点を持つのが望ましいことをすぐに理解した。両社がこの機会を利用しなければ、競合他社に先を越され、米国その他での市場シェアを奪われるリスクがあっただろう。さらに、サプライチェーンを多様化し中国における生産への依存を抑制することで、中国が自国以外の市場を人質に取り、中国における生産への依存と中国企業への技術移転を強要することを防いでいる。米国に大規模な拠点を置くことで、TSMC は中国の手の届かないところで生産を拡大することができ、中国が同社を脅かす可能性も低くなる。実際、TSMC はインセンティブと脅威の下で徐々に中国支配下の企業に変わるのではなく、生産拠点を台湾や中国以外にもしっかりと分散させることで独立企業であり続けることを選んだのである。程度の差はあれサムスンも同様である。

これらのフラッグシップ企業が下した決定は、台湾および韓国の経済的利益と国家安全保障上の利益をも促進する。注目すべきは、中国による軍事的・経済的吸収の脅威が強まった台湾、およびミサイル防衛の取り組みに対して中国による経済制裁を受けた韓国が 2019 年の米中貿易関係の悪化に先立ち、すでにサプライチェーンの多様化に着手していたことである。米国にとっては、1970 年代から 1980 年代にかけて国内の自動車産業が経験した試練と重なるところがある。強さを維持または再構築するには、恵まれた国内市場の中堅企業を人為的に支えるのではなく、最も効率的な外国企業を誘致して現地生産を行わせることにより、国内企業が競争力を維持せざるを得ない状況を作るのが最も効果的である。

世界最大の半導体委託製造メーカーである台湾のTSMC は、ここ数年、その製造工場を中国に建設してきた。ロイター

サプライチェーンの強靭化に向けた協力

中国の脅威に対する各国の対応は、それぞれの脆弱性と能力を必然的に反映するが、共通の長期目標のために定期的かつ柔軟に調整される場合に最大の効果を発揮する。そのような調整の重要な事例がオーストラリア、インドおよび日本が2021年に立ち上げた「サプライチェーン強靭化イニシアティブ(SCRI)」である。このイニシアティブはベストプラクティスを共有し、投資および「買手と売手のマッチング(buyer-seller matching)」を促進することで、サプライチェーンの安全保障を推進することを目的としている。このような連携には、各国の脆弱性対策が本質的に他の国の取り組みを補完する傾向があることで促進されるという特徴がある。

日本の最も不要な中国依存は、日本や海外市場に再輸出するためのサプライチェーンの重要な一部として中国のサプライヤーを利用することである。日本の 生産者は、余程のことがない限り中国市場を諦めたくない。かと言って、他の市場への供給能力を中国が人質に取ることを望んではおらず、中国の競合他社に横取りされる可能性が最も高い中国に最高の技術や生産の拠点を置くつもりもない。中国の生産拠点に過度に依存することの危険性は、以前から指摘されていた。それは 2010 年の中国によるレアアース禁輸、米中貿易戦争、新型コロナウイルス感染症が引き起こした混乱により、一層注目を集めるようになった。2020 年に日本は、生産を中国から日本(または、より労働コストの低い他の国)に移転させる企業への補助金の交付を開始した。日本企業にとってこれは多くの場合、中国以外の市場に対応するための安全なサプライチェーンを中国の外で構築することを意味する。このような並列サプライチェーンは、中国からの輸出を完全に置き換える必要はないものの、中国が中国以外の市場を
人質に取ることを抑止するのに十分な規模のものであることが必要である。

インドの国内市場・輸出市場用サプライチェーンは、中国のサプライヤーに大きく依存するようになっている。ヒンドゥー紙(The Hindu)は次のように報じている。 「2018 年の中国からインドへの輸入(中国が供給した上位 20 品目を考慮)は輸入全体の 14.5% であった。 「パラセタモールをはじめとする医薬品の有効成分などの分野では、インドは完全に中国に依存している。電子製品に至っては、インドの輸入全体に占める中国からの輸入の割合は 45% である。」

国境紛争、1962 年の中国によるインド攻撃の記憶、インドと対立するパキスタンへの中国による長年の支援を理由に、中国への過度の依存を疑問視する声は昔からあった。2020 年には、新型コロナウイルスによる サプライチェーンの混乱と 20 人のインド兵が死亡した中印国境事件とが、インドの政策立案者らに衝撃を与えている。その結果、インドの対中経済政策が根本的に再編されることになった。ファーウェイや中国のその 他の通信サプライヤーを排除しただけでなく、国の 重要なインフラに対するスパイ活動や混乱のリスクを 「一掃」するために多くの中国の人気アプリを禁止した。多くの重要インフラの連結がきわめて脆弱であることを考慮すると、中国のサプライヤーやサービスに対する規制は広範囲で行わなければ効果がない。しかし、インド
の産業の多くは当初大きく中国に依存していたため、重要インフラで発生したような突然の切断がサプライチェーンで起きるとは考えにくい。

2020 年、インド政府は主要10業界につき国産化 による売上増加分に対する広範な補助金を発表した。補助の対象は、中国に大きく依存しているがインド にも比較優位性がある分野の生産である。こうした 投資は、国内市場に役立つだけでなく輸出市場も確実に拡大する。このような見通しはインド企業だけでなく外国の多国籍企業からの投資も呼び込む。インドが 比較的不利な分野では、サプライヤー を多様化することで中国への依存を減らすことができる。

インド・アガルタラ(Agartala)のアルミニウム工場でバケツ を積み上げる作業員。2020 年、インド政府は主要 10 業界につき 国産化による売上増加分に対する広範な補助金を発表した。ロイター

オーストラリアの経済成長は、長年にわたり、食料や原材料を貪欲に求める中国の需要を満たすことで実現してきた。その後新型コロナウイルス感染症の時代になると、オーストラリアは過度の中国依存は危険という厳しい教訓を学んだ。オーストラリア政府は、パンデミックの起原に関する国際調査を公然と要求し、中国を苛立たせている。中国共産党は、このような公然の反抗が何をもたらすかを世界に知らしめるべく、オーストラリアを見せしめにすることを決定した。中国の外交官は直ちに経済制裁を行うと脅した。中国の国営タブロイド紙「環球時報  (Global Times)」の編集者はより雄弁で、次のように書いている。 「オーストラリアはいつもそこにいてトラブルを起こす。まるで中国の靴底に貼り付いたチューインガムのようだ。時々それをこすり落とす石を探さねばならないことがある」中国は、オーストラリアの大麦、牛肉、ラム肉、砂糖、ワイン、ロブスター、綿花、木材、石炭の輸入に関税その他の規制を課した。

それでも中国がオーストラリアに高いコストを課せなかったのは、食品や原材料の輸出業者は他に買手を見つけるのが普通だったからである。2020 年、オーストラリア政府は、防衛産業基盤や比較優位性のある分野の製造に補助金を交付し、国内生産の拡大とより信頼できる海外サプライヤーの発掘によってサプライチェーンの脆弱性に対処する計画を打ち出した。

2020 年にオーストラリア政府は、牛肉などの輸出品に対する中国の関税に対抗するため、防衛産業基盤や比較優位性のある分野の製造に補助金を交付する計画を打ち出した(写真は北京のスーパーマーケットで売られているオーストラリア産の牛肉)。AP 通信社

以上 3 つの例から話を戻すと、協調して取り組むことのメリットはかなり明確である。インドは中国とほぼ同じ人口を有し、今後も経済的、軍事的な競争相手に成長する可能性を秘めている。より正確な経済用語を使って言うと、インドは労働集約的な製造業と医薬品やソフトウェアなどの人的資本集約的なハイテク産業において比較優位を持つ。日本はさまざまな資本集約型の製造分野、オーストラリアは多くの重要な食料および原材料においてそれぞれ比較優位を持つ。したがって各国にはより信頼性の高いサプライヤーや輸出市場を求めて他の国々と接触する動機がある。この高い経済的補完性という展望は、各国が等しく直面する中国の軍事的脅威を考えるほどに現実味を帯びる。また、今すでにある関係は、印日豪のすぐれた能力によってさらに強化される可能性がある。今後、米国とその同盟国およびパートナー諸国は、こうした取り組みにより精力的に参加することが重要である。日米豪印安全保障対話の加盟 4 ヵ国を合わせた共同市場は、中国市場よりはるかに大きい。カナダ、韓国、台湾、多くの東南アジア諸国といった地域の重要な立役者が中国の圧力や妨害を受けないサプライチェーンと輸出市場の確立に関心を寄せていることを考慮すれば、事実上の共同市場はそれよりもはるかに大きい可能性がある。こうした関心は、英国およびほとんどのEU加盟国も共有している。

この共同市場は、中国が支配する市場より寛容で有望な世界経済の核の1つとなるだろう。中国とは異なる基準で国際関係を考える他の中核諸国は、影響力の行使を差し控えるのが普通であるから、中国式の威嚇や制裁を他国に対して日常的に用いるわけにはいかない。しかし、この制約にはそれなりの強みがある。そうした制約のある大きな共同市場は、世界市場に輸出するサプライチェーンのより安全な拠点となり、より確実で差別のない市場アクセスと、より安全な知的財産の保護を可能にするからである。


同盟国およびパートナー諸国 による脅威への対応を最適化 するための 3 つの原則

原則 1:自国の力を高め守ることこそが現実的で 確実な安全保障の基盤である。 

中国の脅威にさらされた国々は、それぞれが直面する脅威と自らの能力に合わせた独自の戦略 でこれに対応しなければならない。特に大きな 脅威に直面する国々は、より広範囲な対抗措置を取る必要性を感じることになる。限られた対抗手段しか持たない国々は、中国共産党の怒りや制裁の的となるのを回避するために、ソフトな発言とより非公式な行動に徹するだろう。しかし、そのような国々をほとんど脅威のない無関心な中立国と一緒にしてはならない。同盟国およびパートナー諸国 はこれらの国々を同じくソフトな発言と非公式な 方法によって支援する必要がある。 

原則 2:別の中核国家群の内部で(または共に)柔軟に協働し、安全保障の最大化を図る。

最も大きな脅威にさらされているが高い能力を持つ国々は、軍事的・経済的安全保障という共通の 目標をもって柔軟に行動することで、世界経済の中に共同の安全と独立を守る能力を備えたもう 1 つ の自然な中核を形成するとともに、脅威の少ない 国家にも同様のメリットを提供することができる。これらの国々の状況は一律ではなく、さまざまな セクターやサプライチェーンの安全保障をめぐる問題は急速に変化していることから、経済面および軍事面の安全保障に対する多種多様なアプローチ
が必要になる。まるで複雑に込み入ったパッチワーク のような作業だが、これを避けて通ることはできない。

原則 3:国家安全保障と経済発展の健全な原則を維持しつつ、脅威への対応を調整する。

もう一方の中核国家群において確保される重要なインフラとサプライチェーンは、当然ながら中国共産党政権が自らの支配のために用心深く保有しているものに酷似する傾向があるだろう。同政権がますます厚かましくでしゃばるようになったのは、必死の自己防衛の表れでもある。中国共産党による内政支配と国家の安全保障を守るために中国企業が取る措置は、そのまま国外でも他国を支配し脅かすために利用されている。その意味で脅威を感じるすべての国では、本来そうした企業の存在が排除または制限されるべきといっても過言ではない。 

脅威に直面した国々は、国家の安全保障および経済発展という従来の健全な原則から逸脱することなく、そうした中国の脅威を最小化するための効果的な連携に注力すべきである。各国は、戦中の非常時に確実な供給を行う国内の輪と、相互に信頼できるパートナー諸国間でより広く自由な分業を展開する国外の輪を駆使し、重要なインフラとサプライチェーンを守らなければならない。 

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