韓国の国防費:兵営生活の改善に当てる支出を増額

韓国の国防費:兵営生活の改善に当てる支出を増額

フェリックス・キム(Felix Kim)

最近、韓国で2022年度国防予算が承認された。同国防費の支出内訳を見ると大韓民国国軍の徴集兵と志願兵の兵営環境、兵食、カウンセリングサービスの改善が期待できる。本年度の国防費には兵士の福利向上に対する視点が反映されている。これは敵対する北朝鮮とは全く対照的と言える。脱北者等が伝えたところでは、朝鮮人民軍の徴集兵は栄養失調や不潔な兵営環境に喘ぎ、性的虐待の脅威に直面している。

韓国国防部(MND)による2021年12月6日のニュースリリースでは、韓国の国防費は前年比3.4%増の4兆6,980億円相当(469億8,000万米ドル)で、これには新しい軽空母、衛星システム、ヘリコプター、他の資産の導入といった「防衛能力向上」に向けた1兆4,000億円相当(140億米ドル)が盛り込まれている。

一方、徴集兵・志願兵を収容する陸軍訓練施設(ATC)の兵舎と調理・配膳施設の改善のために2億7,700万円相当(277万米ドル)が支出される予定である。また、陸軍訓練施設における民間料理人の雇用に2億2,000万円相当(220万米ドル)が費やされ、カウンセリングサービス予算も1億900万円相当(109万米ドル)増額された。

ソウルに拠点を置く京郷新聞が2021年12月20日に報じたところでは、カウンセリングに特化した予算は性関連の苦情に対応するカウンセラー数を増やすことで、軍隊における性的暴力の犠牲者支援を図ることを目的としている。

韓国は軍隊内の性的暴力問題に直面しているが北朝鮮ではこれが組織ぐるみで行われている気配がある。北朝鮮で軍楽隊に所属し、脱北して2008年に韓国に入国した李晛瑞(Lee So Yeon)活動家が伝えたところでは、朝鮮人民軍の女性兵士は朝鮮労働党中央委員会政治局の政治局員に性的サービスを提供しなければならない。李活動家は2018年6月に発行されたハーパーズバザー誌の記事で、「彼女等[女性兵士等]は自身の意思を問わず、朝鮮労働党中央委員会政治局の行事に行って参加者と肉体関係を持たなければならない」と述べている。

 

北朝鮮は国内総生産(GDP)比で世界最大級の軍事費を投じているにも関わらず、同国は兵士の生活環境の改善のためではなく、最高指導者である金正恩(Kim Jong-un)総書記の核開発に対する野心を満足させるためだけに資金をつぎ込んでいるようである。

米国国務省の2019年報告書によると、北朝鮮の2007年から2017年までの軍事費は年間平均で3,600億円相当(36億米ドル)とされており、これは同国の国内総生産比13.4%から23.3%となる。

しかし、朝鮮人民軍兵士は言葉では言い表せないほどの劣悪な環境に曝されている。同活動家は2017年11月のBBCニュースの記事で、「兵士が寝るマットレスの中身は籾殻である」とし、「そのため、あらゆる体臭がマットレスに染み込む」と話している。

朝鮮人民軍の男性兵士の環境も良好とは言えない。ロイター通信が報じたところでは、2017年11月に脱北した男性の身体に「おびただしい数」の寄生虫が寄生しているのを韓国の医師が発見している。

非武装地帯(DMZ/板門店)から全力疾走で逃亡を図った同脱北者は、これまで任務を共にしてきた仲間に5回も撃たれて重症を負った。同脱北者の手術を担当した韓国の李国宗(Lee Cook-jong)外科医は、消化管から摘出された長さ11インチの寄生虫の写真を会見で公開している。李医師は、「外科医として20年以上の経験があるが、こんなものは医学書でしか見たことがない」と述べている。

韓国国防部のニュースリリースでは、これとは対照的に、韓国政府は兵士の生活環境改善に目を向けているだけでなく、軍隊の節電に取り組むことで改善対策への資金を蓄えている。(写真:陸軍訓練施設で訓練に励む大韓民国国軍の徴集兵・志願兵等)

韓国国防部の報道官は、「兵站、施設、教育、訓練といった軍事作戦に不可欠な要件を反映させながら、当国防部は食料品質の革新的な改善、生産的かつ衛生的な兵営生活の確立、将来的な戦闘を先導するスマート防衛イノベーション、兵役義務履行者に対する積極的な支援、そして国防労働力の構造の向上に焦点を当てている」と発表している。

ソウルに本社を置く中央日報によると、韓国の陸軍訓練施設の環境不良を取り巻く論争は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)検疫下にある兵士に提供された食事を携帯電話で撮影した画像が2021年2月下旬にソーシャルメディアで拡散されたことに端を発している。それが食欲をそそるものとは言い難かったため、兵士等の親が抗議を訴え、検疫下に置かれた兵士等の衛生環境の不良についても苦情が殺到する事態となった。

同紙が報じたところでは、画像の発信源に関する韓国国防部の初期調査が中止された後、朴在民(Park Jae-min)国防部次官が全国放送のテレビ番組に出演して、「同問題については、過去のように隠蔽や握り潰しという手段は決して使わない。これは前向きな展望として迅速に解決される見通しである」と述べている。

韓国情勢に詳しいランド研究所のブルース・ベネット(Bruce Bennett)博士がFORUMに語ったところでは、大韓民国国軍の兵営生活に対する不満は今に始まったことではない。ベネット博士は、「今回の事態で国防部、特に社会問題の解決に意気込みを示す左派の現大統領[文在寅(Moon Jae-in)]が対策を講じる必要性をやっと認めたわけである」と説明している。

国防費の中で研究・調達に当てられる割合が僅かながらも低下し、兵士の健康・衛生・福利といった分野への支出割合が増加したのは数十年ぶりであると、同博士は付け加えている。

同博士はまた、「ある程度の改善を実現すること真に切望している同政権はこれを優先事項として提示することで、非常に強力な声明を発することができる」と話している。

フェリックス・キムは韓国ソウル発信のFORUM寄稿者。

 

画像提供:韓国国防部

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