防衛政策の再調整:インド太平洋地域の課題対応に向けた軍事計画

ジョセフ・ハモンド(Joseph Hammond)
中国の国家主義と軍事拡張主義の影響力の高まりを受け、ニュージーランドは防衛政策の再調整を余儀なくされた。12月にニュージーランド政府が発行した国防白書「2021年防衛評価(Defence Assessment 2021)」報告書には、中国と気候変動によりもたらされる脅威への対処に向けたより慎重かつ積極的な戦略への移行が反映されている。
防衛評価報告書には、「中国の統治モデルと自国の価値観に適合する情勢、および中国が国際的指導者として認識される世界を構築することを目指して、中国政府は国際体制を再構築しようとしている」および「南シナ海における人工島の建設と軍事化や国連海洋法条約に反して中国が同海で展開する活動など、ニュージーランドはこれまで数多くの事態について懸念を表明してきた」と記されている。
同報告書の説明によると、中国の軍事拡大は日本南部を起点として台湾やフィリピンに至る地域を指す「第一列島線」内で中国が潜在的な敵対国と見なす勢力を阻止・打倒する能力の開発に焦点を合わせた政策によるものである。海軍力を行使するため、中国政府は積極的に軍艦を建造し、中国人民解放軍海軍を、広範囲にわたり制海権を行使できる能力を備えた「外洋海軍」に変革した。
一部のインド太平洋諸国が同様の安保課題に直面していることから、ニュージーランドはインドネシア、マレーシア、シンガポール、韓国、ベトナムなどの諸国との防衛提携関係の強化に取り組んでいる。多くの場合、こうした提携関係は拡大ASEAN(東南アジア諸国連合)国防相会議(ADMMプラス)や5か国防衛取極(FPDA)などの多国間防衛同盟により管理される。
ニュージーランドが防衛政策として地理的に最優先しているのは、メラネシア、ミクロネシア、ポリネシアの島嶼諸国に加えて、自国の領土とオーストラリア領土が含まれる太平洋地域である。(写真:2021年12月、ソロモン諸島の哨戒活動に参加するニュージーランド国防軍兵士等)
ニュージーランド国防軍が海洋資源および自国領土と自国が特別の関係を有する南極大陸、クック諸島、ニウエ、トケラウ諸島の統治権を保護する役割を担い、同国の海洋領域を引き続き防御することに取り組むことになる。
同報告書によると、自国の保護能力および安定した安全な地域構築に貢献する能力を維持する上で、ニュージーランドにとってオーストラリアとの軍事同盟および米国との防衛提携関係は非常に重要な要素となる。
同報告書にはインド太平洋地域に向けた米国の新たな意気込みを称える内容が含まれており、ニュージーランドや地域一帯だけでなく、世界的な安保の未来を定義する上で「提携関係、存在感の強化、影響力拡大」という手段で米国が地域に関与することが非常に重要になると記されている。
ニュージーランドはまた、気候変動の影響に対応できる回復力の構築にも注力すると表明している。ニュージーランドのアンドリュー・ブリッジマン(Andrew Bridgman)国防長官は「2021年防衛評価」の発表に添えて、地域一帯で増大しつつある課題の対処と国益の保護にニュージーランド国防軍が一層の努力を払う中、ニュージーランド国防省は「何よりも、平和を確立する、および平和的に紛争を防止する、または必要に応じて紛争を解決するという目標を追求する必要がある」と述べている。
ジョセフ・ハモンドは、インド太平洋地域発信のフォーラム寄稿者。
画像提供:ニュージーランド国防軍