
フェリックス・キム(Felix Kim)
韓国からフィリピン海軍に新たなフリゲート2隻とコルベット4隻を含む合計6隻の軍艦を供給する取引が締結されたことで、長年にわたり海軍の近代化を推進してきたフィリピンの防衛力近代化計画が結実しつつある。このうちコルベット2隻は韓国が調達を受注したばかりで現在建造中である。
アナリスト等の見解よると、軍艦調達によりフィリピンは中国人民解放軍の侵略に対する領海防衛力を強化することができる。
2021年12月下旬、フィリピン政府が韓国の現代重工業(Hyundai Heavy Industries)とコルベット2隻の調達契約を締結した後に開かれた記者会見で、デルフィン・ロレンザーナ(Delfin Lorenzana)比国防相は、「当国海軍の近代化はすでに大きな進展を遂げており、今回の軍艦調達により一層有能な艦隊確立にまた一歩近づいた」と述べている。
ロレンザーナ国防相の発表によると、554億円相当(5億5,400万米ドル)で韓国が受注した今回の調達契約により、フィリピン海軍は対艦・対潜戦・対空能力を備えることになる。現代重工業が説明したところでは、最大速力25ノット、航続距離4,500海里(8,300キロ)の性能を備える全長116メートルの各コルベットには、対艦ミサイル発射装置8基、35mm CIWS(近接防御火器システム)、76mmの主砲、3連装魚雷発射管2基が搭載される。高精度AESA(アクティブ電子式スキャンアレイレーダー)も装備される同軍艦2隻は、2026年までに納入される予定である。
米国に拠点を置くシンクタンク「外交政策研究所(FPRI)」によると、2015年に韓国は大韓民国海軍が運用していた浦項級コルベット「コンラッド・ヤップ(BRP Conrado Yap)」をフィリピン海軍に供与している。別の中古の浦項級コルベット1隻も2022年中にフィリピンに搬入される予定である。
外交政策研究所が報告したところでは、現代重工業がフィリピン海軍向けに建造した誘導ミサイルフリゲート2隻がすでに2020年と2021年に就役している。このホセ・リサール級フリゲートには特殊なミサイル発射装置と対艦ミサイル向けに改修された8セルの垂直発射装置(VLS)の兵装が搭載されている。
オーストラリアのアジア太平洋政策学会(Asia & the Pacific Policy Society)が2021年10月に発表したジョシュア・エスペナ(Joshua Espena)防衛アナリスト著の報告書によると、この多用途フリゲートはフィリピン海軍近代化の重要な一歩を象徴するものである。フィリピンが調達した他の重要な装備として、ドック型両用輸送艦、多目的戦闘艇(MPAC)、哨戒艦艇(OPV/海洋巡視船)が挙げられる。フィリピン海軍は2020年に多目的戦闘艇12隻の火力強化のため、イスラエルのラファエル・アドバンスド・ディフェンス・システムズ社が開発した超長射程型地対地ミサイルシステム「スパイク」を搭載させている。
エスペナ防衛アナリスト著の報告書によると、こうしたフィリピン政府の取り組みは、一部にフィリピン海域における中国の不法活動がその背景にある。複数の不法事例の中には、2012年にフィリピン排他的経済水域(EEZ)内で違法漁業に従事する中国漁船を拿捕したフィリピン海軍の進行を中国の監視艦が阻んだことで発生した睨み合い「スカボロー礁事件」が含まれる。
また、BBCニュースの報道では、2021年3月に海上民兵が乗船していると思われる中国籍トロール船団200隻超がフィリピン排他的経済水域内に威嚇的に結集するという事態も発生している。こうした活動は同水域に対する中国の領有権主張を違法と裁定した2016年の国際法廷の判決に違反するものである。
エスペナ防衛アナリスト著の報告書には、「近代化によりフィリピン海軍を統合し、マルチドメイン戦への準備態勢を整えることで」、フィリピンは自国の排他的経済水域で国家権威を確立できるだけでなく、「法治に基づく地域秩序の維持を推進することが可能となる」と記されている。
フェリックス・キムは、韓国ソウル発信のFORUM寄稿者。
画像提供:フィリピン海軍