ヘッドライン

教育イニシアチブにより国内製造を推進するインド防衛産業

マンディープ・シン(Mandeep Singh)

国内防衛産業の自立を目指すインドの継続的な取り組みの基盤として教育の価値に中心的な焦点を当てるインドが、今回新たな防衛技術修士(MTech in Defense Technology)プログラムを立ち上げた。

インドの国防研究開発機構(DRDO)と全インド技術教育審議会(AICTE)という2つの国営組織が共同開発したこの学位プログラムは、ナレンドラ・モディ(Narendra Modi)印首相が推進する「インドでモノづくりを(Make in India)」イニシアチブを支援することを目的として、知識と技能を兼ね備えた専門的人材を育成するためにインドの主要学術機関に導入されることになる。

インド国防省の発表では、同プログラムの資金には2020年に政府が発表した28兆3,730万円相当(2,837億3,000万米ドル)のパンデミック後経済刺激策の一部が用いられることが予定されている。モディ首相が提示した刺激策の目標は「自立したインド」である。

同国防省によると、学位プログラムには戦闘技術、航空宇宙技術、海軍技術、通信システムとセンサー、指向性エネルギー技術、高エネルギー物質技術の6種類のカリキュラムが含まれる。学生は国防研究開発機構の研究所とインドの大規模防衛企業で論文研究に従事し、プログラムを修了した学生には成長を続ける国内防衛部門への就職の道が開ける。

インドの大手防衛メーカー「カリヤニ・グループ(Kalyani Group)」のババ・カリヤニ(Baba Kalyani)創設者兼会長は、「特に何らかの技術移転や合弁契約を通じて技術を常に取得する取引においてインド政府は大いにインド企業と提携を図ってきた」とし、「しかしこの方法では技術や物事のノウホワイ(理由、原理、目的などを知ること)を得ることができない。ノウホワイがなければ国内で知的財産を構築することはできない」と説明している。

2021年7月8日にニューデリーで開催されたプログラム発表式で講演したカリヤニ会長は、現在カリヤニ・グループの旗艦企業に成長したバーラト・フォージ(Bharat Forge)社の従業員の技能開発を目的として15年前にインド工科大学(IIT)ムンバイ校でMTechプログラムが設立されたときのことを回想している。

同会長は、「同プログラムにより、一種の人材育成と人材確保という面で当社事業にもたらされた成果は途方もなく大きかった」とし、「当社が国際社会で主導権を握ることができる企業に成長したのは、これが大きな貢献要因の1つであったと考えている」と話している。

同会長はまた、全国的にMTechプログラムを立ち上げることで発生する「乗数効果」により、最新の技術、手法、応用に精通した専門エンジニアの集団を育成することで、これを中心に防衛産業を強化できると述べている。同プログラムでは業界経験のある学生が最良の候補生になると、同会長は予想している。

ヒンドゥスタン・タイムズ(Hindustan Times)紙が報じたところでは、「インドでモノづくりを」は国内製造業を推進して雇用を創出することを目的として2014年に発足されたイニシアチブである。国内防衛部門において、これがアグニ(Agni)とプリットヴィー(Prithvi)シリーズのミサイル開発、テジャス(Tejas)軽戦闘機(LCA)(写真参照)、ピナカ(Pinaka)多連装ロケット砲、アカシ(Akash/「アカシュ」「アーカーシャ」とも表記される)地対空ミサイル(SAM)システム、広範に及ぶレーダーや電子戦システムの製造に繋がったとして国防研究開発機構は同イニシアチブを高く評価している。

しかしカリヤニ会長は、こうしたシステムの多くは外国の設計から派生した装備であるため防衛産業の自立を実現するには一層の知識が必要であると述べており、「自立を実現するには、有能な人材と技術・技術分野に長けた人材を大量に育成する以外に方法はない」と語っている。

マンディープ・シンは、インド・ニューデリー発信のFORUM寄稿者。

 

画像提供:AP通信社

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Back to top button